
本展のキュレーターとして全面的に名前を出しているのが英国版『VOGUE』の元編集長であるエドワード・エニンフル(Edward Enninful OBE)だ。70年代生まれの若き日の彼がどっぷりと身を置き、飛躍した90年代のファッション業界の経験に基づいて、英国文化の様相を一変させた決定的な時代を検証している。
絵画や彫刻といったアートも少数展示されているものの写真中心。ファッション畑のキュレーターが手掛けたこともあり、『アート』よりも『ファッション』に重点が置かれた印象がある。ただ、フィルム式のカメラで撮影した写真の一枚一枚に今よりも重みが感じられた当時、90年代の自然体のストリートやファッション写真そのものがアーティスティックに捉えられる。
本展のプロモーション用の広告にも採用されている若き日のケイト・モスや、ナオミ・キャンベルといった90年代のファッション界を象徴した「スーパー・モデル」たちが着用し、印象的にランウェイを闊歩したオートクチュールのドレスたちは、万人受けとはほど遠く、アートそのもの。そう感じつつも、ファッション以外の当時のアートについては少々物足りなさを感じた。
ファッションは時代を映す鏡。90年代の日本で青春を過ごした筆者は、それが英国の風景でありながらも懐かしさを感じたのだが、現代の若者がこの90年代のフッテージを見て、どんな時代を読み取るのだろうか。


90年代のファッションシーンを代表するデザイナー、ジョン・ガリアーノによる着物風ドレスを、スーパー・モデルのリンダ・エヴァンジェリスタが美しく着こなした。

90年代の英国の美術界で旋風を巻き起こしたYBA(Young British Artists)の主要メンバーの1人であるアビゲイル・レーンによる「冗談と抗議」を融合させたお尻のプリント。

YBA(Young British Artists)世代の異彩と称されるインカ・ショニバレの特徴的な作品。フラゴナールが貴族の余暇を描いた絵画「The Swing」の場面を、植民地主義と貿易の複雑な歴史を体現する「ダッチ・ワックス・プリント」で再現した。
The 90s: Art and Fashion

2027年2月14日(日)まで
Tate Britain
Millbank, SW1P 4RG
毎日: 午前10時~午後6時
チケット:一般 £22
www.tate.org.uk
週刊ジャーニー No.1467(2026年10月22日)掲載















