
風光明媚なことで定評のあるスコットランド北部のハイランドHighlands。
このエリア内でも人気の高いスカイ島は、先週号で焦点を当てた、ボニー・プリンス・チャーリーと縁が深いことでも知られる。
今号ではそのスカイ島をご紹介することにしたい。
※写真はスカイ島の最西端、ニースト・ポイント。遠くにアウター・ヘブリディーズの島影が見える。
●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部
インナー・ヘブリディーズ 最大の「翼の島」
「高地地方」と訳される、スコットランド北部のハイランドは、なだらかで緑豊かなイングランドとは全く異なる顔を見せる。樹木すらはえない岩肌がむきだしの山々、複雑な海岸線や多くの島々などから成り、地殻変動や海による浸食、厳しい気候条件の中でゆっくりと形成された景観には、心を揺さぶられるような力が備わっている。
そのハイランドの西側に点在する島々はヘブリディーズ諸島と呼ばれる。ルーイス島やハリス島を中心とする外側のアウター・ヘブリディーズと、内陸に近いインナー・ヘブリディーズで構成され、「インナー」(内側)の島々のうち最大の島がスカイ島だ。
カタカナで「スカイ」と表記されるため「空の島」と思われがちだが、英語では「Skye」とつづられ、名称の起源は「空」ではないという。古代ローマ時代、紀元前150年頃の地図には、「Scitis」または「Scetis」という名で登場。 これらの名称はさらに古い、地元のケルト系ピクト人の言語に由来し、「翼のあるもの」を意味する語から派生した可能性があると考えられている。
ケルト語由来の「翼の島」とする説については、島の中央の山岳地帯から、放射状に伸びるいくつもの半島が翼のように見えることを表しているとする見解が有力だという。空から俯瞰で眺めるすべなどない時代だが、高い峰々から、海へとつきでる半島を肉眼で認めることができたのだろうと推測される。
また、霧が多く、「霧の島The Misty Isle」の異名もある。 9世紀後半からこの地域を支配したヴァイキングたちは霧を雲とみなし、古ノルド語「ski(雲)」と「ey(島)」に由良する「雲の島」を示す言葉を用いるようになり、これが「Skye」となったとする説もある。霧の晴れ間に広がる、スカイ島の見どころをその目で確かめに、この夏、出かけてみてはいかがだろうか。
編集部が独断で選んだ
スカイ島おすすめ6ポイント
スカイ島は見どころが実に多い。劇的な景観を織りなす海外線、奇岩の数々など枚挙にいとまがない。歴史より自然美という人は、フローラ・マクドナルド墓碑やダンヴェガン城(ともに本記事下部で掲載)を割愛し、下に挙げ切れていないポイントをインターネットでリサーチして旅の計画を立てるのもお薦め。なお、駐車場は基本的に有料。
キルト・ロック
Kilt Rock

●Kilt Rock Car Park, IV51 9JE※トイレ施設なし。
●いつでも入場可能。
◆高さ90メートルに及ぶ、六角柱状の玄武岩とドレライト(粗粒玄武岩)の岩柱が連なる断崖で、スコットランドの伝統衣装であるキルト(腰から下はスカート状)のひだを思わせることからこの名がつけられたという。スタフィンStaffinの南2マイル(約3.2キロ)。メルト滝Mealt Falls=写真=は少し身を乗り出さないとみつけられないので注意。なお、恐竜の足跡の化石がみつかったことでも知られる。
◆首を斬り落とされない限り死なない「不老不死の戦士たち」の宿命と壮絶な戦いを描いた、1986年公開のSFアクション映画「ハイランダー」(Highlander)で、スコットランドの戦乱の中で生まれた主人公が剣術の訓練を受けるシーンのロケ地となった。
ニースト・ポイント
Neist Point
●The Neist Point Car Park, IV55 8WT
●いつでも入場可能。
◆スカイ島の最西端。記事冒頭の写真ではかくれているが、灯台Lighthouseまで歩いていくことができる。往復ともに同じ道をたどり、約1.4マイル(約2.2キロ)。45分ほどの道のりだが、かなりの急こう配であることを覚えておいていただきたい。
タリスカー蒸留所
Talisker Distillery
●Talisker Distillery, Carbost,
IV47 8SR
www.malts.com/en-gb/distilleries/talisker
●3月~10月 毎日 10:00~17:00
11月~2月 毎日 10:00~16:30
◆1830年創業。スカイ島でモルト・ウィスキーづくりを続ける唯一の蒸留所。ピーティー、スモーキーと評される独特の風味が特徴。蒸留所ツアー(所要1.5時間、ひとり60ポンド)は回数が限られているので、事前予約必須。
フェアリー・プール
The Fairy Pools

