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■ 第24話 ■白と黒の大移動 その2

▼スペイン人らがカリブ海や中南米で先住民(インディオ)を殺し過ぎたことで足りなくなった労働力。「銀や金は誰が掘るの~?」「砂糖や綿花は誰が収穫するの~?」。そこに「ええのがおったで~」とアフリカから大量の家畜が送られてきた。黒人だ。後に北米を取り合うオランダ、イギリス、そしてフランスも積極的に奴隷貿易に参加した。奴隷貿易は三角貿易に進化し参加国に莫大な利益をもたらした。悪名高い三角貿易をおさらいしよう。まずはヨーロッパから西アフリカの一定部族長に中古の銃器や安物のビー玉、木綿製品などを渡す。銃器を手にした部族は別の部族を襲って捕虜を得、これらを奴隷商人に銃器や綿製品等の対価として渡す。入手した捕虜(奴隷)を中南米に運んで売りさばく。その売却益で砂糖や綿花、コーヒー、たばこなどを買い付け、本国に持ち帰る。ヨーロッパで収穫できないこれらの嗜好品は高値で爆発的に売れた。そしてまた安物の銃器やビー玉、木綿製品を積み込んでアフリカへ。二束三文の元手が三角形を一周して帰ると莫大な利益に化けた。「おぬしも悪よのぅ、ほ~っほっほっ」でお馴染みの大黒屋も越後屋も震え上がって失禁ジョジョジョの大悪党の所業だ。奴隷貿易で最大の利益を掠め取ったのがイギリスだった。ここで得た莫大な資金もまた産業革命の推進力となっていく。

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▼こうしてアフリカから連れ去られ、アメリカで売買された奴隷の数は16世紀に90万人。17世紀は300万人、18世紀は700万人、そして19世紀に400万人。合計1500万人ほどが奴隷として売買された。ところが奴隷倉庫や運搬船の環境が劣悪過ぎたため、競売にかけられる前に多くの人が自殺したり、病で命を落としたと言われる。さらにアフリカで理由も分からないまま憎くもないのに部族間抗争をさせられ殺された人の数を含めると奴隷貿易の陰で落命した黒人の総数は1億人近くになると言われている。カリブ海や中南米で殺されたり、ヨーロッパ人が持ち込んだ伝染病によって死んだインディオも最小4千万人、最大1億人と言われている。ひでー。

▼コロンブスがアメリカに到着するまで白人は、ほぼヨーロッパという狭いエリアにしかいなかった。そして黒人は、ほぼアフリカにしかいなかった。白と黒、その両方がこの500年の間に世界各地に大移動した。白人は欲望の赴くまま、自らの意志で先住民を殺し土地を収奪しながら。黒人は移動の意志を問われることもなくある日突然家族と引き裂かれ、家畜として船に積まれ、売られ、世界に拡散した。我々は今、一部白人たちの世界制覇欲望の果てに、人種の分布図がグチャグチャになった世界に生きている。

▼リンカーンが奴隷解放を宣言したのは今からわずか160年ほど前のこと。奴隷制度は終わりを告げたけど、黒人への差別が終わった訳ではない。Black Lives Matter。黒人の命は大切。議論するまでもない。しかし奴隷として無理やり連れて来られた上に500年経った今も差別は変わらず続いている。人類史に刻まれた傷跡はあまりにも深い。グダグダの本筋「イギリスのメシはなぜまずい?」はどこ行った? 知らん。コロナめ! 羅針盤を失い、漂流したまま次号に続く。念のためチャンネルはそのままだぜ。

参考資料:T・バージャー著『コロンブスが来てから』 /清水馨八郎著『侵略の歴史』他

週刊ジャーニー No.1144(2020年7月2日)掲載

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