ホンネで語る!
英国での住宅購入

後編

不動産屋・入居後のトラブル

何度も家を買い替えたり、弁護士を通して話し合ったりと、日本とは少々異なる英国での不動産購入。今回は、ここ6年以内にロンドンで家を購入した女性3名に、物件購入までの道のりや苦労話を熱く語っていただきました(全2回シリーズ)。
参加者のプロフィール
Aさん(41歳)/在英9年。6年前にテラスドハウスを購入。夫は英国人、子どもは2人。北ロンドン在住。
Bさん(49歳)/在英6年。3年半前に旧カウンシルの1ベッドフラットを購入。夫は英国育ちの日本人、子どもなし。北ロンドン在住。
Cさん(45歳)/在英15年。3年半前に1ベッドフラットを購入。独身。南ロンドン在住。

頼れる不動産鑑定士

― イギリスでは、物件の売り手と買い手が双方とも弁護士を雇って契約を結びますが、弁護士の手配はどうされましたか?

A
モーゲージ(住宅ローン)を組んだ銀行が、ソリシター(弁護士)とサーベイヤー(不動産鑑定士)を紹介してくれました。
B
私もそうでしたね。
C
私は近所に家を購入したばかりの友達がいたので、その人が利用して「よかった」と言っていたソリシターを紹介してもらいました。サーベイヤーは、モーゲージを組んだ銀行が紹介してくれた人に依頼しました。

― オファーが受理されて価格の合意に至った後で、サーベイヤーの意見を聞いて購入をやめた経験は?

A
あります。オファーを出した家は全部で3軒なんですけど、最初にオファーした一軒家が理想的だったんですよ。リビングルームも広くて、キッチンもリビングから顔が見える上に新しいものに入れ替えてあって。「ここだ!」と思って、すぐにオファーを出して通ったんですけど、サーベイヤーに調査してもらったら問題だらけの家であることがわかったんです。

― どんな問題点があったんですか?

A
部屋の暖炉が取られていたんですけど、その上の煙突が実は内部で宙ぶらりんのまま残っていて、いつガンッて天井を破って落ちてくるかわからない状態だと言われました。
B
えぇー怖い!
A
あとは立地がすり鉢状になっている場所だったみたいで、大雨になったら浸水の危険性があるとか。私たちが見学した後に浸水したらしく、床を全部張り替えないといけなかったり…。そのサーベイヤーの方は講師もしていたようで、「問題物件の代表例として生徒たちを連れていきたいぐらいだ」って話してましたね。ハッキリと「お勧めしない」とのことだったので、買うのをやめました。
B
買う前にわかってよかった!
A
結果としてはよかったけど、気に入った家だったからすっごくガッカリしました。その時は友人が薦めてくれた「ちょっと高いけど信用できる」ソリシターを個人的に雇って、サーベイヤーは銀行が紹介してくれた人にお願いしていたので、ソリシターとサーベイヤー代だけが消えて…。1000ポンド以上はかかったかな。

弁護士は友人から、不動産鑑定士は銀行から紹介してもらったと話すCさん。

最終奥義「買うのやめます」?

― 不動産屋さんとの間で、トラブルが起きたことは?

C
前の住人が1年くらいしか住まずに手放した物件を見に行ったら、とてもキレイな状態だったんです。気に入ってすぐにオファーを出したんですけど、後から別のウェブサイトで調べたら、1年前の販売価格を見つけちゃって。今の価格の方が8万ポンドも高かったんですよ。あまりにも差があるので、不動産屋さんに聞くと「前に住んでいた人がかなり内装を変えたから」と説明されて…。

― それは自分が住むためではなく、リノベーションして、売り手が購入時よりも高い金額で売る「販売目的」で買われた家だったパターンですね。

C
そうなんだと思います。すぐに住めるくらいにキレイではあるんですけど、冷静に考えたら「高すぎる」と思い、「オファーを考え直したい」って不動産屋さんに連絡しました。その時点では、まだオファーは受理されていなかったものの、デポジット(頭金)の金額を高く提示していたので、「通る可能性は高い」とは言われていたんです。そうしたら、翌日に不動産屋さんから電話がかかってきて「買うって言ったのに!」と、怖い感じで脅すようなことを言われました。
A
えっ! 本当に!?
C
見学したのは1月で、4月から税金の金額が変わるので、売り手はそれまでに早く売りたかったみたいで。だからチェーン・フリーかファーストタイム・バイヤーの人、さらにデポジットがある人の方がモーゲージも組みやすいと考えていて、まさに私が当てはまってしまったんですね。結局、不動産屋さんと言い合いになってしまい、「それなら買うのをやめます」と言ったら、相手もトーンダウンして。私としては、せめて2万ポンド下げたかったんですよ。でもそれは難しくて、最終的に1万さげることで折り合いがつきました。

― なぜ2万ポンド?

