
■ 第140話 ■王室やめて共和制、はイヤん
▶エリザベス女王が亡くなったことで英王室廃止論が再燃することは避けられない。日本の皇室はイギリスの王室と並べて論じられることが多いが筆者は少し違和感を覚える。イギリスの王室は1066年にフランスのノルマンディー公国から攻めて来たウィリアム1世が開祖となったノルマン朝が始まり。つまり約1000年前にイングランドを武力で統一した総大将の遠~い末裔が今の王室。無理やり日本にあてはめればむしろ将軍家の方が似ている。王子たちが軍隊に入隊するのも武家の習わし。女王の国葬も武家トップの葬送らしく軍隊的要素が各所に散りばめられていた。
▶イギリスが見抜いたように幕末の日本は天皇と幕府と言う2トップ制で、幕府が天皇をすっ飛ばして国策を決めることは難しかった。しかし大政奉還して幕府も将軍も消滅。1トップとなった日本は立憲君主制となった。イングランドもかつて2トップ制だった。1066年にノルマン朝が成立したけど、王様には目の上のたんこぶがいた。ローマ教皇だ。教会関係者の叙任権や裁判権はイングランドになく、教会が集めたお布施や税金も多くがローマに送られた。抵抗すると「破門にするでえ」と脅された。ドイツでもローマ教皇に逆らって破門され、カノッサと言う町で雪降る中、何日も裸足で謝罪し続ける屈辱を味わった王様がいたっけ。
▶イングランドではヘンリー8世が男子後継者欲しさに離婚を試みたがローマ教皇の許しが出なかった。そんな中、次期王妃候補の愛人が妊娠しちゃった。愛人のまま出産しちゃうと嫡子として認められず、庶子になる。なのでヘンリーは教皇を無視して離婚し、この愛人を王妃とした。この時生まれた女児が後のエリザベス1世だ。激怒した教皇はヘンリーに「貴様、破門じゃ~」と告げた。ヘンリーも「破門で結構じゃ~」とやり返し、イングランド国教会を創立して独立。自分をピラミッドの頂点に置いた。イングランドはローマ・カトリックとの2トップ体制と決別。全部自分で決められる主権国家となった。イングランドの宗教改革とはルターやカルヴァンのような崇高な精神から生まれたものではなく、ヘンリー8世がどうしても離婚したかったから、という極めて私的な事情によるものだ。
▶イギリスは教皇が消えて武家の王室が残り、日本は武家の幕府が消えて公家の皇室が残った。両国とも2トップから1トップになった点は似ているが、以上のような理由で筆者の目には王室と皇室は別物に映る。例え共和国であってもカトリック教国であればローマにパパがいる。しかし500年も前にパパに勘当されたイギリスが王室を廃して共和制となった場合、精神的な拠り所を失うんじゃないかと危惧している。統治はしないけど君臨している王や女王がいれば戦争を始める時なども当然、お伺いを立てなくてはならない。形ばかりとは言え政府の暴走を抑止する働きもある。しかし共和制となったら議会で決まったことがどんどん進められちゃう危険性がある。
▶キングもパパもいない某大国は例え認知症でヨイヨイの大統領でも一言「ウン」と言えば即日にでも彼らが唱える正義とやらのため、目障りな他国にミサイルを撃ち込んだり、爆弾を降り注ぐことができる。というか、よくやる。それを容易にさせないという一点だけの理由でも、王室は残すべきと思う。イギリス国民が筆者同様の考えであることを祈りつつ、次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。
週刊ジャーニー No.1260(2022年10月6日)掲載
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