ヘンリー8世に会えるかも!?ハンプトン・コート宮殿を征く
© Historic Royal Palaces

●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部

■ ロンドン中心部のウォータールー駅から、電車で35分ほどの場所にあるハンプトン・コート宮殿。同宮殿はロンドンとサリー州の境界に建ち、そばを流れるテムズ河を境にして北側(宮殿側)がグレーター・ロンドン(リッチモンド・アポン・テムズ)、南側がサリー州になる。しかし、最寄りのハンプトン・コート駅はゾーン6内に含まれるため、ロンドンからもコンタクトレス決済で気軽な日帰り観光が可能だ。今回は、冬季でも訪れることができる同地を征ってみたい。

 

ハンプトン・コート宮殿はもともと、反逆者として逮捕されたヘンリー8世の重臣、トマス・ウルジー枢機卿の私邸であった。ヘンリーは1529年にウルジー卿を罷免した後、彼が所有していた5つの屋敷を取り上げたが、そのうちのひとつが同宮殿である。

ただ、現在のハンプトン・コート宮殿は、当時よりも大きく拡張されている。正面のメイン・エントランスから見ることのできる赤いレンガ造りの建物(写真上)がヘンリー8世の存命中に建造されたものであるのに対し、裏側の広大なガーデンから目にするバロック様式の建物(下コラム参照)は、1689年に即位したウィリアム3世とメアリー2世によって増築された部分である。正面と裏でまったく異なる顔をしているのも、同所の特徴だ。

歴史の詰まった場所なので見どころは豊富にあるが、「ドラマ」が多いだけに見逃せないのは「ヘンリー8世のアパートメント(Henry VIII's Apartments)」だろう。6人もの妻を持ったことで有名なヘンリーだが、切望していた男児を出産した3番目の王妃ジェーン・シーモアは、このハンプトン・コート宮殿で丸2日間に及ぶ難産の末、後のエドワード6世を産んでいる。ところが、その喜びもつかの間、12日後に出産した部屋で息を引き取った。

また、姦通罪で処刑された5番目の王妃キャサリン・ハワードも、4年後に大きなドラマを残している。壮麗な礼拝堂(チャペル・ロイヤル)でのミサ中に、新妻の不貞の知らせを受け取ったヘンリーは激怒。キャサリンは慈悲を乞うため、礼拝堂へとつながる廊下を必死に駆け抜けたが、王のもとへたどり着く前に衛兵に拘束されてしまい、泣き叫びながら部屋へ連れ戻された。そのままヘンリーとは顔を合わせることなく、ロンドン塔で斬首されている。

さらに、ヘンリーを看取った6番目の王妃キャサリン・パーとの婚礼が行われたのも、この宮殿だ。

ちなみに、ジェーン・シーモアが出産・死去した部屋に隣接する「シルバースティック階段(Silverstick Stairs)」、キャサリン・ハワードが引きずられていった廊下「ホーンテッド・ギャラリー(Haunted Gallery)」には、彼女たちの幽霊が出ることで知られている。とはいえ、現代ではそうした目撃談もほとんどなくなっているそうだが、巨大な宮殿であるだけに、人の気配が絶えた薄暗い一角や、深い影を落とす場所が今もあちこちに残されている。ふと見たら周囲に誰もいない――と気付いた瞬間、思わず背筋に冷たいものが走ったりすることも…。

さて、こうした歴史の一片は、1日に数回、無料で行われる「なりきり」のガイド・ツアーで実際に目にすることができる。当時の衣装に身を包んだ役者らが、面白おかしく、ときにドラマチックに宮殿で起こった出来事を、歴史上の人物になりきって紹介してくれる。15~30分ほどで終了するものが多く、予約不要で気軽に参加できるので、ぜひおすすめしたい(途中離脱も可能なので安心)。

1839年、ヴィクトリア女王の決定によって一般公開されるようになったハンプトン・コート宮殿。当初は、一部の高貴な身分(!)に限られていたというが、今ではチケットを購入すれば誰でも見学可能だ。11月20日からは、毎年恒例のアイス・スケートリンクも登場する(来年1月3日まで/宮殿の入場料は別)。足を運んでみてはいかがだろうか。

イースターから10月末までガーデン内を走るトラム馬車
イースターから10月末までガーデン内を走るトラム馬車
ヘンリー8世のアパートメントの見どころのひとつ「グレートホール」© Historic Royal Palaces
ヘンリー8世のアパートメントの見どころのひとつ「グレートホール」
© Historic Royal Palaces
ウィリアム3世のアパートメントにある「王の階段(King's Staircase)」
ウィリアム3世のアパートメントにある「王の階段(King's Staircase)」。ウィリアム3世は、ハンプトン・コート宮殿のガーデンで乗馬中に落馬。そのけががもとで、ケンジントン宮殿で亡くなった。

女王からの「褒賞」はハンプトン・コート宮殿前の邸宅⁉
建築家 クリストファー・レン

外観
クリストファー・レン

1689年に共同統治として即位した、ウィリアム3世とメアリー2世夫妻。ハンプトン・コート宮殿を当時としてはモダンなバロック様式に改築しようと、セント・ポール大聖堂の再建を行った建築家クリストファー・レンに依頼し、大規模な改修計画を進めた。しかし、フランスとの戦争によって予算は大幅に削減。加えて、1694年にメアリー2世が突然逝去したことで、ウィリアム3世は改修工事への関心を失い、工事は中断されてしまった。次に王位を継承したメアリー2世の妹アン女王が、ハンプトン・コート宮殿の装飾と完成に尽力している。

ハンプトン・コート宮殿前の屋敷

アン女王は、セント・ポール大聖堂建設の功績と、レンの長年にわたる王室への奉仕に対する「褒賞」として、1708年にハンプトン・コート宮殿前の屋敷を贈呈。ブループラークが飾られた赤レンガ造りの建物は、現在も見ることができる(The Old Court House/写真右)。レンは1718年に引退した後、晩年はこの家で過ごしたものの、大好きなセント・ポール大聖堂を眺めるために、定期的にロンドンへ出かけたという。

セント・ポール大聖堂
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Koyanagi

Travel Information
※2026年11月3日現在

ハンプトン・コートmap

Hampton Court Palace
ハンプトン・コート宮殿

East Molesey, Surrey KT8 9AU
www.hrp.org.uk/hampton-court-palace

【オープン時間】
冬季/水~日曜10:00~16:00
夏季/毎日10:00~17:30
【料金】
£30
【最寄り駅】
ハンプトン・コート駅
JEMCA
Kyo Service
J Moriyama
ジャパンサービス
らいすワインショップ
Atelier Theory
奈美デンタルクリニック
Toptour

週刊ジャーニー No.1469( )掲載