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■ 第121話 ■強盗を襲うのはOK牧場

▶前号で「イギリスは例え悪事であっても、国益に繋がれば英政府は後に必ず追認する。もはやイギリス伝統のお家芸と言って良い」と書いた。例を挙げる。16世紀中頃、世界の頂点にいたのはスペインだ。先に世界に出たのはポルトガル。香辛料貿易で莫大な利益を上げた。スペインがこれを追った。当然ながら2国は各地で激突。そこで世界地図、縦に2本の線を引いて「世界は2国のためにある」と言わんばかりに地球を二分割した。どっちみち両方からお布施が転がり込んでくるローマ教皇は「いいよ~」と承認した。周回遅れでプロテスタントのオランダとイングランドが世界に漕ぎだした時、既に世界は先発カトリック2国に独占されており、後発組は各地で嫌がらせを受けた。イングランドは北極回りで太平洋に出られないか真剣に考え、北極圏に探検隊を送りこんでは遭難させた。わずか400年ほど前、スペインとはイングランドもガタガタブルブルのスーパーパワーだった。

▶そこに登場するのがフランシス・ドレークら私掠船と呼ばれる海賊だ。彼らは中南米から金銀財宝を山ほど積んで本国に向かうスペイン輸送船を次々に襲った。スペイン人は狂暴なドレークを悪魔の化身ドラコ(ドラゴン)と呼んで恐れ、見つかりませんようにと神に祈った。奪った財宝はイングランドに持ち帰り、半分を王室に献上。彼らが持ち帰る富はイングランド歳入の半分近くを占めたというから時の国王エリザベス1世も小躍りヒャッホー。凶悪強盗殺人犯を襲撃して身ぐるみ剥ぐ。どっちも悪党過ぎて何が善で何が悪かもはや分からない。スペインのフェリペ2世は義妹エリザベス1世に「海賊行為をやめさせろ。ドレークの首を差し出せ」と迫った。その都度エリザベスは「私たちも手を焼いておりますの。捕まえたらぶっ飛ばしておきますね。おほほ~」と適当にいなす一方、ドレークにナイトの称号を与え、さらなる奮闘を促した。海賊がスペインに捕らえられ、エリザベスの責任が問われた場合は「そんな海賊、知りません。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」と切り捨てた。エリーちゃんも乱世を生きたなかなかのワル。ちなみにドレークはこの後、スペインの無敵艦隊がイングランドに攻めて来た際、副司令官に抜擢され、これを壊滅に追い込む。イギリス人にとっては超かっこいい英雄的海賊。

ドリナ
スペイン船から奪った財宝チェック中のドレークですが、何か?

▶東インド会社も私立の勅許会社。初めの頃は比較的温厚な商社だったが、インドで綿と出会ってから人が変わったように強欲、暴力的となりインドを植民地化。私設軍隊まで保有して反乱を鎮圧したり、後発のフランスと戦争したりでイギリスに莫大な富をもたらした。しかし本国で自由貿易主義が台頭すると貿易権の独占に批判が集中。19世紀中ごろ、東インド会社は解散させられ、その利権はロスチャイルド家に渡った。アヘン戦争も東インド会社やジャーディン・マセソン商会が引き起こしたもの。茶や陶磁器の支払いをインドで育てた麻薬で払い、拒絶されると軍隊を送り暴力で制圧した。正義なき戦争として英議会は紛糾したが、戦利品が魅力的過ぎたため押し黙り、やがて追認した。魚をたくさん捕まえる鵜は良い鵜。例え水中でどんな汚い手を使っていたとしても。このようにイギリスは結果オーライなら私的な企業の暴走を黙認&追認する傾向があった。冒頭の「イギリス伝統のお家芸」を補足説明した気になったところで次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1241(2022年5月26日)掲載

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