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■ 第259話 ■Youは何しに長崎へ?

▶当欄ではこれまでに何度か幕末明治のことを取り上げて来た。しかしイギリスやユダヤ資本家の目線で明治維新を見ると今までと全く違った光景が見えて来る。開国した途端、満面笑顔の腹黒欧米軍団が日本に土石流のように押し寄せて来た。これまでは幕府の本丸、江戸に近いが故にどうしても横浜に目が行きがちだった。それは間違っていない。しかし筆者が今、大注目しているのは長崎だ。幕府と折衝する以上、各国政府が江戸に近い横浜の外国人居留地に拠点を置くのは当然だ。何度も登場する英国籍ユダヤ系商社ジャーディン・マセソンもまた横浜に立派な自社家屋を建てた。地元の日本人に「英一番館」と呼ばれた。一方でジャーディン・マセソンは上海にいた弱冠23歳のスコットランド人社員、トーマス・グラバーを長崎に送り込んだ。グラバーは長崎で「グラバー商会」を開設した。

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▶グラバーはなぜ長崎行きを命じられたのか。地図を見ればよ~く分かる。長崎は上海に近い。航路なら横浜よりも上海の方が短い。それが何を意味するのか。上海はアヘン戦争に勝利したイギリスが1848年、戦利品として清から分捕った租界地(租借地)だ。最初は数キロ四方の小さな土地だったが何だかんだ理由をつけて勝手に土地を広げていった。欧米人の悪党ぶりは地面師レベル。租界地で清の法律など通用しない、事実上の植民都市。1859年には英国の汽船会社が長崎と上海を結ぶ定期航路を開設。グラバーらもよく利用した。1862年になると幕府も千歳丸(せんざいまる)を長崎~上海間に就航させた。千歳丸は英サンダーランドで建造された400トン弱の小さな木造帆船で幕府が3万4,000ドルという法外な額で購入した。長州の高杉晋作らはこの千歳丸に乗って上海を視察。現地人が「犬と支那人、入るべからず」と屈辱的な扱いを受けている様子を見て「このままでは日本も同じ運命を辿る」と危機感を募らせた。が、注目すべきところはそこじゃない。ちょい上、グラバーらが英国の定期船を利用して長崎と上海の間を往来していたという部分だ。

上海と長崎
上海と長崎。思ったより近かったんですが何か?

▶上海往復の目的は何か。もちろん表向きは交易。しかしもう一つの重要な目的は情報交換だ。かつてナポレオン戦争があった頃、ロスチャイルド家はドーバーとカレーの間に私設の高速ボートを常設し大陸での戦況を誰よりも早く知った。ワーテルローでイギリス側勝利の知らせを誰よりも先に入手。ところがあえて悲痛な表情で英国債を大量に売った。投資家たちは「ロスチャイルド卿が英国債を売っている。イギリスが負けたに違いない」と勝手に思い込み、慌てて国債を叩き売った。英国債は大暴落。ロスチャイルドは裏で国債を底値で大量に買った。2日後、政府にようやくイギリス勝利の報が届き人々は国債を買い漁った。英国債は大反発。ロスチャイルドはこれを高値で売ってウルトラ莫大な利益を上げた。人形は顔が命。投資家は情報が命。


▶上海には英国の他、フランスやアメリカから来た一攫千金狙いのヤバイ連中がウジャウジャいた。のちに生麦事件で薩摩武士に斬り殺される英国人も上海にいた。この当時、上海で力を持っていたのはやはりユダヤ人資本家たちだった。立派なシナゴーグもあった。その中でも桁違いに大富豪のユダヤ人がいた。アヘンを大量に清に売りさばいて莫大な富を築いた男だ。超大物の悪っぽいのが現われた所で次号に続く。チャンネルはそのままだ。

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週刊ジャーニー No.1381(2025年2月20日)掲載

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