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■ 第161話 ■みんなアダムの子孫なのに~

▶素人が宗教のことに触れるのはとても怖いの。いつどこで何の地雷踏むか分からないから。ジャニーズ事務所も怖いけどね。元々「なんでイギリスのメシはかくも残念か」を探る目的で始まった当欄。コロナ以降に脱線してから迷走を続け、もはや書いている本人も今どこ走っているのか分からない。一方で迷走しているうちに世界は宗教抜きに語ることが出来ないことに気が付いた。何なら元のテーマである「イギリスのメシ、まずい説」すら宗教が深~く関わっている。だから本題に戻るためにも今日も宗教を語っちゃう。怖いよ~。

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▶中世の宗教改革と言えばドイツのマルティン・ルター。しかしカトリックに異議を唱え始めたのは彼が最初ではない。教会に不満を持っている人はいっぱいいたけど、その中でも宗教改革の先駆者と言われるのはジョン・ウィクリフ。14世紀のイングランドに生きた神学者だ。ウィクリフはキリスト教信仰の源は聖書のみだと言い「教会が貧しい農民から金と食い物を巻き上げて莫大な富を蓄え、聖職者が特権階級となり、いい服着て美味いモン食って飲んで肥えてるの、おかしくね?」と主張した。イエスが生前に語った言葉を紡いだものが新約聖書。イエスも十二使徒もユダヤ人。なので最初の聖書はヘブライ語で書かれた。それが後にギリシャ語に訳され、さらにラテン語に訳された。ヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語、庶民は読めないっちゅ~の。だから読める聖職者は偉くなる。貴族よりも偉くなる。聖書を読めない下層民は聖職者の説教聞くしかない。ウィクリフは「信仰の源が聖書である以上、信者がそれを読めないっておかしくね?」と言って聖書を英訳した。でも、農民が聖書読めるようになったら困るのよ。だって教会の言うことに従えだの、寄進しろだの、聖書に全然書かれてないことがバレちゃう。

最初に頑張ったウィクリフですが、何か?

▶なのでウィクリフはローマ教皇庁からもイングランドの聖職者からも睨まれた。彼の考えはチェコの宗教思想家ヤン・フスに引き継がれた。しかしフスはカトリック教会に異端とされ、火あぶりの刑で殺された。この時、カトリック教会はとっくの昔に脳卒中で死んでいたウィクリフの遺体も墓から引きずり出して火あぶりにした上、川に棄てた。1381年、イングランドで農奴制の強化や人頭税にブチ切れた農民が一斉に武装蜂起した。ワットタイラーの乱だ。ウィクリフの教えを広めようとした司祭ジョン・ボールはブラックヒースの草原で「アダムが耕し、イヴが紡いだ時、誰が領主であったか」という有名なスピーチを披露して反乱軍を鼓舞した。「人間はみな神が作ったアダムの子孫であり、全て平等なはず。なのに一体いつの間にこんな身分や貧富の差が激しい格差社会になっちまったんだ? 教会、おかしくね?」ってことだ。とても正しい。とても正しいけどそれはカトリックの縦社会を真っ向から否定しちゃうことになる。反乱軍は罠にはめられて鎮圧され、ジョン・ボールも捕らえられた末、火あぶりで処刑された。

▶ウィクリフもフスもボールも言っていることはみんな正しい。今の時代なら。しかし中世のカトリック教会にとっては長年かけて築き上げたおいしい巨大ピラミッド型縦社会を崩壊させかねないヒジョーに危険な思想。だからみんな異端とされて消された。しかし遂に教会の圧力に屈しないヤベエ人物が現れた。それがマルティン・ルターだった。ってなこって次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1283(2023年3月23日)掲載

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