■ 日本国内のイスラム教徒人口は専門家の推計で2019年末の約23万人から、24年末には約42万人に急増。イスラム教では土葬が原則とされ、土葬墓地の需要が高まる一方、反対する地元住民との摩擦が表面化している。

イスラム教徒が土葬を重視するのは、単なる好みや故郷の習慣ではない。死者を尊重するために守るべき宗教上の務めと考えているからだ。主流のイスラム法の解釈では遺体を土に葬ることが原則で、火葬は認められていない。根底には「人間の体は神(アッラー)から授かったものであり、亡くなった後も尊厳がある」という考えがある。遺体を焼く行為は、その尊厳を傷つけるものと受け止められる。日本では火葬が丁重な弔い方でも、信仰によって同じ行為の意味が大きく異なる。
聖典コーランには「人間は土から造られ、土へ戻り、再びそこから出される」という教えがある。預言者ムハンマドの教えや実践も、土葬の根拠になっている。一般に遺体を洗い、白い布で包み、葬儀の祈りをささげた後、顔を聖地メッカの方向へ向けて埋葬する。できるだけ速やかに葬ることも重視される。葬送の細かな習慣には、地域や宗派による違いも見られる。またイスラム教では、死はすべての終わりではない。やがて神が死者を復活させ、生前の行いを裁く「最後の審判」があると信じられている。ただし「焼くと体がなくなり、復活できないから」という説明だけでは不正確だ。神は朽ちた体も再び造れる存在とされ、遺体の保存が復活の条件ではない。つまり重要なのは体をそのまま残すことより、神の教えに従って死者を送り出すことにある。遺族や信徒の共同体にとっても、適切に埋葬することは大切な責任となる。そのため「日本に住むなら火葬にすればよい」と言われても、本人には信仰の核心に関わる問題となる。土葬への強い希望を理解するには、この死生観の違いを知る必要がある。
日本で土葬に対する抵抗感が強く火葬が主流(普及率99%以上)となっている背景には、歴史・衛生・国土事情・宗教観などが複雑に絡み合っている。主な理由は、次の4点に整理できる。
衛生面への懸念と伝染病予防の歴史
明治時代以降、コレラや赤痢などの伝染病対策として、政府が火葬を推奨・義務化していった歴史がある。「土葬は病原菌の繁殖や腐敗臭、地下水汚染を引き起こす」という衛生上のリスクが強く意識されるようになり、衛生第一の観点から火葬が定着した。
墓地用地の不足
日本は山林が多く可住地面積が狭いため、広い敷地を永久に必要とする土葬は物理的に困難だ。火葬であれば、遺骨を焼骨にして小さな骨壺に納められるので、先祖代々同じ墓(継承墓)に入ることが可能になる。限られた土地を効率的に使うという実利的な理由が非常に大きく影響している。
「穢れ」の観念
日本の神道や仏教的価値観には、死や遺体の腐敗を「穢れ(けがれ)」と捉える感覚が伝統的にある。炎で焼くことで、遺体を清めて霊魂を仏(または神)の元へ送り出すという「火による浄化」の心理的イメージが自然に受け入れられたことも、火葬の定着を後押しした。
生理的忌避感
数世代にわたり、「死者=火葬して骨壺に納める」という文化が完全に定着した結果、現代の多くの日本人にとって遺体が土の中で腐敗していくプロセスそのものに対して、強い生理的な忌避感を覚えるようになった。このように歴史的な衛生対策、狭い国土事情、そして数世代かけて育まれた心理的な感覚が重なり合い、日本人にとって土葬への心理的・現実的ハードルが高くなっている。 By週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)








































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