●サバイバー●取材・執筆/ミヨコ・スティーブンソン、本誌編集部

■年末年始を真近に控え、ワインを飲む機会の多い季節となった。招待された時は、ありがたく出されたものを頂けば良いとして、さて、客人を招く際にはどうするか。迷った時のために、ここでワインを選ぶときの基本を簡単にお話しておこう。もちろん、これらはあくまでも一般的な原則であって、各人の好みにもよる。

料理の種類に基準を置く

郷土料理にはその地方のワイン、高級食材の料理にはその額に見合ったワイン、軽い料理には軽いワイン、重い料理には重いワイン、白身の魚料理には白ワイン、赤身の魚料理にはロゼ・ワインやコクのある白ワイン、赤肉料理には赤ワイン、デザートにはそのデザート自身の甘さよりも甘いデザート・ワイン―というのがおおまかな原則。

しかし、例えば「軽い料理」とはどんな料理か、という判断ひとつとっても個人差がある。あまり神経質になると、人を招待しての食事そのものが楽しくなくなってしまう。こうなると本末転倒だ。魚料理には白ワイン、赤肉料理には赤ワイン―程度の基準を守っていればOKと、リラックスして望みたい。

使われているブドウの種類から判断する

ワイン・ラベルにブドウ品種名が書かれているケースが増えている。特に、米国、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンといった「ニューワールド」のワイン・ラベルにはほとんど明記されている。ブドウ品種名からワインを選べるようになるには、まず、自分の好みのブドウ品種を知ること、そしていろいろなブドウ品種の特徴を知ることが大切。飲んでみて気に入ったワインのブドウ品種を覚えるようにすると、以降のワイン選びに役立つ。知っていると便利な品種名は下のコラムをご覧いただきたい。

赤ワイン用品種
*カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignon
優れた赤ワイン用ブドウ品種として世界で最もよく知られている品種。カシス香味、酸味、タンニンが強く、オークとの相性がよく、長期熟成する。メルロ種とブレンドすることが多い。
*ピノ・ノワールPinot Noir
ロマネ・コンティやシャンベルタンといった世界に冠たる超高価なワインを造り出している黒ブドウ品種。数々のクローンがあり、国や地域によってかなり異なった特徴のワインができる。通常、色が薄く、赤いベリー類の香味を呈し、酸味が高い。熟成と共に湿った森や堆肥の臭いを伴うようになる。
*シラーズ(シラー)Shiraz(Syrah)
果皮が厚いため色の濃い、タンニンが多い(暖かい気候下では中程度)、黒いベリー類の香味やスパイス風味、杉、タバコの木箱、そして時にはチョコレートの香味を呈す。オークとの相性がよく、よく熟成する。
*ガルナッチャ(フランスではグルナッシュ)Garnacha(Grenache)
スペインのアラゴン州原産。赤い果実香味を呈し、スパイシーで、酸味並びにタンニンがそれほど強くない。南仏やスペインではロゼワインを多く造る。
白ワイン用品種
*シャルドネChardonnay
涼しい地域では柑橘類の香りを伴う緑色の果実(リンゴなど)風味を呈し、ほとんどのニューワールドのように高温の地域では、トロピカル・フルーツ(モモ、パイナップル、マンゴなど)の風味を強く呈す。オークを使って熟成されると、ナッツ、トーストやヴァニラ、ココナツの風味を伴う。非発泡性(代表格はシャブリ)並びにシャンパーニュをはじめとする発泡性ワインに用いられる。
*ソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc
シャルドネと並ぶ有名な白ブドウ貴品種。きりっと締まった高い酸味が持ち味の非常にさわやかなワインを造り、パッション・フルーツ、スグリ、ニワトコの花、刈ったばかりの芝生、アスパラガス、イラクサなどの独特のアロマをもつ。
*リースリングRiesling 
ドイツで最も重要な白ワイン用品種。辛口から極甘口のワインまで造ることができる。ニュージーランドやオーストラリアの涼しい地域でも優れたワインが造られている。冷涼な地域で造られた場合には青いリンゴ、ブドウ、花、レモンやライムといった風味、そして高温地域ではモモやアプリコット、パイナップルの風味を呈す。酸味が高く、非常にさわやかなワインをつくる。
*ピノ・グリージョ(ピノ・グリ)Pinot Grigio(Pinot Gris)
中程度の酸味で、香味の特徴は格別には強くなく、非常に飲みやすいワインを造る。アルザス産のものは熟成するとナッツやハチミツのブーケを呈すようになる。アルコール度数が高めであるのも特徴。イタリアではピノ・グリージョ、フランスではピノ・グリと呼ばれる。
JFC
TK Trading
Centre People
ロンドン東京プロパティ
Dr Ito Clinic
早稲田アカデミー
サカイ引越センター
JOBAロンドン校
Koyanagi

