ワインにまつわる今月のトピック:年の瀬に飲みたいワインについて

フェスティブ・シーズン到来

2025年もそろそろ幕を閉じる。師走はクリスマス、大晦日といった祝い事が多い。酒席に欠かせないのが、ポンという軽快な音をたて、細かな気泡で雰囲気を高めてハッピーな気持ちにしてくれるスパークリング・ワインやシャンパーニュ(発泡酒)だ。ヴーヴ・クリコVeuve Clicquot、ボランジェBollinger、ルイ・ロデレールLouis Roederer、ポル・ロジェPoll Roger、ルイナールRuinartといった有名ブランドのシャンパーニュはいうまでもなく、今では手頃なスパークリング・ワインも多く出回っている。これらの持つほのかな甘さをひきたてるため、少し塩味を感じさせるスモークサーモンや生ハム、ナッツ類(ピーナッツは避けること。ただしピーナッツはビールには合う)や様々なカナッペを添えると話が弾み、場が盛り上がるだろう。
発泡酒には数多くの銘柄があり、いろいろな種類がある。祝い事の多いこの季節に、様々なブランドや種類を試し、自分の好みを見つけてみるのもいいだろう。ただし、百薬の長と呼ばれるお酒ながら、飲みすぎには気をつけたい。英国では成人の1週間あたりのアルコール摂取量については14ユニット、ワイン/発泡酒なら小さなグラスに10杯を目安とし、それ以下に抑えるよう推奨されている。

個性豊かな発泡酒たち

シャンパーニュの有名ブランドのフラッグシップNV(ノン=ヴィンテージ)にはそれぞれ個性がある。例えば、テタンジェTaitingerはミネラル感があり、白い花や柑橘類の風味を呈すシエレガントなスタイルで、ヴーヴ・クリコのイエロー・ラベルは、フレッシュなネクタリンのフレーバー、そしてヴァニラ風味を呈し、全体的にリッチで精妙だ。モエ=テ=シャンドンMoët & Chandonは、まろやかでクリーミーで、優しい口当たり。ポル・ロジェは、果実香味がしっかりしており、バランスがよく、男性で表現するとブラック・タイを着た紳士のようなシャンパーニュだ。また、ルイナールは、ピュアな果実香味を呈し、エレガントで洗練されたスタイルを持ち、滑らか、かつしなやか。樽内発酵させるボランジェは、古いワインを多く使用するので、シャンパーニュの中でも最も複雑な風味を伴う。
一方、スパークリング・ワインには、イタリアのプロセッコProsecco、スペインのカバCava、そしてフランスのクレマンCrémantなどがある。カバとクレマンはシャンパーニュと同様の作り方をしているので辛口のものが多く、複雑な風味を呈すが、プロセッコは製造方法が異なるため、ほとんどは半甘口で、フレッシュなブドウの香りが新鮮だ。

クリスマス・ディナーの主役

ところで、英国でクリスマス・ディナー(正餐)と呼ぶのは12月25日の遅めのランチで、クリスマスに七面鳥が食べられるようになったのは16世紀後期から。クリスマスの名作映画の1つに、チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」があるが、その中で、冷酷で欲深い商人のスクルージが、クリスマス・イヴに現れた精霊によって心を改め、安い給料で雇いこき使ってきた事務員のボブ・クラチットに七面鳥を贈るシーンがあり、英国の伝統的なクリスマス・ディナーの主役が七面鳥であることをうかがい知ることができる。
ローストした七面鳥について、さらに記してみよう。長時間かけて丸焼きにすることから、肉の乾燥を防ぐため、中にスタッフィング(ソーセージ・ミートに玉ねぎ、パン粉やセージなどのハーブを混ぜ合わせたもの)を詰める。サーブする際にはブレッド・ソースBread Sauce、レッドカラント・ジェリーを用意し、付け合わせには、ベーコンで巻いたカクテル・ソーセージ、ロースト・ポテト、ゆでた芽キャベツに栗を加えたもの、ハチミツで味付けしたニンジン、グリルしたパースニップが定番。通常、スターターはなく、メインの七面鳥の後、部屋の明かりを消してブランデーで火をつけたクリスマス・プディングの登場というクライマックスを迎える。このプディングにはブランデー・バターを添えていただく。なお、主役の七面鳥だが、近頃では、ロースト・ポーク/ビーフ/チキンのほか、ロースト・グース/ダックを選ぶ家庭も増えつつある。

さて、この時期に勧めたいスパークリング・ワインを紹介する。南アフリカ産のグラハム・ベック、ロゼGraham Beck Rose(ウェイトローズで14ポンド)=写真右。シャンパーニュと同じ製法で造られ、ルビー・グレープフルーツやラズベリーの果実とライムゼスト、ブリオッシュの風味を呈す辛口のワインで、相性のよい料理の幅が広い。もちろん、七面鳥とは絶妙の組み合わせといえる。では、すばらしいクリスマスと新年をお迎えください。

週刊ジャーニー No.1423(2025年12月11日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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