●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部
■イングランド中部にある都市ノッティンガム。イングランドのほぼ中心に位置することから、古くから政治や交易の要衝として発展してきた。そんな同所を世界的に知られる存在へと押し上げたのが、「ロビン・フッド伝説」である。今回は、中世のアウトロー(無法者)にして民衆の英雄だった、ロビン・フッドゆかりの街を征く。
中世イングランドの伝説の人物、ロビン・フッド。彼の名前が最初に文学作品に登場したのは1377年で、ノッティンガムの北側に広がるシャーウッドの森で暮らし、悪者を許さず弱きを守る弓の名手として描かれた。と言っても、「孤高」の存在ではなく仲間に慕われ、長きにわたってコミュニティの秩序を維持していた「義賊」と言われている。
実はこの「ロビン・フッド」、中世のノッティンガムでは法律や社会の秩序に従わない「アウトロー(outlaw: 無法者)」に対するニックネームであった。13世紀の記録を見ると、当時少なくとも8人のロビン・フッド(多くが刑事犯だった)が、ノッティンガムにいたという。絵本やアニメなどで描かれる緑色の服を身着け、弓を背負った少年ではなく、「Robin Hood」の名のとおりフードを深くかぶった粗暴な大人の男性こそが、本来のロビン像と言えるだろう。
ロビンが活躍したのは、「獅子心王」と呼ばれる国王リチャード1世が、十字軍遠征でイングランドを離れている間に、代理君主として悪政をしいた弟ジョンの時代。苦しむ民衆を守るために権力に弓を引き、ノッティンガム城で暮らす悪代官をこらしめた。
さてノッティンガムを実際に訪れてみると、「中世の伝説」であることも相まって、ロビン・フッドに関連する観光スポットはそれほど多くない。以前はロビン・フッド博物館もあったが、残念ながら閉館してしまった。
しかし、ノッティンガム周辺は非常に柔らかい砂岩地帯となっており、ノッティンガム城も大きな岩(キャッスル・ロック)の上に建てられている。城の下には砂岩をくり抜いてつくられた秘密通路がいくつも張り巡らされ(ガイドツアーで見学可能)、街中の地下には1000以上もの人工洞窟が連なっている。これらの地下洞窟は1000年近く前に掘られたものもあり、貧困層の住居のほか、地下室や作業場として19世紀半ばまで使用されていたという。考古学チームによる発掘作業は今なお続けられており、新たな洞窟が毎年発見されている。ガイドツアーで洞窟めぐりもできるので、時間があればぜひ参加してみてほしい。
ロビン・フッド伝説にもっと触れたい人は、シャーウッドの森を訪れてみるのがいいだろう。ノッティンガムの郊外、北へ約30キロの地点に広がる森で、かつては4万ヘクタールもの広大な敷地を誇っていたが、炭田採鉱のために伐採が進み、現在は423ヘクタールほどになってしまった。だが、英国内でもっとも多くの古木が生息している森で、樹齢500年以上のオークの木が1000本以上、そして樹齢1200年と推定される巨木「メジャー・オーク」もある。ロビンが幹の空洞を隠れ家にしていたと伝えられているのが、まさにこの木である。
今年6月には、太い枝を補強するための支柱設置といった長年の保全工事や、観光客の往来による土壌の踏み固め、さらに近年の猛暑や干ばつなどの影響が重なって、ついに伝説の古木が枯死したことが発表された。そして先週、太枝の1本が折れて落ちたことも報道されている。自然な腐敗過程の一部ではあるが、その姿が失われていくことは切なくもある。
日帰りでノッティンガムの街とシャーウッドの森の両方を満喫するなら、あらかじめ綿密な行程を組む必要がある。しっかり計画を立てよう。

❶ ノッティンガム城/ Nottingham Castle
キャッスル・ロックの上に建ち、中世では重要な王家の要塞だった。1831年に焼失、再建後に博物館となったが、かつての現存部分はほとんどない。エドワード3世の母イザベル王妃と愛人ロジャー・モーティマーを捕らえた城として有名。ロビン・フッドの宿敵が暮らしていた城。

❷ イ・オールド・トリップ・トゥ・エルサレム/ Ye Olde Trip to Jerusalem
1189年に開業した「イングランド最古のパブ」のひとつ。ノッティンガム城が建っている岩山に沿って建設されており、岩壁むき出しの部屋もある。聖地巡礼者や十字軍が旅の途中に立ち寄ったことに由来。

❸ ロビン・フッドと仲間たちの像/ Robin Hood Statue
ノッティンガム城壁の外側に佇む有名なロビン・フッドの銅像の周囲には、仲間たちの像も設置されている(タック修道士、リトル・ジョン、ウィル・スータリー)。

❹ シティ・オブ・ケイヴズ/ The City of Caves
ノッティンガムの街の地下に広がる洞窟群を探索できるガイドツアー。中世の皮なめし工場跡や住居、第2次世界大戦時の防空壕といった歴史的背景を深く学べる。(10:00〜17:00、大人£11)

ヒュー・ジャックマン主演
ダークなロビン・フッドを描いた新作映画

人々は俺のことを口にする。俺の物語を語る。でも、あれは全部でっち上げだ――。
暴力的な罪と殺人にまみれた過去と向き合うロビン・フッドの最期を描いた、ダークな新作映画「The Death of Robin Hood」が、9月2日から英国で上映予定。これまでロビン・フッド役と言えばケヴィン・コスナーやラッセル・クロウなどが演じてきたが、今回はヒュー・ジャックマンが扮する。
Travel Information ※2026年8月25日現在
www.visit-nottinghamshire.co.uk
- 【アクセス】
- 車の場合:ロンドンから M1経由で約3時間。
電車の場合:ロンドン・セント・パンクラス駅から約1時間50分。
コーチの場合:ナショナル・エクスプレスで約3時間。
ロビン・フッドが住む シャーウッドの森を訪ねて
シャーウッドの森は、エドウィンストーという小さな村にある。ノッティンガムからシャーウッドの森までは、公共交通機関ならバス(Stagecoach Sherwood Arrow)1本で行くことができるが、道のりは往復2時間弱。バスも2時間に1本とかなり不便だ。ビジターセンターからメジャー・オークまでは、徒歩10分ほどでたどり着ける。
「ロビン・フッドのホームタウン」を謳っているものの、村にはとくに楽しめるものはないのでご注意いただきたい。


Travel Information ※2026年8月25日現在

- 【アクセス】
- 車の場合:ノッティンガム中心部から約50分。
バスの場合(2時間に1本の運行):ノッティンガムのヴィクトリア・バス・ステーション(9番乗り場)から約50分。
週刊ジャーニー No.1459( )掲載


















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