野田秀樹新作舞台 NODA•MAP「正三角関係」世界配信決定
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ホンネで語る!
ロンドン犯罪事情

前編

盗難とフィッシング詐欺

ちょっとした油断や一瞬の判断ミスが、明暗を大きく分けることもある。ロンドン生活の中で体験した様々な犯罪被害について、日本人女性3名に熱く語ってもらった(全2回)。
参加者のプロフィール
Aさん/30代、在英6年半。ロンドン北部在住。
Bさん/40代、在英12年。ロンドン北部在住。
Cさん/30代、在英9年。ロンドン東部在住。

スリ被害

―― 海外生活で多い犯罪といえば、お財布やスマホの窃盗被害。いわゆるスリによる盗難ですが、皆さんご経験はありますか?

A
この5年くらいで、財布3回、スマホ1回、盗まれてます。

―― それは多いですね…!

B
私はロンドンではないです。スペインで熱中症で倒れて救急搬送されたときに、病院内でお財布から現金だけ盗まれたことはありました。
C
実は私もないですね。基本的にバッグを持たないので。
B
バッグを持たずにポケットに入れている方が、盗まれやすくない?
C
そうですよね。なので、必ずポケットにチャックのついた服を着て、しっかりチャックを閉めてます。お財布やスマホも入れる定位置を決めて、常に自分の手で触れて確認できるようにしてますね。色々なことに気が散ってしまうのが一番危ないと思っているので、とにかく最小限に。たまにリュックサックも使いますけど、そのときも貴重品はリュックに入れません。
B
リュックのときは、リュックの中のチャックつきの内ポケットに貴重品は入れるようにしてます。それなら、盗むにもひと手間かかるので安全かなって。
A
いやいや、私はそれで盗まれてますから。
B
そうなの⁉
A
個人的には、ミニリュックは一番危険だと思ってます。開けたらパッと中身が全部わかるから、ピンポイントで財布だけ抜かれちゃう。内ポケットに入れて、チャックを閉めていたはずなのにダメでした。それで懲りずに2回も盗られてます(苦笑)。1回目は、ちょうど今くらいのクリスマス・ショッピングの時期に、セルフリッジの下りエスカレーターで。背中に何か当たってパッと振り返ったら、リュックが開いていて財布がない。そしたら、後ろにいた東欧系っぽい女性が急に「えー! どうしたの? 大丈夫?」って。「いや、カバンが開いているのを見てたはずなのに、今更その反応はおかしいでしょ!」って思ったけど、問い詰めるのもね…。証拠もないし…。

「財布にクレジットカードをいつもより多く入れた日に限って盗まれる…」と嘆くAさん。
C
私の友達もセルフリッジでやられましたよ! リュックサックを背負ったままトイレ待ちで並んでいたときに、後ろの人にお財布を盗まれたみたい。でもリュックを開けられた形跡がなかったから、盗られたことにすぐには気づかなかったらしくて。デパートは気をつけないとね。
A
2回目はセント・ジョーンズ・ウッドです。自宅の近所だし、セントラルのような人込みじゃないから大丈夫だと思って、同じミニリュックを背負ってたんですけど、ライブラリーに立ち寄って外のワゴンセール本を漁っていたら、「きみ、カバン開いてるよ」って声をかけられて。本を漁っているうちにリュックを開けられて、また財布を抜かれたっていうのが、この夏の話ですね(苦笑)。ほかにすごい大荷物を持っていたこともあって、全然気づかなかった。
B
その声をかけてくれた人は、怪しくなかったの?
A
セルフリッジのことがあったら、ちょっと怪しいんだけど…。でも「ライブラリーの人に話しましょうか?」とかすごく気遣ってくれたから、たぶん違うかなって。
B
チャックがすぐに開かないように 「ジッパークリップ」(写真下)をつけて防犯対策している人もいるよね。ボディバッグも背中に密着していて内側にチャックがついているから、一見大丈夫そうに思えるけど、いつの間にかお財布を盗られていたという話を聞いたことがあります。

ジッパークリップ、ジッパーロックなどと呼ばれる防犯グッズ。
自分でチャックを開閉する際に面倒なのが難点。

―― リュック以外では?