●The Fairy Pools Car Park, Glenbrittle, IV47 8TA※トイレ施設の使用可能時間は夏期は9:00~17:00、冬期は10:00~15:00。
●いつでも入場可能。
●フェアリー・グレンFairy Glenとは場所が大きく離れているので注意。

◆スカイ島でのトレッキング(ハイキングより、かなりハード)の場所として、高い人気を博している場所。文字通り、妖精たちが水遊びするような小さな滝、水たまりなどが無数に連なる。夏場は水着姿で日光浴や水遊びに興じる人も見られる。ただし、水は超冷たい!
◆駐車場から、一番近い「プール」まで徒歩約20分。これだけですでに往復40分かかることを頭に置いておく必要がある。もっとも一般的なウォーキング・ルートで往復3マイル(約4.8キロ)、約1時間20分。もし、それよりも短い時間での滞在しか許されない場合、例えば30分歩いたら引き返すなど、計算しながら歩くといいだろう。
◆岩場も多く、雨が降るとすぐに足元が悪くなるので底厚のトレッキング用シューズを履いていくことを強くお薦めする。また、4月ごろから「ミッジズMidges」が大量にとびかう日があり、その対策をとって出かけたい。ミッジズは体長2〜3ミリ程度でヌカカ(日本の蚊よりも非常に攻撃的で、刺されると強いかゆみを引き起こす)やユスリカ(こちらは吸血しない)などの総称。ちなみに、取材班が訪れた6月初旬、幸運にもミッジズは一切いなかった。好天が続き、湿度が下がるとミッジズが出づらいとする説もあるが、地元の人にたずねても、確証は得られなかった。このミッジズ、あなどれない!口に入るわ、刺すわ、と景観を楽しむどころではなくなってしまうので要注意。


フローラ・マクドナルド墓碑
Flora Macdonald’s Grave

●Kilmuir Cemetery, IV51 9UE
●いつでも入場可能。

◆スカイ島での暮らしにスポットを当てた民族博物館「スカイ・ミュージアム・オブ・アイランド・ライフThe Skye Museum of Island Life(https://skyemuseum.co.uk/ポストコードはセメタリーと同じIV51 9UE/イースター~9月下旬ごろまでオープン。月~土 10:00~17:00。大人8ポンド) =写真=から歩いて3分ほどのところに、フローラ・マクドナルドの眠る墓地がある。大きなケルト式の十字架がその墓碑だ。強風にさらされることが多いため、オリジナルのものは建立からわずか2年で倒れてしまったといい、現在はワイヤーで補強してある。

◆フローラは、1722年、サウス・ユーイスト島(South Uist)で誕生。1746年、カロデンの戦いでイングランド軍に敗れ、落ちのびたボニー・プリンス・チャーリーに女装させて侍女と偽り、スカイ島へと大逃亡ドラマを繰り広げたのは24歳の時のこと。プリンスが欧州大陸への亡命に成功した後、フローラ自身は逮捕され、しばらくロンドン塔で禁固されたが、この間、当時のイングランド皇太子の訪問を受けるなど、著名人扱いだったとされている。1747年夏、保釈金制度が整えられ、フローラ始め、プリンスの逃亡幇助(ほうじょ)で罪に問われた人々は自由の身になったのだった。
◆フローラは、1750年、アラン・マクドナルドと結婚。アランは、当時のマクドナルド一族のチーフ(族長)の侍従役を務めていたアレグザンダー・マクドナルドの長男だったが、アランの仕事は順調というわけではなく、1774年にはアメリカのノース・キャロライナに家族で移住(幼い子どもたちはスコットランドに残し、長男と次男のみを同行)。しかし、アメリカ独立戦争に巻き込まれ、アランたちと離ればなれになるなど苦労が続いた。幸い、アランや息子との再会が成り、1780年には英国に戻った。
◆1790年、フローラはスカイ島で病没。キルミュア(Kilmuir)近郊に葬られた。その2年後、アランもフローラの側で永遠の眠りにつき、今もふたりの墓はキルミュアで強い海風にさらされている。フローラが生涯でもっとも愛したのは誰だったか、彼女以外知るよしもないが、プリンスとフローラを悲恋の主人公と考えたがる我々に対し、苦笑いを浮かべているかもしれない。
ダンヴェガン城
Dunvegan Castle

