気品漂うジョージアン・ハウス


1719年に当時の英皇太子(のちのジョージ2世)のプライベート・キッチンとして建てられた「ジョージアン・ハウス」。手前は専用のガーデン。

 次に案内された2つ目の宿泊施設「ジョージアン・ハウス」は、敷地内にある建造物の中でも比較的新入りといえる。「フィッシュ・コート」よりも遅れること約200年。1719年に、当時の皇太子(のちのジョージ2世)のためのプライベート・キッチンとして、宮殿のすぐ脇に建てられた。
「ジョージアン・ハウス」のリビング・ルームでは、ジョージ王朝時代をイメージした家具が配置されている。またそれぞれの施設の本棚には、建物の歩んだ歴史や修復について記した本「ヒストリー・アルバム」が置かれ、その歴史を知ることができる。© The Landmark Trust
時代とともに主が変わり、庭園管理人、宮殿最高責任者などの住居として利用されてきた。それに合わせて大々的な改築が行われたため、今、足を踏み入れたとしても、そこがキッチンとして建てられたことを示す『カギ』はほとんど見当たらない。現在のキッチンの壁に残る、かつての大きなキッチン炉の痕跡によってその過去を知ることができる程度だ。快適な居住空間へと華麗なる変身を遂げたといえるだろう。
ここには、シングル・ルーム2部屋、ツイン・ルーム2部屋、ダブル・ルーム1部屋のほかに、リビング、ダイニング、書斎、キッチン、バスルーム2つが設けられ、最大8人が滞在できる。特筆すべきは、1階にある広いリビング・ルーム。ランドマーク・トラストの学芸員らによって検討され、 1830年代を念頭においた装飾が施されている部屋だ。ジョージ1世が即位した1714年から、ジョージ4世が没する1830年までの期間は、現代でも高い人気を誇るインテリア・デザイン様式が生み出された時代でもある。その時代を見守ってきたこの部屋には、格式の高さを感じさせるジョージアン・スタイルの家具がしつらえられている。配されたソファーに腰を下ろせば、優雅な時間が演出されることだろう。
「フィッシュ・コート」と違い、宮殿とは別の棟にある点で落胆する人もいるかもしれない。しかし専用の庭があることや、リビングや寝室がゆったりとしていることから、
「ジョージアン・ハウス」の寝室の中でも最も広いダブル・ルーム。
「フィッシュ・コート」にも負けない人気があり、繰り返し訪れる人も見られるという。
「フィッシュ・コート」「ジョージアン・ハウス」のいずれにしても、滞在中は、ヘンリー8世がこよなく愛し、代々の君主に受け継がれた宮殿、そして壮麗な庭園を思う存分散策できることは言うまでもない。疲れたら自分の部屋に戻って休憩をとり、また出かけ、宮殿を我が物顔で歩き回る、そんなことができるのも滞在者ならではの特権といえるだろう。