
●サバイバー●取材・執筆/ミヨコ・スティーブンソン、本誌編集部
■英国のクリスマスにはターキー、日本の年始にはおせち料理と、各国には年末年始の伝統的な料理がある。しかし、今では伝統料理以外の世界の料理が楽しむまれることも増えた。様々な行事や機会に際して、料理にも合わせやすく、失敗がなく、気分を盛り上げてくれるワインに、ロゼ/オレンジワイン、そしてスパークリング・ワインがある。
ロゼワイン
1980年代よりニューワールドから力強い果実香味の豊かな赤ワインが進出してくると、ヨーロッパでは、果皮や種と一緒に醸造することによってブドウの色素を抽出して赤ワインをつくる工程中、淡い赤色が抽出された段階で一部その液体を抜き取ることにより、ロゼワインと、凝縮した赤ワインが盛んに造られるようになった。主なブドウ品種は下のコラムをご覧いただきたい。
リッチな赤ワインを造るための副産物とはいうものの(ロゼワインの生産のみに特化しているワイナリーもあるだろうが)、手頃な値段で、果実香味がフレッシュで赤ワインのもつ苦みもほとんどなく、魚料理にも肉料理にもサラダにも合い、重い食事から軽い食事、そしてアジア系料理のトレンドにも乗って、ロゼワインの人気は更に上昇している。
ロゼワインは早期消費用で、寝かせて熟成させたりしない。次の4つの造り方がある。
①収穫した黒ブドウを破砕機にかけると、果皮に含まれる色素が果汁に混じったピンク色の液体が破砕機から自然に流下する。その果汁を使って発酵させると、最もデリケートな淡い色のロゼワインとなる。
②収穫した黒ブドウを破砕し、果皮からの色が果汁にしみるまでそのまま置き、十分な色が出たら、圧搾して果皮を除き、果汁を発酵させる。
③赤ワインを造る時と同様に、収穫した黒ブドウを破砕し、果汁と果皮を一緒に発酵させる。発酵が始まって望む色の濃さによって、6~48時間後に果汁を抜き取って、果汁だけを引き続き発酵させる。通常、果汁と果皮を接触させる時間が長くなるほど、ピンク色が濃くなる。
④白ワインに少量の赤ワインを加えて造る。※この方法で造られたロゼワインは、英国とEU圏内の市場での販売を許されていない。
オレンジワイン
これは新しい名称で2000年頃に紹介された。もともとこの醸造法は、ワインの発祥地とも言われているジョージア(グルジア)で行われていた方法で、ジョージアではアンバーワインと呼ばれている。ロゼワインが黒ブドウ品種から造られるのに対し、オレンジワインは、白ブドウ品種から造られる。つまり、白ブドウを赤ワインを造るように、果皮や種と一緒に醸造して造る。オレンジワイン用の品種には、芳香性が高いヴィオニエ種やゲヴェルツトラミネール種、果皮の色が灰色っぽいピンク色のピノ・グリ/ピノ・グリージョ種、そして(ジョージアでは)寝かせて熟成可能な酸味とタンニンを備えたルカツィテリ種、色と香味が抽出しやすいジンファンデル/プリミティーヴォ種がある。
オレンジワインは、ロゼワイン同様冷やしてのむのが普通だが、タンニンが含まれるために冷やしすぎると渋みが目立つ。冷蔵庫から出して10分程おいてからグラスに注ごう。
ロゼワイン用品種
*カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignon種優れた赤ワイン用ブドウ品種として最もよく知られている。カシス香味、酸味、タンニンが強く、オークとの相性がよく長期熟成する。メルロ種とブレンドすることが多い。
*ピノ・ノワールPinot Noir種
数々のクローンがあり、国や地域によってかなり異なった特徴のワインができる。通常、色が薄く、赤いベリー類の香味を呈し、酸味が高い。熟成と共に湿った森や堆肥の臭いを伴うようになる。
*シラーズShiraz/シラーSyrah
果皮が厚いため色の濃い、タンニンが多い(暖かい気候下では中程度)、黒いベリー類の香味やスパイス風味、杉、タバコの木箱、そして時にはチョコレートの香味を呈すワインを造る。オークとの相性がよく、よく熟成する。
*ガルナッチャGarnacha種(フランスではグルナッシュGrenache)
スペインのアラゴン州原産。赤い果実香味を呈し、スパイシーで、酸味・タンニンがそれほど強くない。
*ジンファンデルZinfandel種/プリミティーヴォPrimitivo種
エキゾチックな黒ブドウ品種で、長い間アメリカ合衆国原産と考えられていたが、DNA検査の結果、イタリアのプリミティーヴォと同品種であることが判明した。アメリカではジンファンデル、イタリアではプリミティーヴォと呼ばれる。アメリカでは主にカリフォルニア州で栽培され、ロゼワインでありながら、White Zinfandelとラベル表記されるので間違えないように。赤系果実、黒系果実、乾燥させたベリー風味を呈す。
オレンジワイン用品種
*ヴィオニエViognierアルコール度が高めのワインを造ることができ、杏、モモ、花の香りを呈すアロマティックな品種で、古くからフランスのローヌ川北部流域で栽培され、熟成可能な白ワインを造っているが、ニューワールドではロゼワインにも用いられている。
*ゲヴェルツトラミネールGewürztraminer種
ピンク色の果皮をしたブドウで、特に刺激的な香りのフル=ボディの白ワインを造る。フランス、アルザスでは2番目に多く栽培される品種で辛口から甘口の白ワインが造られる。
*ピノ・グリPinot Gris/ピノ・グリージョPinot Grigio種
フランスではピノ・グリ、イタリアではピノ・グリージョと呼ばれる。一般に辛口または極ドライのワインを造り、多くの場合、粘り気のある口当たりと熟したトロピカル・フルーツの風味を持ち、生姜とハチミツの香りがわずかに加わる。たいていの場合、果皮の色が濃く、その結果、白ワインを造った際にも黄金色になることが多い。
*ルカツィテリRkatsiteli種
ルカツィテリとは、ジョージア語で『赤い茎』という意味で、その名の通り、茎が赤い。ブルガリアやルーマニア、米国、中国で栽培されている。アプリコットやオレンジピール、柿、ときにはコンポストなどの香味を呈し、赤ワインのような渋味と苦味も併せ持つ飲みごたえのあるワインを造る。オレンジワインは、ロゼワインより重みがあり、ロゼでは軽すぎるような料理にも合う。
スパークリングワイン
スパークリングワインは発泡性ワインと同義語で、最も有名なものにシャンパーニュがある。シャンパーニュとは、パリから140キロ北東に位置するランスReimsとエペルネEpernayという2つの町を中心に広がる約3・7万ヘクタールのシャンパーニュ地方で、伝統的な方法で造られる発泡性ワインだ。
シャンパーニュに関しては、新年号で改めて取り上げることにして、今号ではシャンパーニュ以外のスパークリングワインのうち、お手頃価格のものをご紹介したい。ご家族で、存分に楽しんでいただきたい。

