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■ 第28話 ■ カリブ海に黒人が多い黒歴史

▼北米と南米の間、メキシコの東側にある海域はカリブ海と呼ばれる。カリブの海にはジャマイカやキューバ、プエルトリコ、バルバドスなどなど大小様々な国が浮かぶ。世界最速の男ウサイン・ボルトはジャマイカ人。テニスプレーヤー大坂なおみのお父さんはハイチ人。大リーグ、レッドソックスの大投手ペドロ・マルチネスはドミニカ人。みんな黒人だ。レゲエに代表される音楽やアスリートの顔ぶれを見るとカリブは黒人の国々、島々といった印象が強い。しかしコロンブスが来た時、カリブ海に黒人はいなかった。どゆこと?

▼カリブ海にいたカリブ族やアラワク族といったモンゴロイド系の先住民族、白人たちが間違えてインディオ(インド人)と呼んだ人たちは、コロンブス以降に押し寄せて来たスペイン人たちによって殺されるか、西洋人が持ち込んだ疫病によってほぼ消滅した。スペイン人はインディオがいなくなった島々にインド周辺原産のさとうきびの苗を植え、砂糖を作り始めた。砂糖はヨーロッパへと運ばれ、爆発的な人気商品となった。ヨーロッパの富裕層は白く輝く砂糖を最初は薬として、やがて調味料として珍重した。精糖にはたくさんの人手がいる。問題ない。アフリカに無限の労働力があった。カリブ海の島という島に大量の黒人奴隷が運ばれてきた。こうして一部の白人支配層を除き、黒人奴隷しか住んでいない島々がカリブ海に次々と誕生していった。ヨーロッパから来た白人の手によって島の住民がインディオから黒人に丸ごと入れ替えられた。それが青く美しいカリブ海の暗黒の歴史だ。そんなこと、あっていいの? でも歴史的事実だ。しばらくイベリコ豚やパエリヤを食べたくなくなる話だ。美味しいから食べるけど。

▼ハイチとドミニカ、2つの共和国が共生する島はイスパニョーラ島と呼ばれる。1492年に悪党コロンブスが辿り着いた島の一つだ。スペインはイスパニョーラ島の東側でさとうきび栽培を始めた。やがて島の西側にフランス人がやって来て、スペイン同様大量の黒人奴隷を使ってさとうきびの生産を始めた。国力が衰退し始めていたスペインにもはやフランスを蹴散らす力は残っていなかった。フランス側がおさえた島の西側がのちにハイチ共和国となり、スペイン人がいた東側がドミニカ共和国となる。

▼1789年、フランス革命が起こった。ハイチの黒人奴隷たちは支配者フランスの大混乱の隙をついて武装蜂起した。ハイチ革命の始まりだ。イギリスやスペインがフランス領を奪い取ろうと軍を派遣して来たがこれを撃退。独立まであと少しのところまで行った。ところが奴隷制を支持するナポレオンが軍を派遣。反乱は鎮圧され、革命は一旦失敗に終わった。しかし翌年、イギリス軍の支援を受けた革命軍は遂にフランス軍を駆逐し1804年に独立を宣言。世界初の黒人による共和国、ハイチが誕生した。黒人奴隷たちが白人支配者たちを追い出して勝ち取った独立国家だ。素晴らしい。素晴らしいけどそこ、元々はインディオが数百万人も住んでいた島でっせ。インディオたちに返してあげなはれと言いたいけれど、島のインディオたちは既に絶滅させられちゃっていた。

▼世界初の黒人による独立国家ハイチ。その後は内紛に次ぐ内紛と英米など列強による干渉が続いた。他の国が欧米庇護の下で経済成長を遂げる中、独立を貫いたハイチは現在、世界最貧国の一つと言われる。どちらが幸せなのか分からない。皮肉なものだ。しんみりしたところで次号に続くぜ。チャンネルはそのままだぜ。

週刊ジャーニー No.1148(2020年7月30日)掲載

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