
■ 第175話 ■ニューヨーク、誕生
▶オランダとイングランド。力を合わせて共通の敵スペインを倒した。俺たち、親友じゃ~ん。協力して宿敵を倒した2人も宝の山を目にした途端、関係は急速冷却。しょせん人間関係なんてそんなもんだ。イングランドでは清教徒革命が勃発し、現役国王チャールズ1世が首を刎ねられ一時的に共和制となった。イングランドがゴタっている間、オランダは中継貿易で大儲け。内乱が落ち着くとイングランドの貿易商たちは「オランダの奴ら、苦しい時、あんなに協力してやったのに、恩を徒で返すとはとんでもない奴らだ。旦那、懲らしめてやりましょうぜ」と議会に提案。具体的にはイングランドに入港する貿易船をイングランド船と貿易品の生産国、または最初の積み出し国の船に限定。こうすれば中継ぎで稼いでいるオランダ船はイングランド相手に商売ができなくなる。こうして1651年、イングランドにだけ都合の良い「航海法」が発布された。
▶航海法に基づいてイングランドはオランダ船に積み荷の臨検捜査を要求。「見せろ」「見せない」から砲撃戦に発展し、3度に及ぶ英蘭戦争が始まった。17世紀後半に勃発した海上貿易の覇権争いだ。1度目の対戦は準備万端だったイングランドの勝利に終わった。この後、イングランドでは王政が復古。チャールズ2世は通商の利益倍増を目指して航海法を強化。イングランドはニューネーデルランド植民地に攻め入り、2度目の対戦が始まった。ニューアムステルダム総督は砦を無血開城。チャールズ2世は「どんなもんじゃい」と鼻高々。マンハッタン島をさほど重要だと思わなかったからか弟ジェームズの称号、ヨーク公爵(Duke of York)に因んでニューヨークに改めさせた。ちなみにヨーク公の称号は通常は君主と皇太子存命の場合、2番目の男子に与えられる称号。なので現在はチャールズ3世の弟のアンドリュー王子がヨーク公だ。

▶イングランドに2度目の戦争を吹っ掛けられたオランダだけど、意外と優位に戦った。オランダの戦費を支えていたのは長崎で稼いだ日本の銀だという。戦争真っ只中の1666年、ロンドンではペストが流行した上に大火でシティの半分が焼け落ちた。最終的にオランダはニューアムステルダム植民地を放棄。その代わりブラジルのちょっと上、スリナムという植民地をオランダ領と認めさせた。3度目の英蘭戦争でもオランダはよく堪えた。そのうちイングランドの方が財政難に陥り、講和して終わった。日本の銀がオランダを支えた。
▶3度に渡った英蘭戦争はイングランドがオランダからニューヨークを譲渡させたため、何となくイングランド勝利の印象がある。しかし実際は、オランダがニューネーデルランド植民地を放棄する代わりに所有権を承認させたスリナム植民地(現スリナム共和国)は赤道直下で土地肥沃。オランダはここで黒人奴隷を使い、コーヒーやカカオ、サトウキビや綿などのプランテーションで大いに潤った。一方、イングランドが手にしたニューヨーク。絶望的な未開地で冬は草木も凍る酷寒の地。砦の向こう側には先住民族のレナぺ族ウジャウジャ。お世辞にも肥沃な土地とは言えなかった。そういう意味で英蘭戦争とは終わった時点では誰が勝者なのか、はっきり分からない戦争だった。それが200年もするとニューヨークがロンドンすら抜いて世界一の大都市になるんだから、歴史って分からない、と雑に〆たところで次号に続く。チャンネルはそのままだ。
週刊ジャーニー No.1297(2023年6月29日)掲載
他のグダグダ雑記帳を読む


























セール情報をいち早くGET!今週のお買得★食料品『TKトレーディング』