ヨーロッパのワインについては、ラベルにブドウ品種名ではなく産地名が明記されるものがまだ多いので、産地名を覚える必要があり、話が難しくなる。しかし、最近では、フランス産、イタリア産、スペイン産でもブドウ品種名が明記されるワインがかなり増えたので、選ぶ際の助けになっている。一般的に、単一品種でつくられたワインよりも、幾つかの品種をブレンドしたものの方が飲みやすいことも覚えておくといいだろう。なお、スーパー・マーケットで売られる、高価な「Fine Wine」(20ポンド以上)の中には、長期熟成型で飲み頃を迎えていないワインが少なくないので、ヴィンテージ(収獲年)を確認して飲むこと。高価だからおいしいはずと思いがちだが、そういったワインには長期間寝かせることによって醍醐味が味わえるものが多いかわりに、若すぎるうちに飲むと、渋みや酸味がきつく飲みづらいものがあるので注意が必要だ。それに対し、手頃な価格(20ポンド未満)の商品は、飲み頃を迎えているものが多く、美味しく飲める。

ところで、ワインを購入する際に、英国で身分証明書の提示を求められて驚いた方もおられると思う。英国では18才未満の未成年にアルコールを売った場合、店舗側に罰金・罰則が科される可能性があるため、売り手が慎重になるのも無理のないこと。日本人は若く見られがちなので、ワインを購入する際にはパスポートなどの写真つき身分証明書を持参したほうが安心できる。

世界のワインが集まる英国。手頃な価格で、驚くほど美味しいワインが手に入ることも珍しくない。ご友人、職場のご同僚、あるいはご家族で、存分に楽しんでいただきたい。

©amandaakokhia

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。
e-mail: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。


10ポンドで買えるおススメ赤ワイン

シャトーメオム・シュペリュール Château Méaume Supérieur 2021/22
Majestic £9.99

フランス、ボルドー産。持続可能な農業を営み、古代伝統と近代技術を組み合わせることによって、素晴らしいワインを生み出している。

【ブドウ品種】88% メルロMerlo種、10%カベルネ・フランCabernet Franc種、2%カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignon種。
【特徴】ミディアム=ボディ。角のとれたタンニンと滑らかなフィニッシュを持ち、ジューシーで、カシスの果実香味豊かな赤ワイン。アルコール度13.5%。
【料理との相性】ほんのりと甘みを感じさせるこのボルドーワインは、グリルしたラム・チョップやビーフ・ステーキといった肉自体の味を残すシンプルな料理方法の赤身肉料理と合う。また、チェダー・チーズCheddar cheeseやドライ・ジャックDry Jackのような硬質のチーズとの相性もよい。

ラモン・ビルバオ、リオハ・クリアンサ Ramon Bilbao Rioja Crianza
Tesco £9.75

スペイン、リオハ産。リオハを代表するワイン・メーカーのひとつ。畑ごとにブドウの熟成度を確認しながら収穫し、畑ごとに醸造する代表的なクリアンサ(最低2年間熟成させた赤ワインのこと)を造り出している。

【ブドウ品種】100%テンプラニーリョTempranillo種。
【特徴】ミディアム=ボディ。スグリや野生のイチゴを思わせる果実味で、ふくよかなタンニンをもつ。フルーティな味わいと樽香のバランスがよい。アルコール度13.5%。
【料理との相性】特に、地元でレチャルLechalの名で親しまれるローストした柔らかいラムの料理や、コチニーヨCochinillo(ローストした柔らかいポーク)とは格別の相性。羊乳で作ったマンチェゴManchegoやイディアサバルIdiazábalのチーズで締めくくりたい。

エラスリス・エステート、ピノ・ノワール Errazuriz Estate Pinot Noir
Waitrose £8.99

チリ、アコンカグア産。有名なベルリン・テースティングでフランス勢やカリフォルニア勢の銘酒を打ち負かしたヴィニエド・チャドウィックが率いるエラスリス。様々な品評会で受賞している。

