●サバイバー●取材・執筆・写真/本誌編集部
特に歴史やアートに関心はなくても、ロンドンを訪れる多くの人が「とりあえず行っておきたい観光スポット」の上位に挙げるであろう大英博物館。医師で収集家のハンス・スローン卿個人のコレクションによって基礎が築かれ、1759年に開館した。世界のありとあらゆる場所から集められた、200万年におよぶ人類の軌跡を示す所蔵資料の数は800万点を超え、これらを惜しむことなく無料で一般公開する。
膨大な展示を欲張って見ようとすると時間がいくらあっても足りない…。だけど、どうしても大英博物館の醍醐味に触れたい! そんな人にお届けしたいのが、今回の特集。とっておきの見どころを厳選し、1時間で回れるコースを編集部からご提案したい。
詳しく紹介する前に、まずはざっくりとしたイメージから。館内には100近い展示室があり、それぞれ地域別、年代別に分かれていて、メイン・エントランスを抜けて左側(以下館内マップ参照)に広がるエジプト、ギリシャ・ローマ、アッシリアの展示室の数々は、同館のハイライトと呼べる。ロゼッタ・ストーンやパルテノン神殿の彫刻群があるのもこのエリア。今回の「超高速1時間」コースでは、まずはこのエリアを攻め、続いてメイン・エントランス付近にある南階段をレベル3へと進んでヨーロッパの部屋を押さえ、さらに北側へと進んでミイラと対面したのち、グランドフロアに降りて中南米を旅するというもの。早足で回れば1時間で制覇できるし、丁寧に見ていけば2時間でもまったく退屈しないコースになるのではないかと思う。もっと時間に余裕ある人は、有名展示物の周辺にある、自分のツボにはまる展示を探してみるというのも有意義な時間の過ごし方と言えるだろう。時間がない人への注意点をひとつ挙げておくならば、入館前の荷物検査。特に週末は長い列ができていることもあるので、少し余裕を持って出かけてほしい。
ではでは、早速スタート!
Ground Floor
地上階(レベル0)の見どころは、古代エジプト、古代ギリシャおよびアッシリアの①~⑦と、南米などの⑪⑫。
古代文字、解読のカギ
1 ロゼッタ・ストーン
レプリカに触れてみよう!
本物のロゼッタ・ストーンはガラスに覆われていて触れることはできないが、「啓蒙思想の部屋」(ルーム1、下コラム参照)には、ロゼッタ・ストーンのレプリカが置かれている。こちらは実際に触れることが可能!
エジプト第19王朝のファラオ
2 ラムセス2世像
エジプト神話の女神
3 ゲイヤー・アンダーソンの猫(猫の女神バステト)
© The Trustees of the British Museum
世界七不思議のひとつ
4 ハリカルナッソスの霊廟
エルギン伯爵が持ち帰った
5 パルテノン神殿の彫刻群
天窓からやわらかい自然光が差す大理石の部屋「パルテノン・ギャラリー」。英国の芸術向上のため、古代ギリシャの彫刻群の調査を行ったエルギン伯爵が19世紀初めにオスマン帝国の支配下にあったギリシャ・アテネから大理石彫刻を剥ぎ取って持ち帰った。ゆえに「エルギン・マーブル」とも呼ばれる(ギリシャは返還を要求中)。ギャラリーを囲むように、パルテノン神殿の破風(屋根の一部)を飾っていた彫刻群が展示されている。
パルテノン・ギャラリーに秘められた物語を読もう!
アッシリアの守護神
6 人面有翼牡牛像(ラマス像)
王の威厳を示す
7 ライオン狩りのレリーフ
啓蒙思想の部屋
エジプトやギリシャの展示室からグレートコートを挟んで反対側にある細長い展示室(ルーム1)は、館内で最も古い部屋とされる「啓蒙思想の部屋」。もともとはジョージ3世の膨大な蔵書を保管するための「キングズ・ライブラリー」だったが、蔵書が大英図書館に運ばれた後、同館の一般公開が始まった18世紀に主流だった啓蒙思想をテーマに、彫刻や標本などが展示されている。
大英博物館誕生のストーリーに興味がある方は、こちらの記事をご覧ください。
Upper Floor
何といっても見どころはミイラが集まるルーム62、63の部屋。63から62にかけて時代が下る展示になっている。
表情にも注目
8 ルイス島のチェス駒
ルイス島のチェス駒のレプリカは、映画「ハリー・ポッターと賢者の石」に登場。映画の中では、駒が魔法で動き、まるで生きているかのよう! 映画のワンシーンをご覧ください
中世の英国を伝える
9 サットン・フーの兜
死と死後の世界
10 エジプトのミイラ
エジプト第19王朝に仕えていた女祭司ヘヌトメヒトのミイラを収めた棺。金箔がふんだんに使われ、かつ詳細にこだわった作りであることから位が高かったことが伺える。© The Trustees of the British Museum
ミイラ部屋の隣のルーム61は、エジプト第18王朝に仕えた書記官ネブアメンの墓に関する展示。上の写真の壁画は、永遠の幸せを願い、妻や娘と楽しいひとときを過ごす様子を描いたもの。
棺に肖像画が描かれているのは、ギリシャ人アルテミドロスのもの。埋葬者の肖像画は古代エジプトの末期頃から見られる。発見後、肖像画とミイラが別々に保管されていることが多い中、この展示では棺についたままの状態が保たれている。
日本
「失われた友」
11イースター島のモアイ像
アステカ文明の装身具
12 双頭の蛇(ターコイズのモザイク)
1時間しかない人のための
超高速 大英博物館巡り
編集部制作による約6分のショートフィルムをお楽しみください。
Travel Information
大英博物館
The British Museum
Great Russell Street, London WC1B 3DG
www.britishmuseum.org
開館時間 午前10時~午後5時30分(金曜は午後8時30分まで)
休館日 1月1日、12月24~26日
入場料 無料(特別展を除く)
まもなくマンガ展がスタート!
今年の目玉となる夏の大企画展として同館が選んだのは、若い世代を中心に海外でも人気を集める「日本の漫画」。日本で漫画がどのように誕生し、近年にみる世界的な文化現象へと成長していったのか、その歴史と魅力を探る。
2019年5月23日~8月26日。大人:19.50ポンド
週刊ジャーニー No.1080(2019年4月4日)掲載