ジャーニー編集部がロンドンの街をぶらりとレポート
葉加瀬太郎さんのカドガンホール・コンサートに行ってきた
日本と英国を拠点に演奏活動を続ける、ロンドン在住のバイオリニスト、葉加瀬太郎さん(49)。2月11日(土)、約2年ぶりとなるロンドン公演に行ってきました。会場はスローン・スクエア駅から徒歩3分ほどの場所にある、カドガンホール(Cadogan Hall)。建物は青、紫、緑色でライトアップされており、少々怪しい雰囲気(?)が漂っています。なぜこの色を選んだのでしょうか…。
「バービカン・センター」がロンドン交響楽団の本拠地であるのに対し、「カドガンホール」はロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団の本拠地。葉加瀬さんはもちろん、ほかにも多くの日本人ミュージシャンたちが頻繁にコンサートを開いています。 カドガンホールは外観からもわかるように、元は教会でした。1907年に建造されたものの、利用者数の減少により1996年に閉鎖。「ハロッズ」のオーナーであるモハメド・アルファイド氏が購入し、自宅として改装しようとしたそうですが、「リステッド・ビルディング」(グレードII)に登録されていたため、改装許可が下りずに断念。同地を治めるカドガン伯爵(大英博物館の創設に貢献した収集家で医者のハンス・スローン氏の娘婿の一族)が新たに購入し、2001年からはコンサートホールとして使われるようになっています。
上の写真は、会場で配布されたプログラム。 前半はピアノとチェロも一緒のトリオ演奏、15分ほどの休憩を挟み、後半は第1&第2バイオリン、ヴィオラ、コントラバスも加わりました。演奏されたのは、ほぼ葉加瀬さんがつくったオリジナル楽曲。とくに後半では、テレビ番組「情熱大陸」のオープニング&エンディング曲、小説「冷静と情熱とあいだ」のサントラ曲(映画版ではありません)など、日本人なら聞き覚えのある曲が目白押しでした。アンコールの最後に演奏された「ひまわり」では、感動のあまり涙ぐむ人も…。これは2010年9月~2011年4月まで放送された、NHK連続テレビ小説「てっぱん」のテーマ曲。放送期間中に発生した東日本大震災への思いや、「ひまわり」とは太陽に向かって咲く「Sun Flower」であること、そして娘さんの名前でもあることを、演奏前に英語で語られていました。
葉加瀬さんが紡ぎだすバイオリンの音色は、繊細で柔らか。でも旋律はしっかりとしているので、聴いているうちにどんどん惹き込まれ、思わず身体も前のめりになってしまいました。そして何より、ご本人がとっても楽しそう! バイオリンや音楽が好きで好きでたまらないことが伝わってきます。1曲終わるごとに見せるニコニコの笑顔、ハンドタオルで流れる汗を一生懸命拭く姿、演奏中にフワフワと揺れる独特なヘアースタイル(!)も、なんだかチャーミング。鳥の鳴き声や救急車のサイレンをバイオリンでコミカルに表現したりと、笑いが起きるクラシック・コンサートは初めてでした。
葉加瀬さんのコンサート・チケットは日本ではなかなか手に入りませんが、ロンドンにいるからこそ体験できる(しかも間近で!)貴重な機会でした。(編集部 中小原和美)
