ウェールズの首都に建つ カーディフ城を征く
© Castell Caerdydd / Cardiff Castle

●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部

■ロンドンから電車で約2時間、車やバス(コーチ)で3時間ほどで行くことができる、ウェールズの首都カーディフ。今回は、街の中心部に建つカーディフ城をご紹介したい。

イングランド、スコットランド、北アイルランドとともに、英国を構成する国のひとつ、ウェールズ。ウェールズ南部に位置するカーディフは、街の中心を通って港へと注ぐタフ川の恩恵を受けて発展してきた首都だ。

起源は今から2000年前、古代ローマ人が同所に砦を築いたことから始まる。その後、フランスから上陸してきたノルマン人が要塞を築き、港を介した交易地となった。しかし、積み荷を狙う海賊がブリストル海峡を頻繁に襲撃するようになると、住民の定着も進まず、町として成長するまでにはなかなか至らなかった。

長い暗黒時代の末、ようやくこの小さな港町が発展を迎えたのは、産業革命期の18世紀末から19世紀前半にかけてのこと。ウェールズ各地で、炭鉱が次々と発見されるようになったためである。1839年、ウェールズで広大な土地を所有していた第2代ビュート侯爵がドック(船着場)を開設。さらに鉄道が開通すると、大量の石炭や鉄鋼が世界中に輸出され、カーディフは世界最大級の石炭積出港へと急成長を遂げた。

さて、街の中心部に建つカーディフ城は高く長い城壁で囲まれ、一見、要塞の趣きを色濃く感じる城となっている。ところが城内に足を踏み入れると、廃墟となったノルマン時代の天守閣(キープ)がその姿を残すのみで、主な見どころは街を発展させたビュート侯爵家の邸宅となっている。

同邸宅は、第3代ビュート侯爵が当時の人気建築家ウィリアム・バージェスとともにヨーロッパや中近東を旅し、そこで知った中世イングランド、旧約聖書、古い童話、アラブなどの逸話から着想を得て築き上げた「夢の城」。極彩色に彩られ、緻密な彫刻が方々に施された「過剰」とも言えるまでの豪奢な内装は、完成当初から「華麗」と評された一方で、「悪趣味」とも揶揄されてきた。好みによって評価はわかれるかもしれないが、一見の価値はあるだろう。また、城壁の上に飾られた「アニマル・ウォール」と呼ばれる様々な動物の彫刻群もユニークなので、見逃さないでいただきたい(写真右)。

城の裏に広がるビュート・パークにはストーン・サークルもあり、散歩に最適。ぜひ訪れてみては?

カーディフ城 全景
カーディフ城内に入ると、古代ローマ時代の砦の遺構、12世紀にノルマン人が築いた天守閣(右端)、19世紀ヴィクトリア朝時代に建てられたビュート侯爵の邸宅(中央から左端にかけて)など、複数の建物から成り立っていることがわかる。

The Arab Room / アラブ・ルーム

第3代ビュート侯爵のお気に入りだったという「アラブ・ルーム」の眩いばかりの天井。木材に金箔を施したイスラム式の装飾模様が、壁から天井にわたって続いている。壁や床は大理石で覆われ、窓はエジプト様式のデザインとなっている。

The Arab Room / アラブ・ルーム
© Castell Caerdydd / Cardiff Castle

The Banqueting Hall / バンケティング・ホール

邸宅内で最も広い「バンケティング・ホール(晩餐会室)」。ステンドグラスや壁画、暖炉などには、中世におけるカーディフ城の歴史が描かれている。完成までに15年近くを要した。天井に飾られた立体的な天使像は必見。

The Banqueting Hall / バンケティング・ホール
© Castell Caerdydd / Cardiff Castle

The Library / ライブラリー

文学と言語をテーマにした装飾であふれる「ライブラリー(図書室)」。邸宅内では最も古い部屋で、15世紀つくられた大広間の一部を改築している。本棚やテーブルもすべて、建築家ウィリアム・バージェスが設計した。

The Library / ライブラリー
© Castell Caerdydd / Cardiff Castle

The Nursery / ナーサリー

4人の子どもがいた第3代ビュート侯爵夫妻が,子どもたちのために改築した「ナーサリー(子ども部屋)」。「アラビアンナイト」や「グリム童話」など、物語に登場するヒーローやヒロインが壁に描かれており、子どもたちはこの部屋が大好きだったという。

The Nursery / ナーサリー
© Castell Caerdydd / Cardiff Castle

東京駅をつくった辰野金吾も師事した建築家 ウィリアム・バージェス

タワーハウス
▲ハイストリート・ケンジントンに建つ、バージェスの自宅「タワーハウス」。内装は、彼が設計した当時のままとなっている(29 Melbury Road, London W14 8LN)。
© Jim Osley

第3代ビュート侯爵=写真下=からの依頼を受け、カーディフ城の改築を一手に担ったウィリアム・バージェス(William Burges / 1827〜81年)=同右=は、19世紀の英国を代表する建築家。日本美術にも造詣が深く、鹿鳴館を設計した建築家ジョサイア・コンドル(1852〜1920年)や、東京駅の設計を手がけた日本人建築家の辰野金吾(1854〜1919年)もバージェスの事務所で学んでいる。

バージェスは53年の生涯の中で、産業革命による大量生産・工業化と、ネオクラシック様式に疑問を抱き、中世ゴシックへの回帰を追求。中世をテーマにしながらも、ヴィクトリア朝的な独自の解釈で新たなアイディアを取り入れた大聖堂、教会、城などを後世に遺している。

カーディフ城は彼の代表作であり、同じくビュート侯爵とコンビを組んで13世紀の古城を建て直したコッホ城(Castell Coch)も有名(現在改修工事のため閉鎖中)。2人は雇い主と建築家という関係を越えた固い友情で結ばれていたという。

バージェスは、自身が設計したロンドンのホランドパーク近くにある自宅「タワーハウス」で死去。同宅は俳優リチャード・ハリスらの手を経て、現在はロックバンド「レッド・ツェッペリン」のジミー・ペイジが所有している(非公開)。

第3代ビュート侯爵
ウィリアム・バージェス
コッホ城
●カーディフ城前のバス停から30分ほどで行くことができる、山中に建つロマンチックなコッホ城。建築途中でバージェスは亡くなり、完成した城を見ることはできなかった。
コッホ城 内観
コッホ城 内観
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ロンドン東京プロパティ
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早稲田アカデミー
サカイ引越センター
JOBAロンドン校
Koyanagi

Travel Information
※2026年9月8日現在

Cardiff Castle
カーディフ城

Castle Street, Cardiff CF10 3RB
www.cardiffcastle.com

【オープン時間】
月〜金曜 10:00〜18:00
土・日曜 9:00〜18:00
※11月〜2月の冬季は17:00まで
【料金】
£16.50
※+£5でガイドツアー参加可能
【アクセス】
車:ロンドンからM4経由で約3時間
電車:ロンドン・パディントン駅から約2時間
コーチ:ロンドン・ヴィクトリア・コーチ・ステーションから約3時間15分
Cardiff Castle Map
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週刊ジャーニー No.1461( )掲載