
ワインにまつわる今月のトピック:ワインの起源について
太古の昔から人の生活とかかわってきた飲み物
ワインの起源はとてつもなく古い。人類が遊牧生活から定住生活に移行し、農耕が始まった石器時代と考えられている。野生のブドウの樹は、深く茂った暗い森の中で、日照を求めて木の枝に巻きひげを絡みつけて上へ上へと生長する。初期の人間が木によじ登って甘い香りのするブドウの実を好んで食べ、それらを採集し、貯蔵し始めたという仮説は容易に想像出来る。貯蔵された果実が自然に発酵したことが、低アルコール度のワインの生産の始まりと考えられる。鎮痛剤などのない世界で、低アルコールのワインは人々の痛みを和らげ、気分を落ち着かせ、抑圧から解きほどき、不眠を解消し、悲しみと疲労を癒し、食欲と幸福感をもたらしたことだろう。
約8000年の歴史を誇るワイン造り

ワイン醸造の始まりは、醸造施設跡が見つかった起源6000年頃と考えられている。2011年に、アルメニアの山岳地帯で、ブドウの搾汁を土中に埋め込んだ壺「カラスKaras」(ジョージアの「クヴェヴリQvevri」=写真右=の前身)の中に流し込むための石膏製の床が発見された。付近にブドウの種があり、容器の内容物はワインであったことが化学分析によって確認された。洞窟内に同時代の墓地が存在していたことから、ワインは祖先の埋葬に用いられていたと推測されている。
ワイン生産の考古学的な痕跡は、他にジョージア(紀元前6000年代)、イラン(紀元前5000年代)、ギリシャ(紀元前4500年代)、シチリア(紀元前4000年代)でも見つかっている。つまり、現在、世界最古のワイン産地と考えられるのはアルメニアとジョージアを含むコーカサス地方ということになる。なお、紀元前6000年代にジョージアで使われていたクヴェヴリの前身である素焼きの壺からは、現在の上質ワイン用ブドウであるヴィティス・ヴィニフェラ種の大量の種と、ワインの存在を裏付ける酒石酸も見つかっている。
敵の目もあざむいた土の中での醸造
アルメニアのカラスやジョージアのクヴェヴリとは、下がすぼまった卵型の素焼きの大壺で、これを土中に埋めてワインを造る。口の部分が地面より20センチほど下に位置するよう埋められた大壺の中へ、つぶしたブドウを入れて厚手の木の板で蓋をし、周りを石灰粘土で覆って地表の高さまで密封し、その上に土を盛り、土中でワインを5~6ヵ月間、すなわち翌春まで寝かせて造った。土中の温度が安定していること、また、敵から隠せるという理由で、このワイン製法は理にかなっていた。

美しい水色の1本

週刊ジャーニー No.1427(2026年1月15日)掲載











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