
ワインにまつわる今月のトピック:日本のワイン事情 その3
優れたブドウを生み出す恵まれた気候と土壌

前回の山梨県に続き、今回は長野県のワイン事情についてお届けしたい。長野県の県歌『信濃の国』に謡われるように、長野県は日本のほぼ真中に位置する海のない県で、西から南にかけて飛騨山脈北アルプス、木曽山脈中央アルプス、赤石山脈南アルプスといった標高3000メートルを超える険しい山々が連なり、中央から東にかけて八ケ岳連峰や上信越火山群がひろがる。それらの山々を源として、千曲川、梓川、犀川、木曽川、天竜川など日本有数の河川が流れ出し、これらの河川沿いに佐久盆地、上田盆地、長野盆地、松本盆地、諏訪盆地、伊那盆地の6つの盆地が形成されている。
ブドウの栽培地は、標高350~900メートルの山麓斜面を利用した長野盆地、松本盆地、佐久盆地、上田盆地、そして伊那盆地に拓かれている。それらの地域は年間降雨量が少なく、日照時間が長いことに加え、昼夜の寒暖差や年間の気温差が大きく、水はけのよい土壌からなる山麓斜面にあって、好条件に恵まれている。糖度と酸度の両方が高くて色付きもよく、凝縮感のある果実香味を持つ質の高いブドウが栽培されているのも納得がいく。長野県は山梨県に次ぐ日本ワイン生産量とワイナリー数だが、ワイン用ブドウの収穫量では全国トップを誇っている。
長野県のワイン作りを支える50を超えるブドウ品種
長野県産のワインは、ワイン用ブドウのみならず、生食用ブドウやそれらの交雑種のブドウから造られる。50を超えるぶどう品種が栽培されており、ヨーロッパ系のブドウ品種であるメルロMerlot、シャルドネChardonnay、カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignonは日本でトップの生産量を誇り、そのほかに、次のようなブドウが作られている。
● マスカット・ベーリーA Muscat Bailey A…日本のワインの父と呼ばれる川上善兵衛によって生み出された、アメリカ系品種とヨーロッパ系品種の交配種で、色調は濃く、キャンディのような甘い香りを呈す赤ワインを造る。
● ナイアガラ Niagara…県内の栽培量が最も多いアメリカ系品種。甘い華やかな香りをもつ白ワインを造る。
● コンコード Concord…アメリカ系品種でフルーティーな味わいの白ワインを造る。
● 竜眼 Ryugan…もともとはヨーロッパ系品種で、中国から渡って日本に入ったとされ、善光寺ブドウとも呼ばれている。さわやかな酸味を呈す口当たりの優しい白ワインを造る。和食によく合う。
長野県の誇るワインヴァレー
さて、近年、日本国内にワイナリーが増えるにつれ、ワインヴァレーという名称をよく耳にするようになった。本来、ヴァレーというのは谷を意味するが、日本のワインヴァレーとは、地理的特徴や、ワインに何らかの共通点を持つワイン産地の総称を意味する。長野県には、千曲川ヴァレーをはじめ、桔梗が原ヴァレー、日本アルプスワインヴァレー、天竜川ワインヴァレー、八ヶ岳西麓ワインヴァレーがある。
● 千曲川ヴァレー…扇状地に広がるワイン産地で、特にヨーロッパ系のメルロ種の産地として有名。35ある小規模のワイナリーによって個性的なワインが造られ、ワイナリー数はさらに増えつつある。標高400~800メートルという標高差を利用して、様々なぶどう品種が栽培されている。特に東御(とうみ)市や高山村のシャルドネ(白ワイン)の評価が高く、上田市を流れる千曲川左岸(川が流れる方向に向かって左側)では、標高700メートルに位置するブドウ畑で日本トップ級のカベルネ・ソーヴィニョンとシラーSyrahから優れた赤ワインが生み出されている。千曲川ヴァレーで有名なワイナリーには、「ソラリス」で知られるマンズワイン小諸ワイナリーをはじめ、ヴィラデストワイナリー、カーヴハタノ、信州タカヤマワイナリー、シャトーメルシャン椀子ワイナリーなどがある。
● 桔梗が原ヴァレー…長野県でのワイン造り発祥の地である塩尻市が含まれ、老舗ワイナリーが多い一方で、小規模ワイナリーも増えつつある。ナイアガラやコンコードなどのアメリカ系品種の栽培が多いが、メルロやシャルドネのほか、近年注目されているマスカット・ベーリーAから優れたワインが造られている。ここには、シャトーメルシャン桔梗が原ワイナリー、サントリー塩尻ワイナリー、ドメーヌ・コーセイなどがある。
週刊ジャーニー No.1397(2025年6月12日)掲載











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