A
深夜、ピカデリーサーカスのエロスの像の近くを友人たち4~5人で歩いていたんですけど、みんなブランドのバッグを持っている中で、私は「GU」の1990円くらいのショルダーバッグだったのに、なぜか私の財布が抜かれて…。そのときも肘に何かがちょっと当たったような感じがして、「あれ?」と思って見たら、バッグのチャックが開いてました。

――Aさんは「プロ」から見ると、隙があるんでしょうね。

A
そうなのかなぁ。スマホを盗まれたときは、コートのポケットにスマホを入れて家を出たんです。そのときも大荷物だったので、自宅から20~30秒のところで一度荷物をガサガサしたけど、スマホには触らなかった。それから数分歩いて、「音楽を聴こう」と思ったら…スマホがない。さすがに落としたら気づくと思うんだよね、音がするし。でも「落としたかも」と思って急いで道を戻ったけど見つからないし、家にいた大家さんに電話してもらったら、失くして5分くらいしか経ってなかったけど電源を切られてました。だから、これは盗まれたかなと。
B
ポケットから抜かれたということ?
A
正直なところ、それはわからない。でも深いポケットじゃなかったからスマホが見えていて、抜かれた可能性はある。荷物をいっぱい持っているときは危ないね、本当に。
B
友人がデパートで待ち合わせをしたときに、通話を終えてスマホをコートのポケットに入れた後、ぶらぶら商品を見ていたら、いつの間にかそのスマホが盗まれてたというのは聞いたなぁ。みんな手慣れてるよね。行動をよく見てる。
A
そうだよね。発売されたばかりの「iPhone13」で、買って1ヵ月も経たずに紛失したから本当にショックで。それからはスマホに紐をつけて身に着けてます。

―― スマホは最近、路上でのひったくりが増えて問題になってますね。

B
バス停でのバス待ちや路上での歩きスマホ、動画の撮影中などに、バイクや自転車に乗った犯人にひったくられるパターンはよく聞きますよね。
A
バス停でまさにひったくられた人を見たことがあります。
B
意外に多いのが、ヘアサロンの前らしいですよ。キレイにカットしてもらって、お店を出たところで自撮りしているときに盗られるのだとか。

―― クリスマス・ライトを撮影したくなるシーズンなので、ぜひ気をつけていただきたいと思います。


置き引き被害

―― 置き引きも王道ですが、被害に遭ったことはありますか?

A
友達でパソコンを盗まれた子がいます。レストランの端の壁際の席で、壁側の椅子にパソコンを入れたバッグをかけていたら、誰も気づかないうちにバッグごと盗られました。
B
私も同じような体験を知っています。その子はカフェで大きな荷物を足の間に挟んで床に置いていたんですけど、みんなで盛り上がっておしゃべりしているうちに、荷物が丸ごと消えてました。ほかにも、電車でラップトップを入れたバッグを足の間に挟んでスマホを見ていたら、いつの間にかバッグがなくなっていた…という話も聞いたし、足で守っているつもりでも、話に集中したり注意が逸れたりすると、気がつかないみたいですね。
C
冬はコートの裾で、さりげなく周囲から隠しながら盗んだりするらしいです。計画的なグループでの組織だった犯行ですよね。
B
テーブルの上に無防備に置いたスマホもね。通路側に置いていると、通り過ぎながらサッと持って行かれたり。
C
ありますよね。あと、スマホの上に地図を広げて、場所を聞く振りをしながら…とか。今でもそういう手もあるらしいです。
B
ちなみに、長距離フライトの機内で貴重品はどうしてる? 以前、機内でお財布を盗まれた話を聞いたことがあって…。それからはトイレに行くときも、貴重品を入れたバッグは携帯してます。
A
パスポート類は貴重品入れにしまって、ずっと身に着けてますね。パソコンも上の棚に入れず、必ず足元。パスポートを機内で盗まれて、到着地で大変なことになった人に会ったことがあるから、貴重品はびびってます。
C
そんな悪い人いるんだ! 私はパスポートとスマホ、財布はチャックつきの服のポケットに入れてます。
AB
Cさんはそうだよね(笑)

持ち物は最小限にし、常に身軽なスタイルで外出するというCさん。

フィッシング詐欺

―― ロックダウン以降、急激に増えたというフィッシング詐欺はどうですか?

