
ワインにまつわる今月のトピック:ブドウ栽培について その1
ブドウの実を甘くするのはストレス!
秋となり、既にブドウの収穫が始まっている地域もある。今号ではブドウ栽培について書くことにしたい。大昔、ブドウの樹はイチョウのように、雄蕊(おしべ)をもつ花をつける雄の樹と、雌蕊をもつ花をつける雌の樹が存在したが、今では雄蕊と雌蕊をあわせもつ花をつける樹へと変化した。ブドウの樹は絡みついて成長する特性があり、自然界では日照を求めて他の木に巻きひげを絡ませ、よじ登るように育つ。ブドウは、その実を食べて、種をフンの排出によってまき散らす鳥や動物を魅了する甘い果実を実らすことで、新たな樹を生長させている。そして、生き残るために、水と栄養素を求めて根を深く張る。さらに、もし環境が悪く樹が危険性を感じると、生き残るチャンスを最大にすべく、自身の生長を犠牲にして鳥や動物にとってより魅力的な甘い果実を多く実らせる。この特性は、野生のブドウ、栽培されたブドウにかかわらず全ての樹に宿っている。良質のブドウを栽培するには、多少のストレスが必要と考えられているのはこのためだ。
早まる収穫時期
さて、英国では今年の暑い夏の恩恵を得て、ブドウの収穫が通常より1週間ほど早く9月10日頃から始まった。出来もよく、イングランド南西部では凝縮した風味をもつブドウとなり、北西部とウェールズでは豊作だった。 収穫時期は地域によって異なるが、一般的に気温の高い地方ほど収穫の時期は早く、また、白ブドウ品種の収穫は黒ブドウ品種より早い。従来は開花から100日目に収穫していたものだが、地球温暖化の影響で、糖度の高いブドウとなるものの、バランスをとる酸味を保持するために、以前より早めに収穫するようになってきている。北半球の場合には通常9月に、南半球では3月から収穫が始まる。従って、新酒(ヌーボー)は南半球から先に作られる。南半球のワイン産国からのワインがヨーロッパに入ってくるようになって、フランス産ボージョレー・ヌーボーの人気が落ちたのはこれが理由だ。
痩せた土地でよく育つ樹
ブドウの樹は、他の作物では生育が難しいような痩せた土地でよく育ち、肥えた土壌より良質なブドウをはぐくむ。ヨーロッパにおいて、山や丘陵の斜面や麓でブドウ栽培が行われ、川に近い平地の畑で野菜や作物が栽培されるのはきわめて理にかなっている。さて、一般的な北半球のブドウ栽培(英語でviticulture)について見てみよう。ブドウ栽培に理想的な気候は次の通り。
【冬(12~2月)】ブドウの樹の生育を制止し、樹に休眠を与え、病虫害を撲滅するに十分だがブドウの樹を枯死させない程度の寒さ、そして土壌に十分な水分が貯えられる程度の雨が必要。
【春(3~5月)】ブドウの樹の生育を進める穏やかな雨、受粉を促す穏やかで温暖な気候が必要。
【夏(6~8月)】開花の期間中は安定した暖かい気候が必要。その後はブドウ果粒を肥大させる、たまに降る少量の雨と、暑さと強い日照が必要。
【秋(9~11月)】ブドウを完熟させるために、暖かく乾燥した長い日々が必要。
すべての努力は秋の収穫のため
ブドウ栽培の1年間の作業は次の通り。▶10月の収穫後は主にワイン醸造所での仕事となる。一方、畑では生りの悪いブドウの樹を掘り起こし、土地を整える。▶11月と12月には土を掘り起こし、冬の霜を防ぐために、樹の根元に土を寄せ、軽く秋の剪定をする。▶1月には本格的な剪定を行う。フランスでは、ブドウ栽培の守護聖人である聖ヴァンサンSaint Vincentの祭日(1月22日頃)後に剪定を始めるのが伝統。▶2月は剪定を続行。▶3月は剪定作業の終了と肥料の散布。▶4月は樹の根元に寄せた土を除き、鍬を入れ、樹周辺の土壌を掘り起こす。実をつける新梢を持つ熟梢を針金に固定するかたわら、新しい苗木を植樹。▶5月には熟梢から新梢が生長する。病害防止のための最初の薬剤散布。広がった新梢を針金と針金の間に押し込める。▶6月、新梢の押し込め作業の続行と、新梢の固定。▶7月には余分な新梢を除き(除梢)、必要な梢の固定作業を行う。ブドウが過剰になりすぎていたら生産量を制限して質を高めるために摘芯。薬剤散布。▶8月、除梢と摘芯。▶9月は醸造機械類の整備。畑では屈折糖度計を使って定期的に糖度をチェックし、収穫の日を決めて収穫。
ブドウ栽培における剪定は非常に大切で、翌秋の収穫用ブドウのために新梢の源となる芽の位置づけをすることと、将来にわたって果実の安定した収穫ができるように調整することがその目的。また、芽の数をコントロールして最終的な収量を制限したり、最大化したりして管理している。剪定についての詳しい話は別の機会に譲るとして、次号では醸造についてお届けしよう。
週刊ジャーニー No.1414(2025年10月9日)掲載











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