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■ 第60話 ■英王室、激震再び

▼英王室に再び激震が走っちゃった。きっかけはハリー王子とメガン妃が出演した米テレビの対談番組だ。番組の中でメガン妃は王室内で人種差別的な発言があったことや、自殺を考えた時期があったことなどを赤裸々に語り、英王室に対して批判的な発言を繰り返した。英王室は「家族全員が悲しんでいる」と声明を発表。ウィリアム王子は「王室は人種差別的な家族ではない」と反論した。エリザベス女王はまもなく95歳。99歳のエジンバラ公は体調を崩して15日現在も入院中だ。ご高齢のお二人にとって、なかなか酷なタイミングで放たれた後頭部直撃弾だった。

▼テニスのセリーナ・ウィリアムズやヒラリー・クリントン元国務長官などがメガン妃に同情的なコメントを寄せている。私は言う。「しゃらくせえ」。ちなみにしゃらくさいとは「洒落臭し」が語源らしい。洒落た真似をするという意味で罵り言葉ではない。ただし、のちに転じて「分不相応で生意気だ」って意味になっちゃった。今回の問題を人種差別やいじめといった視点だけで捕らえると本質が見えて来ない気がする。なぜならドタバタ劇は英王室という極めて特殊で閉鎖的な舞台の上で繰り広げられているんだもの。

▼英王室の祖は1066年にフランスから攻めて来たギョーム2世率いるノルマンディー公国がイングランドを打倒しノルマン朝が開かれた時に始まった。その後、王位継承権等を巡って国内外で何度も戦争が起こり、チューダー期に絶対王政となってからも王位を巡って大量の血が流れた。17世紀半ばに革命が起こり共和制になったこともあったけど、あっという間に王政復古。スチュアート朝が途絶えるとドイツから親戚筋のジョージ1世を迎えてハノーバー朝が始まった。しかし彼はイギリスの政治に関心を寄せず、議会に丸投げ。その後、王室は国の象徴となって統治から外れ、英国は責任内閣制の道を歩み、今のエリザベス女王へと続いていく。姿カタチをビミョーに変えながら、良くも悪くも1000年近く脈々と続いてきた、それがイギリスの王室。

ハリー王子とメガン妃
言いたい放題のハリー王子とメガン妃でしたが、何か?©ITV

▼英王室も大陸との政略結婚を通して国を守ろうと試みた。しかしあくまでも白人国家同士のことであり、その多くがゲルマン系国家間でのことだ。ところがメガン妃の母親はアフリカ系。ゲルマン系民族が1000年繋いできた英王室にアフリカ系の血が入る。英国にとっての一大事だった。ハリー王子とメガン妃の結婚が決まった時、英王室が遂に多様性を受け入れたと歓迎する声もあったが、当然、眉をひそめる保守層も多かった。批判を覚悟で言えば日本の皇室に他国の血が入るとなると、肌の色に関係なく抵抗を感じる国民も多いはずだ。一般人の間で国際結婚は全く珍しくなくなったが、国家の象徴と言われる王室や皇室は別次元の話だ。そういう特殊で難解な環境に嫁ぐことが一体何を意味するのか。得るものも多いだろうが同時に失うものも多いという自覚がメガン妃にあったのかどうか、はなはだ疑問だ。

▼現在は王制を放棄した国の方が多数派だ。ましてアメリカには歴史上、王室が存在したことがない。従ってアメリカ人が王室や皇室の成り立ちや歴史、そしてそこに横たわる複雑な国民感情を理解するのは難しいだろう。なので人種差別だけをヒョイと摘まみ上げ、それだけを武器に英王室批判に参加してくるのはあまりに短絡的で的外れに思える。王室も皇室ももっと奥が深くより複雑だ。再度「しゃらくせえ」と申し上げたところで次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1180(2021年3月18日)掲載

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