
■ 第172話 ■どうせ乗るなら勝ち馬に
▶1492年、コロンブスはインドへの西廻りルートを探す航海に出発した。出資を渋るイザベル女王を説得したのはスペイン宮廷入りしていた3人の有力なコンベルソ、つまりキリスト教に改宗したユダヤ人たちだった。一人はバレンシアの豪商サンタゲルと言う男で王室の地租管理者。もう一人はサンチェズと言う大蔵大臣。残る一人は女王の侍従職にあり、いずれも王室を支える重要なポジションにいた。サンタゲルは自らも莫大な出資をして女王の決断を迫った。女王は折れた。
▶コロンブスは3隻の船を率いてスペインを出発した。総乗組員数は90~120人だったと言われる。この中に5人のユダヤ人がいた。コロンブスの目的はインドへの西廻りルート開拓だったが、ユダヤ人には別の任務があったと思われる。祖国が消滅し、各国を彷徨い続けた彼らはおよそ1500年の長きに渡り、各地で差別、虐待、追放の憂き目にあってきた。彼らが探していたのは新イスラエル候補地だった。コロンブスは最後までアメリカをインドと思い違いしていたが、インドに多数の同胞を持つユダヤ人たちは、早くからこの地がインドではない可能性に気づいていたはずだ。乗船していた5人のユダヤ人の一人、ルイス・デ・トレスという男はキューバでタバコの葉と出会った。そのままキューバに残り、ユダヤ人によるタバコ産業支配の祖となっていく。
▶スペインがアステカやインカ帝国侵略に熱中している頃、ポルトガル人もブラジルに到達し植民を始めた。ポルトガル人の中にも多くのコンベルソ、つまり改宗ユダヤ人が含まれていた。ポルトガル系であれスペイン系であれユダヤ人の目的は同じ。即ち新イスラエルの候補地を見つけることにあった。彼らはブラジルにその可能性を見出した。パウ・ブラジルという赤い染料の素材となる木と出会い、その輸出で大儲けした。硬い材木は弦楽器の弓材として今も珍重される。ちなみにブラジルの国名はこの木に由来する。

▶信じられない話だけど今から500年前、世界はポルトガルとスペインの2国が分け合っていた。サッカー・ワールドカップの話ではない。フランスと神聖ローマ帝国(ドイツ)、イングランドなどがイタリアを巡って睨み合っている頃、ポルトガルとスペインはイベリア半島からイスラム教徒を追い出してレコンキスタ(国土回復)を完了させた。「他国は戦争でお忙しそうだから、今のうちに安い香辛料を求めて外海に出ましょ。おほほ~」ってなこって大航海時代が幕を開けた。最初に飛び出したという理由だけで2国は新たに見つけた土地を山分けする権利を得た。ローマ教皇もそれを「上納金いっぱい納めるならそれでいいよ~」と認めた。もちろんそんなこと、日本の天皇も戦国武将たちも知る由はないけど、ヨーロッパではそうなっちまった。大迷惑。
▶しばらくは平穏な日々が続いたブラジルのユダヤ人たちだったが、16世紀終わりのある日、ヤバい連中が海上に姿を現した。オランダ船だ。オランダはスペインからの独立戦争を勝ち抜いた勢いで新大陸にやって来た。世界中にネットワークを持つユダヤ人たちは知っていた。ポルトガルやスペインがかつての勢いを失い、代わってオランダが台頭しつつあることを。彼らはポルトガルやスペインを見切った。そして当時最もイケイケだったオランダに乗り換えることとなる。ってなこって次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。
週刊ジャーニー No.1294(2023年6月8日)掲載
他のグダグダ雑記帳を読む


























セール情報をいち早くGET!今週のお買得★食料品『TKトレーディング』