gudaguda_title.jpg

■ 第162話 ■ルター、もう一つの顔がエグい

▶ルターは善行ではなく信仰が一番とする「信仰義認」、聖書こそが全てという「聖書のみ」、そしてキリスト教徒に上下なしを基本とする「万人司祭」というプロテスタントの3大原理を説いた。教科書がルターをどう教えていたか記憶が定かじゃないけど、なんとなく免罪符(贖宥状)を売りまくったカトリック教会に異を唱え「95ヵ条の論題」を書いて教皇から破門され、ブチ切れて宗教改革の口火を切った人、程度に教わった気がする。それはそれで間違いじゃない。ただ、それだと何となく腐敗した中世の教会と闘った立派な人に聞こえちゃう。実はルターが敵視し、攻撃に情熱を燃やしたのはカトリックだけじゃなかった。

TK Trading
Centre People
ロンドン東京プロパティ
Dr Ito Clinic
早稲田アカデミー
サカイ引越センター
JOBAロンドン校
Koyanagi

▶標的とされたのはドイツ国内にいたユダヤ人だ。若い頃のルターはユダヤ人とはイエス・キリストと同じ血統であると主張して、ユダヤ人に厳しいローマ教皇庁に対し、むしろ彼らを擁護する側にいた。そのうちルターは「メシア(救世主)であるイエスはユダヤ人と同族血統なのだから敬意を表してイエスを神の子と認め、この際ユーたちもキリスト教徒になっちゃいなよ」とユダヤ人にキリスト教への改宗を勧めた。しかしユダヤ人にとってイエス・キリストとは元々はユダヤ教信者の一人であってメシアとは認めていない。当然改宗する者はほとんどなく、たまにいたとしてもすぐに再びユダヤ教徒に戻っちゃった。

大変感銘を受けた者ですが、何か?

▶これに腹を立てたルター。「あの連中は表面では改宗するふりをしながら我々の宗教をちょっとからかってやろうくらいにしか思っておらん」と言い、その後も色々と事態が思うように進まないと「あいつらが陰で何かやらかしているに違いない」と疑うようになり、ユダヤ人を激しく憎悪するようになった。「私にはユダヤ人を改宗させることができない。イエス様ですらそれは出来なかったのだ。ならばせめて彼らが今後、地面を這いまわる事しかできないようにそのくちばしを閉じさせることくらいは出来るだろう」と書き残した。そしてルターは死の3年前となる1543年「ユダヤ人と彼らの嘘について」を書き上げた。

▶そこには筆者がちょいとだけ知るルターとは全く別の、驚くほど過激な反ユダヤ主義者のルターがいる。サックリ覗いてみる。①シナゴーグや学校を破壊すべし。②ユダヤ人の家を打ち壊し、ジプシーのようにバラックか馬小屋へ集団移住させよ。③ユダヤ教の書物を没収すべし。④ラビ(指導者)による伝道を禁止せよ。⑤高利貸し業を禁止し、金銀を没収すべし。⑥若いユダヤ人男女に斧やつるはし、押し車を与え、額に汗して労働させるべし、などなどユダヤ人大迫害を唱えるエグい大檄文。ルターは「ドイツはユダヤ人を保護してやっているのに彼らは労働で汗を流さず、金貸しや両替などでドイツ中の富を搾取している。実にけしからん」として彼らの財産はドイツに返還されるべきとの考えに至っていた。さらには「ユダヤ人は選民などではなく悪魔の民」と書いた。そしてルターは最後の説教で「この毒虫を永久に強制労働させるかドイツから追放せよ」と訴え、その4日後に死んだ。結構気を使ってマイルドに書いたけど、全文だともっと過激。ユダヤ人を激しく攻撃するルターの書籍は彼の死後、ほとんど無視された。そう、20世紀になりあのチョビ髭オヤジが400年近く前に書かれたこの古書を手に取るまでは。あぁ、全部繋がっている。てなこって次号に続く。チャンネルはそのままね。

週刊ジャーニー No.1284(2023年3月30日)掲載

他のグダグダ雑記帳を読む
ロンドンおすすめレストラン
面白すぎる英国ジョーク
なるほど英国Q&A
ロンドン近郊トラベルガイド
ロンドン最新トレンド
面白すぎる英国史
面白すぎる英国の偉人
ロンドンでアフタヌーンティー