●MacLeod Estate, Dunvegan, Isle of Skye, IV55 8WF
www.dunvegancastle.com
●入場時間:4月1日~10月15日 10:00~17:30
入場料は大人15.50ポンド。
◆スコットランド北部(ハイランドと呼ばれる)を中心に、スコットランドには約300のクラン(Clan=氏族)が存在するといわれる。原則としては、同じ名字の一族が、チーフ(Chief=族長)の庇護を受けるかわりに忠誠を誓い共同生活をおくるという、日本のかつての豪族にも似た組織だ。なお、クランの数300に対して名字の数は900もあるといわれ、小規模な一族が、名字は異なるものの、より強大なクラン勢力の傘下にはいることが自然に行われていた。
◆ダンヴェガン城を所有するマクラウド(MacLeod)一族は、かつてはスカイ島およびラーゼイ島(Raasay)、ウェスタン・アイルズ(Western Isles)のうちハリス島(Harris)、ルーイス島(Lewis)などを勢力範囲としていた。同じマクラウド一族でも、「分家」がいくつかあり、ダンヴェガン城に住むのは代々「マクラウド・オブ・マクラウド(MacLeod of MacLeod)」という本家筋。
◆ダンヴェガン城は長い歴史を誇る、由緒ある城。18世紀なかばに一帯を襲ったジャガイモの大飢饉により、しばらく城を手放さなければならなかった期間を除いては、一貫してマクラウド一族が住み続けてきた。今日、一部は一般公開されているものの、マクラウド氏と家族の生活の場であることに変わりはなく、スコットランドの城の中でも数少ない現役の城であるといえる。
◆最も古い部分の歴史は13世紀にまでさかのぼるという城だけに、維持・管理は容易なことではない。大規模な修復が必要とされた2000年、その費用を捻出するためにマクラウド一族所有の山々の一部を売却する案も出されたが、結局、売却せずに済んだ。スコットランド政府などからの助成金なども得られ、マクラウド一族による維持・管理が続けられている。
◆マクラウド一族は、代々スチュワート王家支持派(「ジャコバイト」と呼ばれる)だが、1745年のジャコバイト峰起(詳しくは先週発行号をご参照ください)の際、ボニー・プリンス・チャーリーの軍には加わらなかった。1657年、ピューリタン革命による内乱が続いていた時代、ウースターの戦いでスチュワート王家のために戦ったマクラウド一族は一度に800人もの壮健なクラン・メンバーを失ってしまった苦い経験があり、1745年の出兵はみあわせたと言われている。スコットランド王家再興も大切だが、一族の存続も考えなければならない、当時のチーフ(族長)にとっては難しい選択だったに違いない。しかし、ジャコバイト派であることにはかわりなく、フローラ・マクドナルドも数ヵ月、この城に滞在したことがあったという。

Travel Information ※2026年6月22日現在
スカイ島 The Isle of Skye(アイル・オブ・スカイ)
「霧の島」の異名もあるスカイ島だけに、天気が変わりやすいので、くれぐれも無理は禁物。小川でさえすぐに増水する。また、逆に雨が降っていても、しばらくすると晴れ間が除く可能性もある。
【アクセス】
ロンドンから訪れる場合、インヴァネスやグラスゴーに入り(空路・鉄道)、そこから列車またはレンタカーで行くのが現実的。車移動の場合、カイル・オブ・ロッハルシュ(Kyle of Lochalsh)からは1995年に完成したスカイブリッジ(Skyebridge)で島に渡れる。これに対し、アーマデイル(Armadale)と本土を結ぶのはフェリーのみ。
【移動手段】
列車は走っておらず、公共交通機関となるとバスのみ。本数が限られているため、距離的には十分日帰りが可能なポイントなのに、1泊しないと帰ってこられないというようなこともある。レンタサイクルを利用する場合は、天気が急に変わりやすいことをお忘れなく。

【道路】
車でスカイ島内を移動する場合、道路は1車線が原則。車1台が通れる幅で対向車をやり過ごすための停車スペース(Passing Place)が定期的に置かれた細い道路も少なくない。あまりスピードが出せないことを意識して計画を立てたい。
【ガイド付きツアー】
スカイ島は、自分で運転して移動するのが最も便利だが、運転者の負担が大きい(気が抜けず、まわりの景色を楽しむ余裕のない区間が少なくない!)。ポートリー発のガイド付きツアー(ミニバス)を利用するのも一案。フェアリー・プール、タリスカー蒸留所、ダンヴェガン城またはニースト・ポイント(参加者が自分で選択)、キルト・ロックなど主要なポイントを効率よくまわることができる。運行会社によって値段は異なるが、ひとり70~100ポンド程度。
【宿泊】
全般的に、宿泊施設は充実している。ただし、夏場は著しく込むため、予約は早めに済ますことが必須。
【ツーリスト・インフォメーション】
スカイ島の中心的な町、ポートリーのツーリスト・インフォメーション・センターは閉鎖されてしまった。インターネットで自力でリサーチするしかない。
www.isleofskye.comほか。
Online Journey 関連記事
週刊ジャーニー No.1450(2026年6月25日)掲載


























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