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■ 第61話 ■未亡人とやもめと後家

▼今週も脱線する。東京五輪・パラリンピック組織委員会、森喜朗元会長の「女性の多い会議は時間が長い」という発言が糾弾され、森氏は辞任に追い込まれた。あ~あ、森さんまたやっちまったかと思ったら今度は五輪開閉式を統括するクリエーティブダイレクター、佐々木宏氏(66)が辞任した。グループチャット上でタレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような書き込みがあったと文春に報じられたためという。ロゴの盗作から始まり、国立競技場のデザイン変更、マラソン札幌開催、しまいには新型コロナで一年延期と始まる前から過酷な障害物レース状態の東京五輪。そこに追い打ちを掛ける女性蔑視発言の連続自爆ともう散々。言う方も言う方だが、仲間内の私的なチャットを公にさらして糾弾する文春に正義はあるの? 文春が売り上げを伸ばす度に日本人の心が荒んで行く気がする。

▼昨今、公の場で差別的な言葉を発するのは命取りになる。本紙編集部は女性が多い。なので女性蔑視的な発言や下ネタには女性編集者のセンサーが働きやすい。それでなくても地雷を踏まないようにと最近は神経質になりがちだ。ところがよくよく日本語を見てみると女性蔑視だと攻撃されても仕方のない漢字が散りばめられていて怖い。おそらく数年後には凄まじい言葉狩りが始まることだろう。

▼ネガティブな印象のある言葉には部首に女がつく漢字が多い。例えば嫉妬。ねたみとそねみのダブルパンチだけど嫉妬は男もする。当然私もする。その他、奴、奸、妖、妙、娼、嫌、嬲、婢、妾、etc…。言い回しで言えば、女々しいとか女の腐ったようなという失礼なものもある。男はもともと女々しいんだっちゅーの。それに女が腐ったらそりゃもはや事件だ。すぐに警察呼ぼう。余計なお節介ですがという代わりに「老婆心ながら」と謙虚に言いまわすことがある。老婆に失礼だ。余計なお世話な老爺(ろうや)もいっぱいいるぞ。

辞めましたけど、まだ何か?

▼最近、妻に先立たれた男のことを表す単語を調べる機会があった。女性なら未亡人で済むのだが、未亡人に相当する男性専用の単語が見当たらない。「やもめ」という言葉があるが、これはパートナーに先立たれた人や独身者を指す言葉で男女を問わない。なので「男やもめにウジがわき、女やもめに花が咲く」という表現がある。後家という言葉がある。本来、ペアだったものの片方がなくなり、取り残されたもう一方のことを指す言葉でそこからパートナーに先立たれた人を指すようになった。本来は男女に使える言葉だったが、いつの間にか女性専用になっちゃった。そして最も驚いたのが未亡人だ。意訳すると「未だ亡くなっていない人」。転じて「未だ生きている人」。元は中国から来た言葉で、かつてかの国には「夫が死んだら妻は夫の後を追う」のが美徳とされる時代があったんだとか。従って未亡人とは「主人が亡くなったのに未だに生きながらえております」と謙遜しながら言う自称で「あそこのスナックの美人ママ、未亡人らしいぜ」と他人を指して使うのは厳密には誤りらしい。

▼未亡人にそんな切ない意味が含まれる以上、人前で堂々と使えるのはあと少しかもしれない。今ならまだギリギリ怒られないから言っておこう、未亡人、未亡人、ああ未亡人。差別はもちろんアカンけど、行き過ぎた言葉狩りの先にあるのは一体どんな美しくも生きづらい世界なのだろう。清流って棲んでいる魚、少ないのよね。結局、男性版「未亡人」に相当する単語が見つからないまま次号に続く。とりあえずチャンネルはそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1181(2021年3月25日)掲載

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