
■ 第139話 ■それ行けチャールズ3代目
▶エリザベス女王が亡くなった。1952年に25歳で即位。在位70年と7ヵ月は英王室史上最長だ。父王ジョージ6世の生前の姿を記憶する人はもはやほんのひと握り。今を生きるほとんどの人が物心ついた頃、エリザベスが既に女王だった。色々あったけど広く愛された女王だった。他国の君主であり、縁もゆかりもありゃしない女王だが、子どもの頃から慣れ親しんできたお方。心の片隅に小さく灯っていたろうそくの火が、ある日突然ふっと消されたような喪失感に自分でも戸惑っている。
▶女王の死を受けて皇太子が直ちに即位し、チャールズ3世となった。お母さんは25歳で即位したが、新国王は73歳にして漸く順番が回って来た。で、だっ、大丈夫か? 1066年にノルマン朝が始まって以来、イギリスはヤベエ王様を山ほど輩出した。最も有名なのは6人の妻を娶り、うち2人の首を刎ね、国教会を始めた怪物王ヘンリー8世だ。その娘、エリザベス1世は優秀な取り巻きのお陰で結構頑張ったけど、子を残さずチューダー朝は断絶。その後、スコットランド出身のジェームズ1世が即位してスチュアート朝が始まったものの「王の権利は神様から授かったものだから何してもいいのよ」と言って絶対王政を推進。その長男がチャールズ。即位してチャールズ1世となり王権神授説をさらに進めて議会と激突。やがて内戦(清教徒革命)に発展し、捕らえられて首を刎ねられちゃった。現役で処刑された英国史唯一のキング、それがチャールズ1世。
▶イギリスは共和制となったけど、護国卿となったクロムウェルが極端な禁欲主義を国民に強いた上、独裁的権力を行使しまくったため「これだったら王制の方が良くね?」ってムードになっちゃった。クロムウェルが死ぬと議会はフランスに亡命していたチャールズ1世の息子チャールズとジェームズを呼び戻して王制に逆戻り。長男が即位しチャールズ2世が誕生した。ところが兄弟は母方の親戚ルイ14世のもとに匿われている時に「イギリスに戻ったら英国国教会とかいうパチモンやめてカトリックに戻せ。助けてやった恩を忘れたらあかんで」という指令を密かに受けていた。チャールズ2世は中途半端だったけど、弟はバリバリのカトリック強硬派。兄が死んで即位、ジェームズ2世となると露骨にカトリック回帰の動きを始めた。議会は「こいつヤベエ奴だった」とジェームズ2世を追放。オランダのウィリアム公に嫁いでいたチャールズ2世の娘メアリーを夫婦ごとイギリスに呼び寄せ、王冠を授けて共同統治させた。のちに言う名誉革命だ。メアリー没して妹のアンが女王となったが子を残さず逝き、スチュアート家も断絶。遠い親戚でプロテスタントのドイツハノーバー選帝侯ゲオルク(Georg)を連れて来て即位させ、ジョージ1世が誕生。今のウインザー朝に繋がるハノーバー朝が始まった。
▶チャールズ3世のフルネームは「チャールズ・フィリップ・アーサー・ジョージ」。4つの中から選ぶことが出来たが結局チャールズが選ばれた。独立を窺うスコットランドへの配慮か? 1世は首を刎ねられ、2世は議会と対立。そして今年、337年ぶりにキング・チャールズが復活した。3度目の正直か、はたまた2度あることは3度あるのか。暗い話題が多い昨今、新国王には、ぜひとも明るい時代を築いてチャールズ王の名を輝かしいものにしてもらいたいもんだ。女王の冥福を祈りつつ次号に続くぜ。チャンネルはそのままだよ~ん。
週刊ジャーニー No.1259(2022年9月29日)掲載
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