
●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部
■ 世界遺産に指定されている、英国を代表する古代遺跡「ストーンヘンジ」。いつ、誰が、なぜ、どうやって造ったのか。何世紀にもわたり、人々はその謎の解明に挑んできた。来月に夏至を控えた今回は、この遺跡を征くことにしたい。
聖なる地には何かある
英南部ウィルトシャーの街ソールズベリーの郊外にある巨大列柱群、ストーンヘンジ。この遺跡がこの世に初めて姿を現したのは、今から5000年ほどさかのぼった紀元前3000年頃のこと。かつて地元の狩猟民族が墓標などの代わりとして立てた松の木の柱跡に、やはり何か惹かれるものがあったのか、アナトリア半島(現トルコ南部)から移住してきた人々が「聖なる地」を建設したのが起源とされている。ストーンヘンジはこれまでケルト系原住民族である古代ブリトン人が建造したと考えられてきたが、近年の研究から、考古学会ではこのケルト人説は否定されつつある。
初期のストーンヘンジは現在の姿と大きく異なり、今のような巨石群はなく、大地に円を描くように溝と土手がめぐらされていただけであった。このストーンヘンジのみならず、周辺一帯には類似した「円墳」がいくつもつくられ、やがてそれぞれに石柱が立てられるなど、独自に進化していった。ストーンヘンジも例外ではなく、溝からは炭や木炭と一緒に火葬された人骨が発見されてはいるものの、副葬品等は一切見つかっていないため、「墓所」というよりも、ある種の「神殿」として崇められていた場所だったのではないか。発見された人骨は、聖地の近くに埋葬されることを望んだ人々、あるいは儀式を執り行う「聖職者」の骨だろうと推測されている。
ストーンヘンジの溝の内側を走る土手には、円周に沿って56の木柱あるいは石柱がストーンサークルのように等間隔に立てられていた痕跡があるという。これらは発見者である17世紀の考古学者、ジョン・オーブリーの名前にちなんで「オーブリーホール」と呼ばれているが、各竪穴は直径1メートルほどもあり、当時からすでに周辺のほかの遺跡群とは一線を画すものであったことがうかがえる。
驚くべきことは、この段階ですでに「夏至の日の出」の方角を意識した形跡があることだ。円形につくられた溝と土手には南と北東方向に切れ目が2ヵ所あり、そこから円内へ出入りすることができるようになっているのだが、そのうちの北東を向いている幅広の出入口が、「夏至の日の出」の方向とぴったりと一致する(石の配置図参照)。偶然の産物ではないだろう。
石の神殿、現る

それから500年が過ぎた紀元前2500年頃になると、ストーンヘンジから30キロ北のマールバラ丘陵から砂岩の一種である巨大なサーセンストーン(Sarsen stone)が、そして240キロ以上西のウェールズにあるプレセリ山脈から小型のブルーストーン(Bluestone)が同所に運び込まれ、現在の姿の原型となる巨石建造物の建設がスタートする。
土手で囲まれた円の中心に、サーセンストーンのトリリトン(2本の直立した石の上に、巨石を横たえた三石塔)を馬蹄形に配置。さらにその外側に円を描くようにサーセンストーンを立ち並ばせ(ストーンサークル)、その上部に同じくサーセンストーンを水平に載せていく。上空から見れば、ひと続きの完全な円となるよう構成されていた。またブルーストーンは、円や馬蹄形を描くように要所要所に配置された。
建設に何年の歳月を要したのか、意図したものが完成したのかはわかっていないが、もし完成していたとすれば、円形のサーセンストーンは30基が直立し、その上に30基が横たえられていたはずだ(現在立っているのは17基、横石は5基)。巨大なサーセンストーンは紀元前2500年頃に配置されて以降、動かされた形跡はない。しかし、ブルーストーンは何度か配置が変更されていることがわかっている。
ストーンヘンジは紀元前およそ1500年以降、大きな変化を加えられることはなかったが、その後、どのように利用されたのかはわかっていない。最新テクノロジーを駆使し、周辺に点在する古墳や溝・堀の調査が進められ、少しずつ事実が明らかになってきているものの、真実は未だ闇の中である。21世紀の科学をもってしても残る数々の謎。だが、すべてが解明されていないからこそ、人々は惹きつけられるのだろう。謎は謎として残しておくほうがいいのかもしれない。
夏至と冬至の神秘
ストーンヘンジが入場料を徴収し、観光施設として公開され始めたのは1901年のこと。かつてはストーンサークルの中まで立ち入り自由で、石に触れることもできた。しかし、残念ながら現在はロープが張り巡らされ、一定の距離以上石に近づくことはできない。1年に1度、夏至の前日夜から夏至の朝に限り開放される「夏至祭り」では、例外的にロープが取り払われていたが、今は事前予約制のかなり競争率が高いイベントとなってしまった。その代わり、開園前の早朝または閉園後に開催されるイングリッシュ・ヘリテージ主催のツアー「Stone Circle Experience」に参加すれば、立ち入りも触れることも可能となっている。
太陽の高度が1年で最も高くなる日の朝に、石の間から太陽が徐々に昇っていく様子は、まさに神秘。ところが数年前、それとは真逆の反対方向に「冬至の日の入り」が見えることが判明した。農耕民族であった彼らにとって、夏が終わりへ向かう日を告げる夏至よりも、厳しい冬が春へと向かう1年の折り返し地点である冬至を知ることの方が、はるかに重要だったのではないか?――という新説が注目を集めている。現代の我々が暖かくなる春を心待ちにするように、古代の人々は冬の終わりの知らせに心を躍らせたのかもしれない。
見学用通路をさっと一周するのに要する時間は5分足らずだが、遺跡のまわりは芝生になっており、座ってのんびりとピクニックをする観光客がいたり、石に向かって瞑想する人がいたりする。巨石に圧倒され、倒壊した石に遥かなる時の流れを感じながらゆっくり歩いていると、不思議なことに、石からパワーが送られてきているように思えてきた。天文学的な機能を併せ持った、神秘的な古代のパワーストーンに癒されたい人、5000年の謎解きに挑戦してみたい人は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
ストーンヘンジ、どうやって造られた?
現段階で推測されている工程は、下図の通り。35トンを超える石もあり、それを立てたり、持ち上げたりするのは、容易ではなかったはず。気の遠くなるような作業だったことは間違いない。
推測 石の立て方




推測 石の載せ方

サーセンストーンの最上部まで土台が積み上がったら、横石を上に載せる。
Travel Information ※2025年5月12日現在

Stonehenge
ストーンヘンジ
Near Amesbury, Wiltshire SP4 7DE
Tel: 0370 333 1181
www.english-heritage.org.uk
【オープン時間】9:30〜19:00
【料金】£28.50~
※「Late Time Super Saver」のチケットとして、最終入場時間(16:30)が£25の日もある。ウェブサイトでご確認を。
【アクセス】
車:ロンドン中心部から約2時間半。M3を西へ進み、A303で降りてビジター・センターへ。
公共交通機関:ロンドン・ウォータールー駅からソールズベリー駅まで電車で約1時間20分。ソールズベリーの駅前から、ソールズベリーとストーンヘンジ間を往復するツアーバスが出ている。
週刊ジャーニー No.1393(2025年5月15日)掲載

















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