【ブドウ品種】100%ピノ・ノワールPinot Noir種。
【特徴】数年使用した樽で8ヵ月間熟成。太平洋からの冷涼な風の恵みを利用した爽やかな飲み口。イチゴ、チェリー、そしてスミレの豊かな香味を持つ芳醇なワイン。タンニンはソフトで、わずかに樽の芳香も呈す。アルコール度13.5%。
【料理との相性】ポークとの相性がよい。特に、豚肩ロースのコンフィやハンバーグ、ソーセージ、パテ類など。

アラルディカ・バルベラ・ダスティ Araldica Barbera d'Asti DOCG 2021
Majestic £9.99

イタリア、ピエモンテ州産。イタリアには、このワインのようにブドウ品種の後に地名を明記するワインが多い。この場合、アスティで造られたバルベラということになる。バルベラ種は、ピエモンテ州のブドウ作付面積のおよそ3分の1を占めるポピュラーな品種で、天候による影響が比較的少ないために、毎年品質の高いワインに仕上がるという特徴がある。

【ブドウ品種】100%バルベラBarbera種。
【特徴】スパイス、赤いチェリー、赤いプラム、ココアといった芳香を呈すフルーティーで滑らかなワイン。アルコール度14.5%。
【料理との相性】サラミやプロシュート(生ハム)などの前菜、トマトソースパスタ、マルゲリータピザ、牛やラムの肉など、トマトを使った典型的なイタリア料理によく合う。

シャプティエ・コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ Chapoutier Cotes Du Rhone Villages
Tesco £11

フランス、ローヌ川流域産。ローヌで最も有名な生産者。1808年ローヌの銘醸地タン・エルミタージュに創業してから一貫して家族経営を貫く。ビオディナミ農法への取り組みも早く、感動的なワインを造る。

【ブドウ品種】シラーSyrah種、グルナッシュGrenache種。
【特徴】チェリーや黒スグリのような黒系果実の果実香味にスパイスやハーブが加わる凝縮した味わいのワイン。このワインは、ローヌ地方のベーシックなワインだが、さすがの出来栄え。アルコール度14.5%。
【料理との相性】ゲーム(狩猟肉)を使った料理に合う。例えば、ゲームのパテ、カスレ(ソーセージと白インゲンの煮込み等)、グリル/ローストした赤身の肉、キノコとタイムを使ってグリルした鴨、グリルしたソーセージなど。

アルバート・ロード、ピノ・ノワール Albert Road Pinot Noir
Waitrose £9.99

南アフリカ、ウェスタン・ケープ産。大西洋の風を受ける冷涼なウェスタン・ケープで造られたワイン。

【ブドウ品種】100%ピノ・ノワールPinot Noir種。
【特徴】フランス産オークを使って丁寧に造られた早期消費用のカジュアルなワイン。ミディアム=ボディで、ソフトなタンニンを持ち、赤いベリー類、赤いチェリー、野イチゴの香味を呈す爽やかなワイン。アルコール度13%。
【料理との相性】スモーク・サーモンをあしらったサラダ、ハムやサラミ、ロースト・チキンなど。


JEMCA
Kyo Service
J Moriyama
ジャパンサービス
らいすワインショップ
Atelier Theory
奈美デンタルクリニック
Toptour
 

10ポンドで買えるおススメ白ワイン

オリヴェール・デュボワ、ムスカデ Oliver Dubois Muscadet 2023
Majestic £9.99

フランス、ナント地域産。ナント地域は、ロワール川が大西洋に流れ込む河口付近に位置する。フランスで生牡蠣に合う白ワインといったらムスカデMuscadetだ。ムスカデは、ムロン・ブランMelon Blancまたはムロン・ドゥ・ブルゴーニュ(ブルゴーニュのメロンという意味)とも呼ばれ、このナント地域で造られている。

【ブドウ品種】100%ムスカデMuscadet種。
【特徴】酸味が高く、ライト=ボディで、青いリンゴやライムといった緑色系果実香味の繊細な風味を呈す。早飲み用。必ず、キリっと冷やして飲もう。アルコール度12%。
【料理との相性】カニ、エビ、牡蠣、ウニ、バイ貝などの魚介。フランスでは年末年始などの冬のパーティーには、「とりあえずの1品」として必ず生牡蠣が登場する。レモンやエシャロット入りのワインビネガーを添えて楽しみたい。なお、フランスのクリスマスでは生牡蠣やチキンを食べ、ターキーは食卓にのぼらない。

