
■ 第274話 ■なんか変だぞ、日清戦争
▶日本は清と戦争した。1894年のことだ。維新からわずか27年、明治政府は短期間で軍艦や大砲をズラリ揃えた。欧化政策や近代化を急いだけれど、なんで隣国と戦争しなくちゃいけなかったの? 当時、朝鮮は実質的には清の属国だった。日本は戦略的に朝鮮と清を切り離すことが重要と考えた。そんな時、朝鮮半島で農民暴動が起きた。筆者は「東学党の乱」と習ったが今は「甲午(こうご)農民戦争」と教えているらしい。研究が進む中でこういった修正が加えられるのは当然だけど一所懸命暗記した側からしてみたら歴史を動かされるとちょい困惑。
▶暴動を抑えられない朝鮮が清に援軍派遣を要請。清軍が半島に送られると明治政府も日清間の条約に基づいて派兵した。日本からも軍隊がやって来たことにビックリした朝鮮政府は慌てて東学党と手打ち。日清両国に「お騒がせしてすみませ~ん。鎮火しましたのでお引き取りを~」とぺっこり90度に頭を下げた。ところが鼻息荒く駆け付けた日本も清も簡単には帰らない。その後、日清両国の間で引く引かないがこじれにこじれて戦争に突入していく。しかしウクライナ紛争を見るまでもなく戦争ってとんでもなく金のかかる国家の一大事。戦争に突入する理由がちょっと希薄じゃない? しかし筆者が深堀りしているのはそこじゃない。

▶1894年7月25日、日清戦争の始まりとも言える衝突が海上で発生した。豊島沖(ほうとうおき)海戦、または高陞号(こうしょうごう)事件とも言う。これは清が増援を本国に要求したことに始まる。高陞号は戦争準備行為として清国軍兵1100人を仁川(インチョン)に向けて輸送中。清の巡洋艦「済遠(さいえん)」が護衛にあたった。半島への兵士輸送は日清間で交わされた条約に違反する行為。これが日本の巡洋艦「吉野」「浪速」「秋津洲」からなる第1遊撃隊と鉢合わせした。どちらが先に発砲したか、諸説あって特定できないがいずれにしても両国は戦闘状態に突入した。「済遠」は高陞号を見捨てて逃走。高陞号は白旗を掲げ、降伏の意思を示した。日本は高陞号に人見善五郎大尉を送り臨検を行った。そこでこの高陞号がイギリスの商社からチャーターした英船籍の船であり、乗組員全員がイギリス人であることを知った。人見大尉は「浪速」に戻り艦長に報告した。艦長は東郷平八郎と言った。
▶高陞号に乗っていた清軍兵士らは降伏を良しとせず、日本側の要求を拒否。東郷はイギリス人乗組員に向けて「艦を見捨てよ」と信号を送った。しかし清兵に脅されていた乗組員たちは抵抗できず「ボートを送って」と返すが東郷は応じなかった。高陞号の甲板では戦闘に備えて清の兵士が武器を手に走り回る姿が見えた。東郷はやむなく「撃沈する」と信号旗を掲げ、水雷と砲撃でこれを撃沈。海上に漂っていたイギリス人乗組員を全員救助した。清の兵士はほとんどが死亡。東郷の対応は国際法上合法だったが、高陞号が英船籍だったためイギリスで反日感情が高まった。この高陞号、英ユダヤ系商社ジャーディン・マセソン所有の輸送船だった。どっしぇー。何で出て来るジャーディン・マセソン。しかも今度は清側の立場で。当時英国最大の商社だったジャーディン・マセソン。邪魔くさいけどどこにでも顔を出す、ある意味商社マンの鏡だぞってな辺りで次号に続く。なんか臭うぞ日清戦争。チャンネルはそのままだ。
週刊ジャーニー No.1396(2025年6月5日)掲載
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