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■ 第151話 ■「半地下ロンドン」の衝撃

▶コレラ感染爆発余話も今回でおしまい。執筆にあたって参照したスティーヴン・ジョンソン著「ザ・ゴーストマップ」。その中でブロードストリート40番地前にあった井戸に関する表記がとても気になっていた。「井戸はロンドンの土地を人工的に嵩上げするために積まれたおよそ10フィート(約3メートル)のゴミや瓦礫の層、そしてその下にある砂利の層を貫通し、地表から25フィート(約7.6メートル)下にある地下水脈に達していた」とある。このさりげない解説に筆者は驚き、失禁した。19世紀初め以降、ロンドンでは下水等のインフラを整備するにあたり地面を掘って埋設するのではなく、ロンドン中で放置されていたゴミや瓦礫の山を3メートルほど積み上げ、その盛り土の中にインフラ設備を押し込んだというのだ。

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▶なぜそんなことをしたのか。一つには重機やダンプがない時代、開発等で出た膨大なゴミや瓦礫を郊外に運んで処分するのが費用的に大変だったから。さらにロンドンでは地下水面(地下水の圧力と気圧が釣り合う水平面)が浅いところにあるため、汚物が通る下水管を地下水の中に沈める訳にはいかないという事情があったらしい。こうしてロンドン市内ほとんどの道路が大胆に嵩上げされる土木事業が行われた。我々が現在歩いているロンドンとはヘンリー8世やエリザベス1世が歩いていた世界と同じではなく、その3メートルほど上に築かれた新しい世界ということになる。

写真① 黒塗りの鉄柵の下にもう一つのロンドンが。
写真① 黒塗りの鉄柵の下にもう一つのロンドンが。

▶郊外は分からないが、ロンドンの街中を歩いていて不思議に思ったことがある。ロンドンでは路面に半分だけ窓が顔を出したような中途半端な高さの半地下をやたらと見かける。探すまでもない。街は半地下だらけ。転落防止のため黒塗りの柵で厳重に包囲されているのですぐに分かる=左下・写真①。機会があったら柵の下を覗いてみて欲しい。3メートルほど下に建物の入り口とほぼ同じ形状のもう一つの入り口が見えるはずだ。それが嵩上げされる前の、半地下がかつてグランドフロア(日本の1階)だった時の入り口跡だ。こうした建物で、かつ裏に公共の庭があるような物件の中に入る機会があったら確認して欲しい。100%とは言えないが裏庭に通じる出口はおそらく半地下にある。これもまた今の半地下がかつてはグランドフロアだった時のなごりだ。

▶写真②=右上=を見ていただきたい。ストリートレベルから随分と階段を上ったところに建物入り口がある。引っ越しの際や車椅子の人には厄介な段差だ。これは道路嵩上げの際、かつての1階(日本の2階)部分に新しく作った玄関と新路面に段差が生じたため辻褄合わせで作った階段だ。フロアの高さに統一規格がなかったため建物によって階段の高さに差異が生じた。お上の命令で、ある日突然グランドフロアが半分地下に埋没する。建物のオーナーにしてみたら一大事。下水工事や洪水対策、防疫のためとは言え住民からの反対はなかったのか。今回、色々調べてみたがこれ以上の情報には出会えなかった。ロンドンも奥が深いぜ。てなこって紙面が尽きたので今年はこれでおしまいだ。みなさん良いお年を、だぜ~い。

写真② 引っ越しには
かなり厄介な段差だ。
写真② 引っ越しには かなり厄介な段差だ。

週刊ジャーニー No.1271(2022年12月22•29日)掲載

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