gudaguda_title.jpg

■ 第11話 ■
スゲーぞ! 宮城のカキ

▼フランス人のカキ好きは有名だ。壮大な話だけど、それは2000年ほど前、ガリアと呼ばれた今のフランスがローマに支配された頃の影響らしい。ローマ軍は進軍するにあたり、各地沿岸部で栄養価の高いカキを求め、生で食べたという。やがてローマ人は去るがこの時のカキの生食文化はその後、この地に進出したゲルマン民族にも継承された。

▼2011年3月11日。巨大地震が東北地方を襲った。直後にやって来た大津波は三陸の海岸部を根こそぎ破壊した。この時、養殖のカキも壊滅的なダメージを受けた。その際、フランスの 「ルイ・ヴィトン」が宮城のカキ復興に7千万円を寄付したことが大きく報道された。覚えている方も多いだろう。それだけではない。フランスのカキ養殖業者らが中心となって義援金が募られた。集まった資金を元に養殖用のロープや浮きなどが大量に宮城に送られた。なぜフランスの人たちがここまで宮城のカキ復興のために動いたのか。

▼1970年頃、フランスでやっかいなウイルスが発生し、生産量のほとんどを占めていたアンギュラータというカキがほぼ全滅した。フランスは世界中から集めたカキの稚貝の育成を試みた。その中で最高の結果を残したのが宮城産のマガキだった。マガキはウイルスに強く、繁殖力も強いためたちまちフランスのカキは復興した。ある年齢より上のフランス人は今もその時のことを鮮明に記憶しているという。そこに東日本大震災が起こった。フランス人はかつてフランスのカキ絶滅危機を救ってくれた宮城に半世紀ぶりに恩返しをしたわけだ。エエ話やなぁ~。おっとここはイギリスの食を語るスペースだ。放っておいても美味しいフランスのことは置いておこう。

フランスやイギリスで重宝されている宮城ルーツのパシフィックオイスター。
© Guido

▼今、イギリスで食べられるカキも実はほとんどが宮城ルーツだ。先週語ったようにイギリスの平たい「ネイティブ」というカキは乱獲と水質汚染で壊滅的となり今もまだ復興半ばだ。また、「ネイティブ」は5月から8月に卵が膨らんで味が落ちる。そのためこの期間は収穫自体が禁じられている。そこで年中安定的にカキを食べたいイギリス人は1965年頃、宮城産マガキの稚貝を輸入した。これが見事イギリスの水質に馴染んで繁殖した。イギリス国内で「パシフィック」と呼ばれているカキはほぼ間違いなく宮城ルーツのカキだ。

▼どんなもんじゃい! とふんぞり返ったらそのまま後ろにぶっ倒れそうなニュースが飛び込んできた。パシフィックオイスターの生命力が強すぎて「ネイティブ」の成長を妨げているかもしれないという科学者の見解だった。いやーん。かつてあんなにありがたがってたくせに~ん。杭が出過ぎりゃ打たれるのは洋の東西問わずってことね。チャーチルも戦争終わった途端に選挙負けたしさ。世の中キビシーッ! を知った頃、ネイティブ食べられない季節が来る。サミシーッ。

▼余談だけど、日本では明治になるまでカキを生で食べる習慣はほとんどなかった。生食を日本に持ち込んだのはヨーロッパ人なんだって。寿司と真逆。面白いね。

週刊ジャーニー No.1131(2020年4月2日)掲載

他のグダグダ雑記帳を読む