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■ 第21話 ■
関西の人々に告ぐ

▼数年前、大阪出身の友人とお 好み焼きの話をしていた時のことだ。「関西にはウスターソースという関西オリジナルのソースがあ る」と言う。「ウスターソースは 全国にあるぜ」と言うととても驚 いていた。「そもそもイギリスの もんだし」と言うとさらに驚いて いた。後日、その件を別の関西 人たちに話した。みな一様に目を 丸くして「ほんまでっか?」と驚いていた。中には「薄田ソースさんが作ってるんと違うの!?」と豪 胆にも架空の会社まで作って関西 独自のソースと信じている人もいた。すごいぞ、関西人。

▼ウスターソースは正確にはウスターシャーソースと言う。ウスターシャー(Worcestershire)と はイングランド中西部にある県で ウスター市はその県都だ。19 世 紀前半、東インド会社のベンガ ル総督を務めていた人物がインドで愛用していたソースを持ち帰った。ウスターで商売をしていた2 人の薬剤師に渡し、これに似せ てソースを作ってちょ、と依頼した。何で薬剤師に? と思うけど、 この当時の薬剤師は食品加工業を 兼ねている人が多かった。2人はモルト(麦芽)ビネガーに様々な 根菜や香辛料をたっぷり入れ、さらにローマ時代から続くアンチョ ビの魚醤を加えてソースを完成させた。ところが出来上がったソースは味が強烈過ぎてとても商品に なるものではなかった。出来損な いのソースを樽に詰め、地下倉庫の奥の奥に運んで放ったらかした。数年後、樽の存在に気付い た2人は処分する前にこのソー スを舐めてみた。すると樽の中で発酵と熟成がいい具合に進み、丸みを帯びた美味しいソースになっていた。1838 年、2 人の名前を 付けたリー&ぺリンズ・ウスターシャーソース=下写真=が発売された。ソースは爆発的に売れ た。その後、世界に拡散し日本 にも明治の初め頃にやってきた。

▼日本の醤油メーカーもコピー に挑んだがモルトビネガー主体のソースは和食に合わず苦戦した。 洋食の浸透が進む中、1894 年に 発売された「三ツ矢ソース」(大阪)は「洋式醤油」として人気を 博した。その後「イカリソース」(大阪)や「日の出ソース」(神戸)、「ブルドックソース」(東京)、「カゴメソース」(名古屋)などが売り出され全国に広がった。

▼日本で「洋食屋さん」が増えて 行く過程でウスターソースのニーズもますます高まって行った。さらに揚げ物料理に合うようにと より粘度の高い中濃や濃厚(とんかつ)ソースなど日本独自の新 ソースが誕生した。これら中濃 やとんかつソースは日本農林規 格(JAS)においていずれも「ウスターソース」に分類される。お 好み焼きやタコ焼きのソースも 同様だ。「イギリス? メシまずい やろ、食うものな~んもあらへん」とか言ってイギリスの食を見 下している関西の方々。今食べ ているタコ焼きやお好み焼きを ちょっと脇に置き、イギリスの 方を向いて「先祖代々大変お世話 になっています。おおきに。知らんかったとはいえ、関西オリジナルとか薄田とか好き勝手言うてごめんね。堪忍やで」と1回 くらい頭下げて感謝 してもバチ当たらんで。関西方面に敵を多数作ったところ で次号に続くでぇ。チャンネルはそのままや!

週刊ジャーニー No.1141(2020年6月11日)掲載

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