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson
WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。
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10ポンドで買えるおススメ ロゼ&オレンジワイン
レオン・ペルヂガル、コート・ドゥ・ローヌ
Léon Perdigal Côtes du Rhône Rosé 2023
Majestic £9.99

フランス、ローヌ川流域南部コート・デュ・ローヌCôtes Du Rhône地域産。ローヌ河畔の風光明媚なエリアで1859年より優れたワインを生み出している。
【ブドウ品種】グルナッシュGrenache種、サンソーCinsault種。
【特徴】しっかりとしたストラクチャーで、赤いベリー、柑橘類、花の芳醇なアロマを呈すフレッシュでフルーティーな辛口ワイン。アルコール度13.5%。
【料理との相性】サーモンやローストチキン、たこ焼き、春巻きやタイ料理と合う。
エスプリ・ドゥ・ブガネ、コート・ドゥ・プロヴァンス
Esprit de Buganay Côtes de Provence Rosé
Waitrose £9.99

フランス、コート・ドゥ・プロヴァンスCôtes de Provence産。ロゼワインの代表的産地プロヴァンスで造られたワイン。
【ブドウ品種】35% サンソーCinsault種、50% グルナッシュGrenache種、15% シラーSyrah種。
【特徴】淡い色合いで、熟した赤いサクランボとボンタン(ザボン)の香味に、わずかにスパイス風味を呈す辛口ワイン。典型的なプロヴァンス・ロゼ。アルコール度13%。
【料理との相性】シーフードの盛り合わせ、サラダ・ニソワーズ、ローストした冷たい肉類、塩味の中華料理によく合う。
ザ・ガヴァナー・ロゼ
The Guv'nor Rosé
Majestic £9.99

