ワインにまつわる今月のトピック:日本のワイン事情 その5

地域の活性化にも貢献!

カーブ・ドッチのブドウ畑。

500ヵ所ほどある日本のワイナリーの45%強は、山梨、長野、北海道の3道県で占められているが、他にもワイン造りが盛んな県が幾つかある。今号からは、主要3道県以外に目を向けてみることにしたい。
ワイナリーの数の増加に伴い、その周辺にレストランやショップ等が集まる、ワインに特化した地域も増えてきている。その例として有名なのは長野県のワイン・バレーだが、新潟ではワイン・コーストと呼ばれる地域の人気が高まってきている。そこは、新潟市街地から海岸線に沿って西へ車で約40分の角田山の麓にある。個性的な5つのワイナリーが集まる地域だ。筆者も15年ほど前に訪れたことがあるが、ブドウ畑は海岸から少し入った砂地の山麓斜面に広がり、2つのワイナリー(カーブ・ドッチとフェルミエ)は徒歩2分と近接しており、ワイン産地としてはなんだか不思議な、でも夢を感じさせる場所だったことを覚えている。筆者が訪れた当時はまだワイナリー見学ツアーなどは整えられていなかったが、今では毎日開催されている。ワイン造りの現場を訪れ、ワインや料理を愉しみ、豊かな時間を過ごせる空間やサービスを提供することで地域の活性化にも一役かっている。

日本海の幸と合うワイン

新潟ワイン・コーストで最も有名なのはカーブ・ドッチCave d‘Occi。ワイン未開のこの砂地土壌の山麓地域を世界に誇るワイン産地にしようと1992年にスタートした。ホテル、ショップ、ベーカリー、温泉施設、レストラン、カフェ、スパなども併設された滞在型のワイナリーだ。ワイナリー・ツアーには、ブドウ畑、醸造室、樽倉、セラーの見学、そしてテースティングが含まれ、ワイン好きにはたまらないほど充実している。今では日本各地から大勢の観光客が訪れるようになった。ここで力をいれているのは、スペインやポルトガルの大西洋沿岸で活躍しているアルバリーニョAlbariño種から造る白ワイン=写真。桃や青いリンゴ、そして白い花の香味を呈し、溌剌とした酸味を呈すワインだ。日本海でとれる海の幸にもってこいのワインとしてお薦めする。

個性豊かなワイナリー

このワイン・コーストには他に、フェルミエFermier 、ハッコーショオHakko Chaud(旧ドメーヌショオDomaine Chaud)、カンティーナ・ジーオセットCantina Zio Setto、ルサンク・ワイナリーLe Cinq Wineryがある。フェルミエは、カーブ・ドッチで経験を積んだオーナーによって設立され、水捌けのよい土壌と海風の影響を受けたワインを造っている。ブドウ畑を眺められるレストランでは、ワインペアリングをリクエストして自家醸造ワインとフレンチのコースを楽しむこともできる。ハッコーショオは、大学院の博士課程で微生物を研究した醸造家によるワイナリーで、微生物や小動物などぶどう畑を取り巻く環境にも配慮し、無農薬でぶどうを栽培。なるべく手を加えない醸造法で、個性的なワインを生産。カンティーナ・ジーオセットは、イタリアのぶどう品種に挑戦し、食事との相性を考えたワイン造りに取り組んでいる。ルサンク・ワイナリーは、フランス語で数字の5を意味する名前の通り、ここでは5番目にオープンしたワイナリー。ピノ・ノワール種からエレガントで繊細な味わいの赤ワインを生み出している。

週刊ジャーニー No.1406(2025年8月14日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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