
■ 第286話 ■また逢う日までのさようなら
▶ 2003年、サダム・フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持ち、テロ組織(アルカイダ)と連携しているとして英米などがイラクを攻撃。あっという間にフセイン政権は崩壊した。大量破壊兵器もアルカイダとの繋がりも見つからなかったけどフセイン大統領は処刑された。2010年12月、チュニジアで一人の露店商が警察の横暴に抗議して焼身自殺未遂。反政府デモに発展しチュニジア政権崩壊。騒動は北アフリカや中東に飛び火。エジプト、リビア、シリア、イエメンなど各国で独裁政権打倒と、民主化や自由を求める人々が立ち上がった。「アラブの春」だ。
▶リビアでは1969年のクーデター以来、40年以上にわたってカダフィ大佐が独裁支配していた。2011年2月に始まった暴動はやがて内戦へと発展。カダフィ軍と反政府軍の激しい戦闘が続いた。3月にはNATOがカダフィ軍拠点を空爆し反政府軍を支援。8月には首都トリポリが陥落。10月にはカダフィ大佐が捕まって殺害された。シリアでは2011年4月に始まった反政府デモが内戦へと発展した。アサド政権をイラン、ヒズボラ、ロシアが支援。反体制派をトルコ、湾岸諸国、欧米が支援した。さらに2014年以降はイスラム国(IS)が台頭したことで三つ巴状態となり内戦は泥沼化。2024年12月、反政府軍は首都ダマスカスに侵攻しアサド大統領は脱出した。同月、混乱に乗じてイスラエル軍がシリアに侵攻し、ゴラン高原を占領。さらにシリア軍の武器兵器が過激派に渡るのを阻止するとしてシリア全土の軍事施設に空爆を行った。

▶突然起きた「アラブの春」。その結果「レジーム・チェンジ(体制の転換)」が起きたリビア、シリア、イエメンには共通点がある。イラク同様、いずれも強烈な「反イスラエル国家」だった。エジプトもかつては反イスラエルだったが、1967年に勃発した第3次中東戦争でシナイ半島をイスラエルに奪われた。1979年にアメリカの仲介で和平と国交を樹立。シナイ半島がエジプトに返還された。政府間レベルでは友好関係を築いているもののエジプト国民の多くはイスラエルに対して強い不信感と反感を維持。両国の関係は「冷たい平和」と呼ばれている。イラク戦争や「アラブの春」を経てイスラエル周辺の「反イスラエル国家」はことごとく、復興が難しいほどに荒廃した。きっと偶然。こういった事情を大手メディアがほとんど報じないのもきっと偶然。今や「反イスラエル」で脅威となる近隣の大国はイランのみ。なのでこの6月、イスラエルとイランの対立が鮮明になった時、筆者の緊張は失禁じょじょじょレベルに達した。
▶「グダグダ雑記帳」は2020年1月、「イギリスのメシはなぜこんな残念なことになっちまったのか」を追究する目的で始めた。始まってすぐにパンデミックとなり脱線に脱線を繰り返した。その結果、自分が今、どこを走っているのかすら見失い、気が付けば中東の恐ろしい話に辿り着き失禁じょじょじょだ。知ったかぶりを続けるために随分資料と格闘した。その間も「イギリスのメシ」に関する研究は続けていた。そして遂にイギリスのメシがまずくなった本当に本当の理由に到達した。本来ならそれを当コラムで発表すべきだが、あまりにも面白いので一冊の本にまとめて世に出すことにした。色々あって39年暮らしたイギリスとお別れする。当コラムも今回でおしまい。5年間のご愛読、まことに有難うございました。また逢う日まで。さようなら。
週刊ジャーニー No.1408(2025年8月28日)掲載
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