ワインにまつわる今月のトピック:旬のストロベリーとロゼ・シャンパーニュ

夏のイベントに欠かせないストロベリー

7月のイングランドは華やかだ。ウィンブルトン・テニス、ヘンリー・レガッタ、グラインドボーン・オペラなど、英国の伝統行事が続く。そうした恒例のイベントで必ず供されるのが旬のストロベリー。ウィンブルドンでのストロベリー&クリームは特に有名だ。英国におけるテニスの歴史は古く、ハンプトン・コートでの貴族の遊びから始まり、19世紀に「ローンテニス」として確立され、今日のテニスへと発展した。ウィンブルドンが1877年から始まった世界最古の選手権でもあるのも納得がいく。

この選手権とストロベリー&クリームの組み合わせの歴史はというと、当時、テニスを高貴なスポーツとしてたしなんでいた貴族たちが、庶民の手には届かなかった生クリーム(牛乳から生クリームを造るには大変手間がかかった)を、英国の庭と呼ばれるケントで産出されるストロベリーにかけて楽しんでいたことから始まったようだ。19世紀にスタートしたウィンブルドン選手権のシーズンと、ストロベリーの旬が重なり人気となったストロベリー&クリームは、やがて定着し、今ではウィンブルドンに欠かせない存在となっている。


イートン校で生まれたスイーツ

ストロベリーを使った英国の伝統的なスイーツとして、ほかに思い浮かぶものにイートン・メスEton Messがある。「イートン」とは英国の王室ともゆかりの深い名門イートン校のことで、「メス」は英語で「ぐちゃぐちゃ」という意味の言葉。この9月からチャールズ国王の孫のジョージ王子も通うことになったイートン校で、サクサクとしたメレンゲ(卵白と砂糖をしっかりと泡立てて、オーブンでじっくりと焼き上げたもの)と甘い生クリーム、そしてジューシーなストロベリーを豪快に混ぜ合わせたスイーツが、クリケットの対抗戦の際に食されていたことから名付けられた。今ではストロベリーのみならず、他のベリー類を使う場合もあり、イートン校に限らず、この季節の様々なイベントで供されたり、レストランのデザートメニューに盛り込まれたりするようになっている。

ストロベリーと好相性のシャンパーニュ

今年もウィンブルドン選手権のオフィシャル・シャンパーニュとなっているのが、ランソン・ロゼ・ラベル・ブリュットLanson Rose Label Brut=写真右。このロゼ・シャンパーニュは、どこか赤いベリー類やバラ、柑橘類の風味を呈し、ミネラルの味わいも持ち、他の有名シャンパーニュのロゼよりも口当たりがやさしく、ほんのりした甘さがフレッシュなストロベリーにぴったりという1本だ。 ストロベリーを使ったスイーツには年代物(ヴィンテージ)の極上シャンパーニュや、極辛口のシャンパーニュは、ほとんど合わない。ちなみに、ヴィンテージ・シャンパーニュのラベルには収穫年が明記され、極辛口シャンパーニュのラベルには「エクストラ・ブリュットExtra Brut」、「ウルトラ・ブリュットUltra Brut」、または「ブリュット・ゼロBrut Zero」と書かれているが、ストロベリーをお供にする時には、「ブリュットBrut(普通の辛口)」、あるいは「ドゥミセックDemi Sec(半甘口)」のシャンパーニュを選ぼう。よく冷やしてから召し上がれ。


週刊ジャーニー No.1452(2026年7月9日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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