Yutaka Online Shop Spring Sale 2024
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© Diliff

●征くシリーズ●取材・執筆/名取由恵・本誌編集部

世界的に知られるストーンヘンジ以外にも
英国には誰がいつ、何のために、どのようにして造ったのか
解き明かされていないストーン・サークルがいくつもある。
そのうちのひとつで、世界遺産の指定も受けている
エイヴベリーを今号ではご紹介したい。

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英国はミステリアスなものに満ちている。

例えば、スコットランドのネス湖、畑に突然現れるミステリー・サークル、アーサー王伝説にまつわる聖地、魔法使いや妖精が登場する言い伝えや物語――。実存することが証明されていないケースも少なくない一方で、確かに存在し、なおかついまだに多くの謎に包まれているものもある。その筆頭に挙げられるのが、石を環状に配置した古代の遺跡、ストーン・サークル(環状列石)だろう。

英国各地で見られるストーン・サークルのなかで最も有名なのは、何といってもストーンヘンジ。しかし、大きさではこれを遥かにしのぐのが、英南西部ウィルトシャーの村エイヴベリーにある遺跡だ。新石器時代のモニュメントとしては西ヨーロッパ最大規模を誇り、歴史的建築物を保護する英組織「イングリッシュ・ヘリテージ」と自然保護機関「ナショナル・トラスト」の管理のもと、世界遺産にも認定されている。

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新石器時代に建造されたエイヴベリー・ヘンジのイメージ図。ストーン・サークルが三重に広がっていたという。

エイヴベリーは、ロンドンから西に約140キロ、ストーンヘンジからは北に約27キロに位置する。中心となるのはエイヴベリー・ヘンジ(Avebury Henge)と呼ばれるストーン・サークルで、エイヴベリーの村と重なるように存在する。というより、村全体がストーン・サークルの中にあるという感覚か。かなりの広範囲にわたって巨石柱が点在する。

エイヴベリー・ヘンジの建設が始まったのは、今から4600年ほど前、紀元前2600年頃の新石器時代。しかし、鉄器時代に入るとストーン・サークルは使われなくなり、ローマ時代以降は周辺に村が築かれ、中世には村がヘンジの内側にまで広がった。さらに、中世において巨石は多神教や悪魔信仰と関連づけられ、宗教的かつ実用的な理由(通行の妨げになる、砕いて他の建造物に再利用するなど)で、多くの石が破壊されてしまった。

かつてストーンヘンジも触れることが許されていたが、現在では遠巻きに見学するしかない。それに対して、エイヴベリー・ヘンジは今も実際に触れて、太古の世界に思いを馳せることができるのが嬉しい。
エイヴベリー・ヘンジの巨石のひとつ。隣でポーズをとっている女性と比較すると、その大きさがわかる。

そうした逆境を経て、エイヴベリーのストーン・サークルが再び注目されるようになったのは、1930年代のこと。中心人物は、マーマレード製造・販売で財を築きあげたアマチュア考古学者のアレグザンダー・ケイラーだ。ケイラーは趣味が高じて、エイヴベリーの遺跡の考古学調査を開始。周辺の土地を買い上げ、大がかりな発掘作業を行った。外側のストーン・サークルをほぼ復元、発掘物を収蔵するミュージアムも開設した。そして1943年、これらをナショナル・トラストに売却している。ちなみに、エイヴベリー・ヘンジの使用目的については、はっきりと特定されていないが、ストーンヘンジ同様、儀式や祭典などに使われていたと考えられている。

かつては、溝と土手で作られた大きなヘンジ(環状の土塁や周溝)に沿って内側にストーン・サークルが並び、さらにヘンジの真ん中に異なる2つのストーン・サークルがあり、合計3つのストーン・サークルから構成されていたという。外側のストーン・サークルの直径は331・6メートル(ちなみに、ストーンヘンジの直径は約100メートル)におよび、サルセン(大砂岩)の立石の高さは3・6メートルから4・2メートル、外側のサークルには立石がおよそ100個もあったと言われる。

エイヴベリーの村がヘンジのなかに入り込んで発展したおかげで、何と、ヘンジの真ん中を幹線道路が走り抜けている。世界遺産に登録された立石が雑然と放置されていたり、そこを道路が突っ切っていたりしていることに驚くが、このありえないほどの自然な様子がいかにも英国的。ゆっくりと土手を一周すると、かなりの距離を歩くことになるので、エクササイズがてら良い気分転換になるだろう。また、ストーンヘンジのように見学を遮る柵がないので、実際に石に触れることも可能。石の上にのぼる子供たちや、石の側でピクニックをする家族連れの姿も見られ、思い思いに石と「遊ぶ」ことができる。

数千年にわたり、エイヴベリーの草原のなかに立ち、ときには土のなかに埋もれながらも、人間の営みと歴史を見守り続けてきた石たち。彼らから、あなたはどんなメッセージを受け取るだろうか。

© Blake Patterson

Travel Information ※2020年7月21日現在

Avebury

アクセス
Near Marlborough, Wiltshire SN8 1RF
www.nationaltrust.org.uk/avebury
www.english-heritage.org.uk/visit/places/avebury

入場無料
夜明けから日暮れまで入場可
※エイヴベリー・マナー&ガーデン、アレグザンダー・ケイラー博物館は閉鎖中

車:
ロンドンからM4経由で西へ85マイル(約136キロ)、所要約2時間。駐車場のポストコードはSN8 1RD。

電車:
ロンドン・ウォータールー駅からスウィンドン駅まで、約1時間40分。同駅からエイヴベリーまで11マイル(約18キロ)。公共交通機関のバスあり。

週刊ジャーニー No.1147(2020年7月23日)掲載