スペイン産。生産者は、幾つもの賞を受賞する人気の高いロゼワインを造り出している。
【ブドウ品種】ガルナッチャGarnacha種、テンプラニーリョTempranillo種、ボバルBobal種。
【特徴】主にガルナッチャ種から造られているが、他にテンプラニーリョとボバルがブレンドされている。それぞれの品種を注意深く醸造し、各ブドウ品種の個性を引き出している。イチゴと赤スグリの果実香味を呈す。酸味とのバランスがよく後味も長い。アルコール度13%。
【料理との相性】スターターとして、またタパスやパエリャに最適な辛口ロゼワイン。
ベッラ・モデッラ、ピノ・グリージョ・ロゼ
Bella Modella Pinot Grigio Rosé
Selfridges £9.99

イタリア産。果実香味を抽出するために低温にてステンレススチール槽にて醸造されたワイン。
【ブドウ品種】100%ピノ・グリージョPinot Grigio種。
【特徴】スパイスを伴う花や果実の香りの爽やかで、穏やかな香味のロゼワイン。アルコール度12%
【料理との相性】アペリティフやスターター・ワインとして楽しめるほか、リゾットや魚介類を使ったパスタや冷たくしたローストチキンによく合う。
ボルゴデイ・プリミティーヴォ・ロザート
Borgodei Primitivo Rosato IGP
Waitrose £9.99

イタリア、プーリアPuglia州産。陽光ふりそそぐ温暖な地域で造られたワイン。
【ブドウ品種】100%プリミティーヴォPrimitivo種。
【特徴】オレンジの花、新鮮なハーブ、桃、ジャスミンの香りを風味を呈すさわやかな辛口ワイン。果実味と酸味のバランスが極めて良い。アルコール度12.5%。
【料理との相性】魚介類や甲殻類を使ったパスタやリゾット、肉類の冷製メインディッシュ、サラダ、春巻きやたこ焼きといった料理に合わせやすい。
マセラオ・ナランホ・オレンジ
Macerao Naranjo Orange 2020
Waitrose £8.99

チリ、イタタ・ヴァレーItata Valley産。白ブドウ品種を、赤ワインを造る時同様、果皮や種と一緒に醸造したオレンジワイン。
【ブドウ品種】100%モスカテル・ドゥ・アレキサンドリアMoscatel de Alexandria種。
【特徴】樹齢60年のブドウを使い、手摘みで収穫し、野生酵母で発酵させて造られている。オレンジの花やドライアプリコット、カリン(マルメロ)、梨、ハチミツの混じった複雑な香りを呈す、飲みごたえのある辛口ワイン。リッチでクリーミーな味わいと、引き締まった爽やかな味わいとのバランスが抜群。貴重なワインに大変お手頃な値段が付けられている。アルコール度13.5%
【料理との相性】ジョージア料理のオジャクリ(豚肉とジャガイモ、パプリカや玉ねぎを炒めた料理)、小籠包等を含む豚肉を使った中華料理によく合う。
10ポンドで買えるおススメ スパークリングワイン
グレアム・ベック、ブリュット・ロゼ
Graham Beck Brut Rosé
Ocado £14.00

南アフリカ、ウェスタンケープ産。年末年始にこの1本は持っていると便利と断言できるできばえ。
【ブドウ品種】90%ピノ・ノワールPinot Noir種、10%シャルドネChardonnay種。
【特徴】ブドウは3~4月に収穫し、果実香味とフレッシュさを保持するためにステンレス槽にて低温で発酵させ、沈殿物(発酵を完了し死んだ酵母)を取り除かずに長期間寝かせ、その後、沈殿物を取り除いて調整してから瓶詰し、1年9ヵ月間瓶内熟させて出荷。豊富な泡が細かく、口当たりがクリーミーで、ベリー系の香りが豊潤で、コクのある味わいの素晴らしいスパークリング・ロゼだ。グレアム・ベックは、南ア産スパークリングとして、初リリースした2002年から6年間連続でTOP10生産者に選ばれ、多くの賞を受賞してきた。アルコール度:12.5%。
【料理との相性】アペリティフとしてだけでなく何の料理にも合う。
オイスター・ベイ、スパークリング・キュヴェ、ブリュット
Oyster Bay Sparkling Cuvee Brut
Tesco £13.00