アルタ・イタリア・ピノ・グリージョ・トレンティーノ Alta Italia Pinot Grigio Trentino
Waitrose £9.99

イタリア、トレンティーノ=アルト=アディジェTrentino-Alto Adige地方産。アルプス山脈の麓の丘陵地帯に位置する。ピノ・グリージョはイタリアで最も人気の高いワインの1つ。このワインはヴィーガンの方々にも安心して飲んでいただける。

【ブドウ品種】100%ピノ・グリージョPinot Grigio種(フランスでは、ピノ・グリPinot Grisと呼ばれるが、造られるワインのスタイルは大いに異なる)。
【特徴】辛口。白桃、メロン、レモン、花、ショウガ、梨の果皮、マルメロの果実香味を呈す、アロマティックで、口当たりのスムーズなワイン。アルコール度12.5%。
【料理との相性】アペリティフに最適。また、クリームを使ったパスタや、甲殻類の料理とも合う。

マークス&スペンサー、ロ・スクード・ソアーヴェ・クラッシコ M&S Lo Scudo Soave Classico 2022
Marks & Spencer £7.50

イタリア、ヴェネト州ソアーヴェ産。イタリアで最も人気の高いもう1つのワイン。ソアーヴェは、ロミオ&ジュリエットの舞台となったヴェローナの東に位置するワイン産地。ソアーヴェ全域で生産されるブドウを使って造られるワインは「Soave DOC」とラベル表示され、また、石灰岩と粘土、火山岩で組成される丘陵地帯で産出されるブドウで造るワインは「Soave Classico DOC」と表示され、レベルが高い。このワインは後者。

【ブドウ品種】100%ガルガネーガGarganega種。
【特徴】ミディアム=ボディで辛口。洋ナシ、レモン、生ハーブ、緑のリンゴ、濡れた石、アーモンドの香味を呈すフレッシュなワイン。アルコール度12.5%。
【料理との相性】ムール貝の白ワイン蒸し、甲殻類を使ったパスタやリゾット、茹でたエビやカニ、ローストチキン、レモンを絞った白身の魚のグリルなど。

マッド=ハウス、ニュージーランド・マールボロ・ソーヴィニョン・ブラン Mud House New Zealand Marlborough Sauvignon Blanc
Sainsburys £10

ニュージーランド、マールボロMarlborough地域産。ソーヴィニョン・ブランの生産地として世界で最も有名な地域。この生産者は過去に何度も賞を取得し、優れたソーヴィニョン・ブランを造る。

【ブドウ品種】100%ソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc種。
【特徴】柑橘類の爽やかな風味にグアヴァやトマトの葉、パッションフルーツのニュアンスが混じる。酸味が高く、豊富な果実香味とのバランスがとれたジューシーなワイン。後味が長い。アルコール度12.5%。
【料理との相性】ロースト・ターキー/チキン。甲殻類を使った料理。羊乳を使ったチーズ。

ハニー・ドロップ、シュナン・ブラン Honey Drop Chenin Blanc 2024
Majestic £9.99

南アフリカ、スワートランドSwartland地域産。ケープタウンの北にある広いスワートランド地区は、かつては低価格ワインの産地とみなされていたものの、素晴らしい変容を遂げて、今では革新的な高級ワインの生産の中心地となっている。

【ブドウ品種】100%シュナン・ブランChenin Blanc種。南アで最も広く栽培されている白ブドウ品種。辛口から甘口まで造ることができる。
【特徴】シュナン・ブランの古い樹を使って、濃密なワインに造り上げている。パイナップルやトロピカルフルーツ、モモといった有核果実の風味と木樽のヴァニラ香を呈す、円熟した滑らかな口当たりの飲みやすいワイン。アルコール度12.5%。
【料理との相性】豚肉料理。ただし、醤油を使った豚肉料理とは合わない。

トーレス、ヴィニャ・ソル Torres Viña Sol
Tesco £7.75 / Waitrose £7.99

スペイン、カタルーニャ州(州都はバルセロナ)産。スペインで最も有名な生産者の一人。ベーシックなワインから超高級なワインまで幅広く生産する。このワインはヴィーガンの方々にも安心して飲んでいただける。

【ブドウ品種】パレリャーダParellada種、ガルナッチャ・ブランGrenache Blanc種。
【特徴】温度管理されたステンレス・スチール槽を使って果実香味を引きたてて造られている。早期消費用。爽やかな柑橘、白い花や草の香りを呈す。アルコール度11%。
【料理との相性】蒸した甲殻類、タパス、ハム、グリルした白魚、チキン、豚肉を使った中華料理などと合う。


週刊ジャーニー No.1372(2024年12月12日)掲載