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●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部

ロンドン西部サウス・ケンジントンに位置し、世界最大規模の生命科学・地球科学のコレクションを誇る自然史博物館(Natural History Museum)。植物学、昆虫学、鉱物学、古生物学、動物学などの分野における標本8000万点余りを収蔵する一方、科学者らがそれぞれのテーマで研究を行う機関でもある。
年間500万人以上の来館者を魅了する同館の歩みは、1759年に誕生した大英博物館に始まる。医師で収集家のハンス・スローン卿が集めた数多くの収蔵品に加え、18世紀後半には、探検家ジェームズ・クック船長の航海に同行した植物学者ジョゼフ・バンクスが持ち帰った膨大な量の標本やスケッチなどにより、自然史に関する収蔵品の数が急増。年を追うごとにその数は膨れ上がり、展示室は雑然とし、収拾がつかない状態が続いていた。
その有り様を嘆き、対策に乗り出したのが、大英博物館の自然史部門の最高責任者だったリチャード・オーウェン博士だ。博士が大英博物館評議会や政府に働きかけ、自然史に特化したスペースの必要性を訴え続けた結果、1881年に大英博物館の分館「British Museum(Natural History)」の開館にこぎつけたのだった。これがオーウェン博士が「自然の大聖堂(cathedral to nature)」と称した、サウス・ケンジントンにある自然史博物館である。1963年までは大英博物館の名を冠したが、以降は独立した機関として機能し、92年には公式に「Natural History Museum(自然史博物館)」の名がつけられた。
展示は内容別に色分けされ、グリーン、ブルー、レッド、オレンジの4つのゾーンが設けられている。今回編集部では、自然史博物館の世界を堪能すべく、知的好奇心を刺激してくれるであろう見どころをぎゅっと凝縮してお届けすることにした。以下に紹介する展示群をはじめの一歩に、好奇心の赴くままに歩いて名だたる科学者や収集家らが残した情熱と知の結晶に触れてみよう!

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自然史博物館マップ

Green Zone

自然史博物館の中央に位置する「ヒンツホール」と、その東に広がるグリーン・ゾーン。まずは大聖堂を思わせるステンドグラスや装飾が美しいヒンツホールを中心に回ってみよう!

必見建築! ヒンツホール

2017年以降、「ディッピー」の愛称で知られた恐竜ディプロドクスの骨格標本に代わり、絶滅の危機が叫ばれているシロナガスクジラの骨格標本「ホープ」が泳ぐような格好で展示されている。

クロムウェル・ロード側の入り口から入館した来館者を迎えるのが、同館の設計を担当した建築家アルフレッド・ウォーターハウスのこだわりが随所に見られるヒンツホール。堂々たる大階段を上るとホールを囲む回廊へとつながる。ステンドグラスからの光が差し込むこの回廊からのホールの眺めはうっとりするほどの美しさ。この場に立つだけでも同館を訪れる価値があるだろう。月に1回、夜間イベントとして、ヘッドフォンをつけて踊るサイレントディスコが開催されており(要予約、2019年11月まで)、一味違った体験ができる。
【ヒンツホール ▶️ MAP①】

(左)大階段の途中でホール全体を見渡すように据えられているのは、自然科学者チャールズ・ダーウィンの像。(右)大聖堂を思わせるステンドグラスから優しい光が差し込んでいる。
(左)天井には植物を描いたパネル162点。(右)アーチ部分に猿の彫刻!

自然史博物館の至宝

人間の乱獲などによって絶滅した、飛べない鳥「ドードー」の骨格。ドードーは「不思議の国のアリス」に登場することでも知られる。

ヒンツホールの回廊にある「宝物」と銘打つギャラリーでは、同館のコレクションの中でも特に貴重な品およそ20点を展示。恐竜と鳥類のつながりを示唆する始祖鳥(Archaeopteryx)の化石や、ダーウィンとほぼ同時期に進化論を導き出した博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスの珠玉の蝶標本などを探してみよう。
【宝物 ▶️ MAP②】

恐竜と鳥類のつながりを示唆する始祖鳥。
アルフレッド・ラッセル・ウォレスが収集した蝶の標本。色や形など芸術性を秘めた美しさ。

貯蔵庫の呪われたアメジスト

鉱物ギャラリーの先にある「貯蔵庫」と名づけられた一室では、数々の宝石が艶やかな光を放っている。中でも、持つ人を不幸にすると悪名高い呪われたアメジスト(The Cursed Amethyst)や、ブラジル皇帝ペドロ1世から第6代デヴォンシャー公爵の手にわたった世界最大級のエメラルドにご注目を!
【貯蔵庫 ▶️ MAP③】