ニュージーランド北島 ホークス・ベイ産。幾つかの賞を受賞しているワイン。
【ブドウ品種】100%シャルドネChardonnay種。
【特徴】自然酵母が使われ、タンク内で二次発酵させて造られている。活発な泡をもつ、エレガントで繊細なワイン。爽やかな柑橘類との果実香味にミネラル感を併せ持つ。豊潤な果実味のエレガントなワイン。アルコール度12%。
【料理との相性】生牡蠣、焼いたり蒸したりしたホタテ貝。シーフードに合う。
パースクア、’ロミオ・アンド・ジュリエット’、ブリュット、プロセッコ
Pasqua 'Romeo & Juliet' BrutProsecco DOC, Treviso
Majestic £13.00

イタリア、ヴェネト州、トレヴィーゾ地域産。ロミオとジュリエットの舞台となったヴェローナVerona周辺で造られたプロセッコ。
【ブドウ品種】100%グレラGlera種。
【特徴】ロマンチックなストーリーを持つこのプロセッコは、あらゆるオケージョンにぴったりのワイン。ボディが軽く、ミネラル感を持ったリンゴや柑橘類、洋ナシの果実香味が香しいフルーティーでフレッシュなワイン。アルコール度11%。
【料理との相性】アペリティフとして、また、ヴィネグレットのドレッシングを使ったサラダ、レモンを絞ったソフトシェルクラブ、ムラサキ貝の白ワイン蒸し、パスタやリゾットによく合う。
クレマン・ドゥ・ブルゴーニュ
Crémant de Bourgogne
Sainsburys £13.00

フランス、ブルゴーニュ地方産。濃い目のゴールドカラーが食卓に華やぎを添えてくれる。
【ブドウ品種】シャルドネChardonnay種アリゴテAligoté種、ガメイGamay種、ピノ・ノワールPinot Noir種。
【特徴】シャンパーニュと同じ伝統方式で造られ、死んだ酵母の沈殿物を除去せず16ヵ月間熟成させた。白い花とリンゴ、ブリオッシュ、ライムの香りを呈し、口に含むと柑橘類とライムの味わいにミネラル感が混じる。アルコール度12%。
【料理との相性】チップスの添えられた魚介類の料理にぴったり。
ジャンツ・プレミアム・キュヴェ・ノン=ヴィンテージ、タスマニア
Jansz Premium Cuvée NV Tasmania
Waitrose £13.99

オーストラリア、タスマニア州産。100%乳酸発酵させているので、口当たりがクリーミーな仕上がり。
【ブドウ品種】ピノ・ノワールPinot Noir種、シャルドネChardonnay種。
【特徴】シャンパーニュのように伝統方式で、死んだ酵母を含む沈殿物を接触させたまま18ヵ月間熟成させた。そのために、スイカズラや柑橘類の皮、イチゴといった爽やかな果実香味にヌガーやローストしたナッツといった風味が加わり複雑な仕上がりとなっている。幾つもの賞を受賞している。ヴィーガンの方々にも安心して飲んでいただける1本。アルコール度12%。
【料理との相性】生の牡蠣や甲殻類の盛り合わせに最適。
プリンス・アレキサンドル、クレマン・ドゥ・ロワール
Prince Alexandre Crémant de Loire AOC
Waitrose £14.99

フランス、ロワール川流域産。グラスに注いだ際、淡い美しい黄色が美しいワイン。
【ブドウ品種】75%シュナンブランChenin Blanc種、15%カベルネフランCabernet Franc種、10%シャルドネChardonnay種
【特徴】シャンパーニュと同じ方式で、低温管理し発酵させて造られている。死んだ酵母を含む沈殿物に18ヵ月間接触させて熟成させた。レモンやリンゴ、洋ナシや桃といった果実香味に、ミネラルやイーストの風味が加わる魅力的なアロマ。豊潤なムースの口当たりが滑らかで、香ばしい香りがリッチ。アルコール度12.5%。
【料理との相性】生の牡蠣、甲殻類の盛り合わせ、レモンを絞った白身の焼き魚、白ワインで蒸した貝、蒸したエビなどによく合う。
週刊ジャーニー No.1373(2024年12月19日)掲載