
■ 第164話 ■触れちゃいけない世界
▶3月7日、BBC2が「捕食者:J-ポップ、秘密のスキャンダル」を放映した。2019年に死去したジャニー喜多川氏の裏の顔に迫るドキュメンタリー番組だ。その後日本でもBBCワールドで放送された。喜多川氏の性的虐待に関する黒い噂は以前からあった。過去に1度だけ文春が報じたが他のメディアは黙殺した。弊紙はS新聞グループと契約し、芸能・スポーツを含む日本関連記事の配信を受けている。1997年、契約を結ぶために大手町のS新聞本社を訪問し担当の方とお会いした。その際「相撲の取り組みとジャニーズの写真は使用不可です」と告げられた。相撲に関しては当時、相撲協会の規制が厳しく取り組みの写真は誌面で使えなかった。その後、角界で八百長疑惑や暴力事件が頻発し相撲人気に翳りが出た。協会内で色々と改善が進んだ。ある日突然規制が緩和され、取り組みの写真使用が許可された。裏で何があったのかは分からない。
▶一方、ジャニーズ関連の写真は今もって使用不可だ。担当者の方も「売れなくなったアイドルやこれからというアイドルの売り込みは激しいのに、一旦売れると手の平返したように写真掲載が規制される」と悔しそうに語った。理由を尋ねると「暗黙のルールが存在する」とのことだった。ジャニーズ事務所所属アイドルの話題を掲載する時でも、彼らの顔写真を使うことはできない。代わりにジャニーズ事務所が入居しているビルの写真を載せるという実に間の抜けたことになるのはそういう事情による。ジャニー喜多川氏が亡くなったことで「暗黙のルール」に何らかの変化が起こるかと期待していたが、死去から3年経った今も何も変わる気配はない。

▶ジャニー氏の性的虐待疑惑に迫るドキュメンタリー番組が日本でも放映されたことで、今度こそ疑惑の解明が進むのではないかと期待していたが、どうやら騒いでいるのはネットの世界のみ。米映画プロデューサー、ハーヴィー・ワインスティーン被告によるセクハラ事件以降、世界で巻き起こった「#MeToo」運動や英王室のアンドリュー王子の性的暴行訴訟などは日本でも密な報道がされている。しかし足下のジャニー喜多川氏による性的虐待疑惑、事実であれば大変な事件に発展するはずの疑惑を報じる大手メディアはほぼ皆無。しかし新聞社、テレビ局、そして芸能事務所における日本特有のいびつな相関性を考えればミステリー感は一気に色褪せる。世話になったジャニー喜多川氏や事務所相手に声を上げる被害者がいないと言えばそれまでだが、もはや無視できない段階にまで来ているように思う。事実無根と言うなら明快に否定してくれれば済む話なのにそれもなし。芸能界、下手に首突っ込めば皆、ガーシーみたいな末路辿るの?
▶世の中には不思議な世界が存在する。ジャニー喜多川氏の疑惑など、この世界にはびこる「触れちゃいけない世界」で言えば恐らく豆粒レベル。筆者はこの3年間、ユダヤ人の歴史を見詰めてきた。歴史を掘り進むと頻繁に現れるユダヤ人の存在が気になったからだ。少しだけ見えて来たと思った矢先、ヘンリー・フォード著の「国際ユダヤ人」と出会い衝撃を受けた。筆者が見ようとしている世界にフォード氏は100年も前に辿り着くどころか闘いを挑んだ末に敗れ去り、その後、頑強な「触れちゃいけない世界」が誕生していた。フォード氏は自著で一体何を語ったのか。次号、踏むの恐いけど地雷原を歩いてみる。チャンネルはそのままだ。
週刊ジャーニー No.1286(2023年4月13日)掲載
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