B
ロイヤルメールやDHL、アマゾンとかeBayを装ったメールは一時期すごく流行ったよね。
C
ロイヤルメールから来たことはありますけど、引っかかったことはないですね。
A
私はDHLからそういうメールが来たことある。でもあまり通販とかしないので、基本詐欺だと思って無視してます。
C
うん、リンクも一切クリックしない。
A
ただ、イギリスに来てすぐの頃に、HMRC(英国歳入関税庁)から税金還付手続きのお知らせメールが届いて。その前にカナダにいたんですけど、カナダではオンラインで申請していたような記憶があったので、「イギリスも同じなんだ」と何も疑わずに全部情報を入れちゃったんです。そうしたら2ヵ月後くらいに、「ZARAオンラインでこういう買い物をしましたか?」と銀行から連絡が来て、止めてくれたから実害はなく済んだけど。
B
かなりの金額だったの?
A
それが全然。100ポンド程度だったので、逆に何で銀行が止めてくれたのか…。
B
私も今年の5月に、タックス・リターンのテキストを受け取りましたよ。「GOV_UK」という、いかにもありそうな名前で。250ポンドくらいの絶妙な金額で、リンク先も「http://hmrc.tax-refund...」みたいなちゃんとしたURLに見えたので、危うくクリックしそうになりました。でも、そのとき一緒にいた友人にもまったく同じ内容のテキストが同時に来て、金額が同じなのはおかしいと…。すぐにHMRCの「Government Gateway」の個人アカウントにログインして調べたけど、何もリファウンドについて記載がないので、「これは詐欺だね」って。

―― 引っかからずに良かったです。

B
不思議なのは、2人同時に受け取ったということは一斉送信されたはずなので、一体どこで電話番号が漏れたのかな? って。その2週間ほど前にパブでランチを一緒に食べて、それぞれカード払いをしたので、そこから個人情報がリークしたのかな…。
A
送られてきたリンクをクリックするんじゃなくて、ちゃんとした公式サイトを自分で調べてからアクセスした方がいいって言うけど、今は巧妙化していて、検索したときに一番上に出てきたのが詐欺サイトだった…という怖い投稿をX(ツイッター)で最近よく見かけます。ほぼ本物と同じで見分けがつかないらしく、そうなるとどうしようもない。
B
えぇ! 怖い…。チェックアウトするときに、URLに鍵マークがついているか(SSL/https化)どうかは必ずチェックしてるけど、今は詐欺サイトもSSL化が普通って言うしね。

―― 皆さん、フィッシング詐欺の経験はなさそうですね?

B
いえ、実は1回引っかかりました。「『REVOLUT』のアカウントに不正アクセスがあったのでロックしました。このリンクから詳細を確認して、アクティベートしてください」といったテキストで、びっくりしてクリックした上で、紐づけているデビットカードの情報を入力しちゃって…。ただ途中で「詐欺では?」とハッとしてサブミットはしなかったんですよ。それなのに、数週間後に銀行から「1000ポンドのバンク・トランスファーをしましたか?」と連絡があって、確認するとすでに100ポンドのバンク・トランスファーを3回、やられてました。さすがに1000ポンドは止めてくれたけど、300ポンド分はすでに消失。バンク・トランスファーで動いたお金は銀行側は何もできないので、REVOLUTに相談するよう言われたものの、当時ロックダウン中で詐欺が急増していたこともあって全然連絡が取れず、最終的に諦めました。
A
アプリが乗っ取られてた可能性もあるよね。300も盗られたら、すごいショック!
B
まさに泣き寝入り。それ以降、すぐに異変に気づけるように、まめに銀行のアカウントやカードの支払い履歴はチェックしてます。 

(後編へ続く)


ロックダウン中の300ポンド喪失は、愚痴を言える相手もいなくてかなり凹んだと話すBさん。

週刊ジャーニー No.1369(2024年11月21日)掲載

「ロンドン犯罪事情」の後編のテーマは、「空き巣、痴漢、薬物」です。
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