鉱物ギャラリー。色や形の異なるさまざま鉱物がショーケースに並ぶ。
(左)貯蔵庫への入り口。(右)世界最大級とされるエメラルド。(C)Geni

化石ハンター、メアリー・アニング

恐竜が陸地を闊歩していた時代、海中ではどのような生物がうごめいていたのか? その世界へと来館者を誘うのが海生爬虫類の化石ギャラリー。後にプロの化石ハンターとして成長する当時12歳のメアリー・アニングが英南西部ドーセットで19世紀に世界で初めて発見した、イクチオサウルス全骨格などが展示されている。
【海生爬虫類の化石 ▶️ MAP④】

Blue Zone

恐竜、哺乳類、鳥類など、地上に生息した多様な生き物を紹介するブルー・ゾーン。動く恐竜模型に加え、実物大の模型が多く、子どもに人気あり。

人気ナンバーワン!動くティラノサウルス

あまりの迫力に泣き出す子も

恐竜の生態から絶滅まで、骨格標本や模型を使って解説してくれる恐竜ギャラリー。何といっても花形は、動くティラノサウルス・レックス=写真上。尻尾、手先まで細かく動く様子に見入っていると、こちらに向かって走り出すのではないかという恐怖心が…。草食恐竜トリケラトプスやティラノサウルスの頭蓋骨=同左=が展示室に入って右手の頭上にあるので、こちらもお見逃しなく。
【恐竜 ▶️ MAP⑤】

「Dinosaur」(恐竜)という言葉を作ったリチャード・オーウェン博士。自然史博物館を誕生させた立役者のひとりでもある。

哺乳類の巨大模型が勢ぞろい!

シロナガスクジラや絶滅したマンモスなど、哺乳類の模型が迫力満点のギャラリー=写真。隣接する哺乳類室には、平均体重わずか4グラムとされる小さな哺乳類ヨーロッパヒメトガリネズミ(Pygmy Shrew)から、北極グマまでの模型がずらり。合わせて訪れると哺乳類の多様さを実感できる。
【哺乳類(ブルーウェール・モデル) ▶️ MAP⑥】

Red Zone

地球の営みを知る地学や生命の進化を伝えるレッド・ゾーン。自然への畏怖の念を抱かずにはいられない展示が目白押し!

草食恐竜ステゴサウルスの骨格が展示される「アースホール」。地球を表現した球体がドラマティックに光り、ムード満点! エスカレーターでこの地球を抜けると、火山・地震コーナーへ。
【アースホール ▶️ MAP⑦】

日本の地震を疑似体験

地球がどのように形作られているかを、インタラクティブな展示や映像などで紹介する火山&地震ギャラリー。地震の疑似体験ができるスペースでは、神戸スーパーマーケットと名づけられた区画の床が定期的に揺れる仕掛けとなっている。
【火山・地震 ▶️ MAP⑧】

ダイヤモンド、輝きの秘密を知る

人々を魅了する宝石から、生活に欠かせない日用品の素材となる鉄・スチール(鋼)まで、地球の宝を集めた展示室。ダイヤモンドがどのように発掘され、形作られるかを収めた映像や、カットによって異なる輝きを紹介するダイヤモンドの展示、暗闇で光る鉱物などが、照明を落とした空間に並ぶ。
【地球の宝物 ▶️ MAP⑨】

英国最古の人骨 チェダーマン

人類の進化をたどるギャラリー。タンザニアのラエトリ遺跡で見つかった、350万年前のアファール猿人の犬歯=写真上左=や、英国でもっとも古いとされる1万年前の英国人「チェダーマン」の骨=同右=など、保存状態の良さに驚くばかり。
【人類の進化 ▶️ MAP⑩】

Travel Information

Natural History Museum
Cromwell Road, London SW7 5BD
www.nhm.ac.uk

最寄り駅:サウス・ケンジントン駅、グロスター・ロード駅(ともにディストリクト線、サークル線、ピカデリー線)

開館時間:午前10時~午後5時50分(最終入館 午後5時30分)

入場料:無料

特別企画:特別夜間開館や各種イベントを定期的に開催中。5月17日からはアポロ11号の月面着陸50年を記念して、月の形をしたインスタレーションが登場する。月の下でのワイン・テイスティングやヨガ・クラスが予定されている。

週刊ジャーニー No.1084(2019年5月2日)掲載