C
シャワールームにバスタブを入れたかったんです。それにお金がかかるなぁと思ったので、工事費用として。
B
私はオファーが通った後、不動産屋さんから「すぐ入居してくれ」とせっつかれました。でもハウスシェアしていた家の退去日まで1ヵ月あったし、勝手に早く出てしまうとシェアメイトにも迷惑をかけるので、すぐには入居できないと断ったんです。だけど、あまりにもしつこくプッシュしてくるから、私も「そんなに言うなら買うのをやめます」と。そうしたら驚いたことに、「売り手が、その1ヵ月分の家賃を払うと言ってるから、とにかく入ってくれ」と言うんです。

前の住人の置き土産に苦労したAさん(手前)とBさん(奥)。

― それはすごい! 本当に家賃を払ってくれたんですか?

B
はい。売り手がおじいさんだったので疲れちゃったようで、一刻も早く売り買いから解放されたかったみたい。だから、ゆとりをもって引っ越しの準備ができたので、結果的には良かったです(笑)
C
そういえば、私はモーゲージを組む銀行でも不動産屋さんと揉めました。「早くモーゲージを組んで」と連日のように催促の電話がかかってくるので、「〇〇銀行にしようと思う」と話したら、「そこは時間がかかるからやめてくれ」と。友達に相談したら、実際に「その銀行はあんまり…」という評価だったので、じゃあ自分の口座がある銀行にしようかなと思って。不動産屋さんも「そこはいいんじゃない」という返事だったので、その銀行でモーゲージを組みました。

― オファーが通ってから購入・入居するまで、どのくらいかかりましたか?

A
モーゲージ審査やサーベイヤーの調査、契約手続きや支払いなど、山のような書類の準備や提出があるので、一般的には半年って言われてますね。私の場合も5ヵ月くらいでした。
B
私も5ヵ月でしたね。
C
私のところは、増税の問題から不動産屋さんからの「次は何しろ」「あれやれ」というプッシュが最後まですごくて…。本当に慌ただしくて疲れましたけど、2ヵ月で入居しました。
AB
早い!
C
私はラッキーだったけど、友達は入居までに1年くらいかかっていましたね。

― 入居してからのトラブルは?

A
鍵をもらって初めて家に入ったとき、動物臭がすごくて驚きました。前の住人が長毛の大型犬を飼っていたんですが、その毛がキッチンの棚の上や床の端に3センチくらい積もっていて、取るとフワーッって浮くの! 庭にもフンがいっぱい転がっているし。見に行ったときは、そんなんじゃなかったのに…。あと、見学時に置いてあったリビングのソファーがなくなったら、その部分の床が抜けていたんですよ!
C
ソファーで隠してあったんですね(笑)
A
そう! ほかにも、住みはじめた後に起きた集中豪雨で、夜中にバスルームの天井にある照明のところからダーッと滝のようにすごい雨漏りがあって。天井裏に溜まっていた雨水が、一気に落ちてきたことがありました。
B
入居してから、前の住人のおじいさんがフラット管理費を1年間払っていなかったことが発覚して、その催促が私たちのところに届いたことがありました。何度も管理会社から連絡が来て、裁判沙汰になりそうだったので、ソリシターに相談すると「当然支払う必要はない」と。でも夫が同じようなケースに遭った人に聞いたら、「払った」って言うんですよ! 前の住人が海外に行ってしまって連絡が取れないから、泣き寝入りしたって。かなり焦ったけど、おじいさんはイギリスにいたので、ソリシターを通して彼と管理会社に連絡を取ってもらい、「うちは払いません」と伝えました。それで一件落着したのでよかったんですけど。

DIYは必須

― 入居後にリノベーションなどはしましたか?

