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■ 第33話 ■ 太陽が沈まない国の日没

▼かつてスペインは「太陽の沈まない国」と呼ばれた。世界各地に植民地を持っていたため、必ずどこかの地域が太陽に照らされていたからだ。そんなスペインにも夕暮れが迫る。中南米で搾取した銀や物資を満載した輸送船をイングランドの海賊が襲った。特に有名なのは奴隷商人上がりのフランシス・ドレークだ。スペイン人はドレークを悪魔の化身「ドラケ(ドラゴン)」と呼んで恐れた。スペインのフェリペ2世はエリザベス女王(1世)に「海賊を何とかせんかい」と圧力をかけた。エリザベスは「まあ、悪い子たちですねぇ。よーく叱っておきますわ。おほほー、おほほー」と言いながら裏ではドレークがスペイン船からかっさらってきた財宝の半分を手にしていた上、ドレークにナイト(騎士)の称号まで与えていた。おまけに当時、スペイン領だったネーデルランド(現在のベネルクス3国)で過酷な重税に対する反乱が起こると、こっそり裏で反乱軍を支援していた。食えない女だ。

▼エリザベスの父、ヘンリー8世は離婚したさにカトリックを棄て、勝手にイングランド国教会を作り、そのトップとなった。エリザベスもこれを継承した。カトリックの守護者を自認するスペインは「も~う堪忍袋の緒が切れたからね」とお仕置きのため1588年、無敵艦隊を派遣した。ところがイングランドはこれを返り討ちにしちゃった。この時、No 2として作戦の指揮を執ったのが先述の奴隷商人にして海賊、フランシス・ドレークだ。

▼スペインが没落したのは無敵艦隊が壊滅したためではない。16世紀から始まった宗教改革の嵐はやがて北部ヨーロッパ各地で武力衝突へと発展。スペインはその度に鎮圧軍を送った。植民地から搾取した財宝を湯水のように戦争に注ぎ込んだため国庫は疲弊した。さらにスペインは植民地から次々と運ばれて来る財宝で贅沢三昧。未来に投資したり産業を興すといった作業を怠った。こういったことが重なりスペインは没落の道を辿っていく。

イングランドがどうやって無敵艦隊を撃滅したか。本紙の過去記事「無敵艦隊壊滅への道」をお読みください。

▼そんな中、日の出の勢いで台頭して来る国があった。イングランド、と言いたいところだがオランダだ。オランダもイングランドも東インド会社という組織を立ち上げた。イングランドの東インド会社は初め、船出の度に出資者を集めて船を出し、財宝を積んで帰国すると山分けして解散という当座会社的な存在だったため資金難が常態化した。一方のオランダ東インド会社は株式の発行に切り替え、それぞれの船ではなく会社への出資を募った。その差は歴然としていた。

▼オランダはまず、スペインの勢力が根強い中南米を避けて北米へと向かった。さらに東南アジアではフィリピンを避けてマレーに拠点を置いた。ポルトガルから香料諸島(現インドネシア)を奪い、大量のスパイスをヨーロッパに運んだ。そのオランダの後をチョロチョロついて来てはおこぼれを頂戴する連中がいた。イングランドだ。オランダ人はイングリッシュを「馬バエ」と呼んで忌み嫌った。馬バエとは馬の胃壁に寄生するハエのことだ。後に七つの海を制するイングランドだが、この時はまだ寄生虫扱いだった。

▼オランダ、そしてイングランドはスペインやポルトガルと違ってキリスト教の布教という足かせがなかったため、急速に勢力を拡大した。共に協力して無敵艦隊を葬り去ったかつての戦友同士だが、苦楽は共にできても富貴は分かち合えない。やがて各地で激突することとなる。そんなこんなで次号に続くぜ。チャンネルはできればそのままね。

週刊ジャーニー No.1153(2020年9月3日)掲載

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