■中古本の世界で、不可解な大量購入が相次いでいる。英国北部ノーサンバーランドの「バーター・ブックス」では、通常1週間分に相当する冊数の本を、カナダ企業が1度にまとめて注文した。同様の「巨大注文」は、世界各地の独立系書店からも報告されているという。その理由をBBCが探っている。

前述の古書専門店の店主のスチュアート・マンリー氏は、中古書店業界で30年働いてきたが、「こんなことは初めてだ」と話す。同氏の店に限らず、こうした大量注文の行き先は遠方の倉庫で、最終的に何に使われるのかは明らかではない。ただ、業界では生成AIの学習用データとして購入されているのではないかとの見方が強まっている。
背景には、AI企業による書籍利用をめぐる米国の裁判判断がある。2025年、AI企業「アンソロピック」が合法的に購入した書籍をAI学習に使用することについて、米国の裁判所は著作権法上許容されるとの判断を示した。訴訟資料からは、同社が書籍を裁断して高速でデジタル化する「破壊的スキャン」を行っていたことも明らかになった。この方法では本の背を切り落とし、ページを大量にスキャンした後、残った紙をリサイクルする。中古書店にとっては長年売れなかった本が売れる好機となる一方、貴重な書籍まで失われる可能性には懸念がある。注文内容は、ラテン語の専門書から西部劇まで、一見して無秩序だという。専門家は、幅広く珍しい資料を集める動きが、大規模言語モデルの学習に新たなデータを与えるAI企業の需要と一致すると指摘する。ただ、英国では米国より著作権保護が厳しく、書籍の複製やAI学習には原則として権利者の許可が必要とされる。
「世界に『ダ・ヴィンチ・コード』が500万冊も必要なわけではない」とマンリー氏は話す。しかしその一方で、唯一現存する18世紀の版本など、失われれば取り返しのつかない書物もある。こうした「巨大注文」が中古本の廃棄を意味する場合、売り手は難しい選択を迫られることになる。AI時代の到来は、中古本に思わぬ需要を生み出すと同時に、「売れること」と「残すこと」の新たな難題を突きつけている。 By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)








































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