B
本格的に住みはじめる前に1ヵ月の余裕があったので、週末に行って自分たちでペンキで壁を塗ったりといった作業をした程度ですね。
C
私はバスタブを入れたのと、キッチンとリビングルームの間に壁があって、そのせいでキッチンが暗かったんです。もともとは小窓がついていたんですが、前の住人が塞いでしまったらしくて。閉塞感もあったので、壁を取り除いてリビングからの光が入るように改装しました。
A
私もビルダーさんに頼んでキッチンとリビングルームの壁を壊して、行き来するときに家の中をグルグル回らなくて済むようにしました。それ以外は、何でも自分たちでやりましたね。
お金をセーブするために(笑)。壁だけじゃなく天井も壁紙だらけだったので、その壁紙の上からペンキを塗ったり、壁紙を剥がして新しいものに張り替えたり。すごくびっくりしたのが、ある部屋の壁紙を剥がしたら、下のプラスター(石膏)がモロモロと剥がれ落ちてきちゃったんです。そうしたら大量の毛が…。
BC
毛!?
A
プラスターの中に、茶色がかった人毛っぽい毛が入っていて…。「死体でもここに埋まってるの!?」とゾッとしました。夫が調べたら、昔のプラスターは「繋ぎ」に動物の毛を入れていたらしく、たぶん馬の尻尾の毛だろうと。
BC
へぇー。
A
壁がボロボロになってしまったので、セメントを買ってきて、自分たちで溶いて塗って修復しました。庭もガリガリのコンクリートの縁側があって、転んだら足が血だらけになるくらいボコボコのひどい状態だったので、ウッドデッキをつくりました。結構上手にできたと思ってるんですけど(笑)。あと、大きいシェド(小屋)を庭に建てたくて、それも買ってきて夫と2人で組み立てましたね。平らな基礎が必要だから、木枠を買って、そこにコンクリートを流し込んで。コンクリートをグルグルまわしてつくる小ぶりのミキサーは、実はツール屋さんでレンタルできるんですよ。うちの近所のお店では、24時間で20ポンドとか。
C
すごいですね。本格的。

閑散期の1月に物件を購入した人が多いことが判明。Cさんもその1人。

40歳までなら政府のサポートも

― これから家を購入する人へのアドバイスはありますか?

B
私は不動産バブルの時期に購入したので、どんどん値が上がって焦ったし、競争率が高くて大変でした。今は少し落ち着いているみたいだし、今後はブレグジットの影響が何らかの形で出るかもしれませんが、基本的に日本と違って家の価値は下がりにくいので、最終的に家を買おうと決めているなら、常に逆算して早め早めに行動した方がいいと思います。まずは高額なデポジットを用意するために、しっかり貯金ですかね(笑)
A
住みはじめた後の隣人とのトラブルはよく聞くので、事前に隣人を知れたらいいんですけど…。サーベイヤーもそこまで調べてはくれないし。
B
隣人問題は、目当ての物件やその近隣住人のゴミ捨て場をチェックするといいかも。できれば内覧の日以外で。ゴミが散乱してたり臭かったり、ゴミの捨て方で、ある程度のモラルがわかります。
A
確かに、フロントガーデンが散らかっていて汚いとか、隣家と面しているフェンスがボロボロとか、そういうところはチェックしましたね。前の住人に問題があると、そのトラブルで契約が進まなかったり、入居した後に大きな問題が見つかったりすることもよくあるので。
B
あとは買う時期。春~夏にかけては繁盛期なので物件はたくさん出るけど、競争率も高い。私は1月に買ったので、購入した家を見に行ったときは他の見学者はいなくて、じっくり内覧できました。
C
そういえば、私も購入したのは1月ですね。
B
それと、ファーストタイム・バイヤーは「Help to Buy ISA」という政府の住宅購入援助を受けられるんです。毎月積み立てていき、家を買うときにその貯蓄額の25%がボーナスとして受け取れる制度なんですが、それが40歳までなんですよ。家を探しはじめたときには、私たち夫婦は揃って40歳を過ぎていたので申請できなかったんですけど、それを住宅購入の目安にするのも一つの手かもしれません。

― 良い情報をいただきました!(笑)

週刊ジャーニー No.1102(2019年09月5日)掲載

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