●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
eVisaとは?
eVisaに切り替えられなければ英国に合法的に住めなくなるのか?
不安にかられている在英邦人の方々に現時点で弊誌が知り得たことをお届けする。
パニックになる必要なし!
働く、学ぶ、家族を支える、あるいは余生を送る――英国での滞在目的は人それぞれ。だが、日本国籍を有する我々が英国で暮らしていくにあたり、共通してなくてはならないものがある。
滞在許可証、いわゆるビザだ。
好むと好まざるにかかわらず、合法的に滞在するには、移民局を管轄するホーム・オフィス(内務省)から発行された有効なビザの保持が常に求められることはいうまでもない。今回のホーム・オフィスからの通達は、そうした有効なビザをすべてデジタル化する→オンラインでの管理を目指すというもの。デジタル化されたビザは「eVisa」と呼ぶと定めている。
2023年10月30日にリリースされた文書(*1)の中でeVisaの説明がなされているが、eVisaは別名「Online immigration status」、強引に訳せば、オンライン化された移民法上の滞在資格ということになるだろうか。通達は、日本に里帰りした後などで英国に再入国する際、滞在資格を示すために旧いパスポートに貼られたステッカーや、旧いパスポート上のスタンプなどを提示している場合、それらの代わりとなるeVisaを2024年12月31日までに取得するように求める内容だった。
こう聞いて、今年いっぱいのうちにeVisaに切り替えられなければそれ以降は不法滞在となるのでは、と強い懸念を抱いた人も多かったたことだろう。また、eVisa申請を却下されたら英国にいられなくなるのでは、と心配している人もいると想像する。
まずは次の3点を理解しておきたい。
- ●2024年中にeVisaへの切り替えが完了しなくても、不法滞在者扱いとはならない。しかし、英国への再入国時に問題となる可能性が高いため、早めの切り替えを推奨する。
- ●eVisaへの切り替えに際して、現在保持しているビザ(無期限滞在許可証=いわゆる永住権など)の内容に変更が生じることはない。
- ●eVisaへの切り替えの申請自体は無料。ただし、切り替え手続きの中で、本人であることを示す顔写真撮影・指紋採取などを含む「面接」をホーム・オフィスから委託された民間のビザセンターで受ける必要があり、この費用として0ポンド~299ポンドかかる。
詳しくは
で述べるが、4週先までの予約が可能。ビザセンターの場所、日時、時間帯により料金が異なる。できるだけ先の予約で、なおかつ昼間のすいている時間帯であれば無料で面接を受けられるスロットを予約する幸運に恵まれる確率が高い。予約時間帯に関する情報は毎日更新される。本稿執筆時、ロンドン市内では143ポンドで予約できるところが多いと見受けられた。eVisaは、ホーム・オフィスが管理する、英国に滞在する全ての外国籍保持者についての一千万ページに近いぶ厚い「リスト」で、そのうちの1ページにあなたの滞在資格(永住権の場合は「settled」と記される)が本人の顔写真とともに掲載されている様子を思い浮かべると分かりやすいかもしれない。そのページを開けば(アクセスすれば)、雇用主や、賃貸物件の大家もあなたのビザの内容を確認することができるという仕組み。
また、eVisa取得後は英国外に旅行する際、英国への再帰国に備えて旧いパスポートなどを持ち歩かなくともよくなる。加えて、eVisaは盗まれることも紛失することもなく、英国への再入国時、もし、移民局の係官がビザを確認する必要ができたとしてもスムーズに作業が行われると、ホーム・オフィスはその利点を強調する。
しかし、いざ、eVisaに切り替えようとすると、途方にくれる人も少なくなさそうだ。
BRP保持者のeVisaへの切り替えについては次号でご紹介するとして、今号では、滞在資格を示すために旧いパスポートに貼られたステッカーや、旧いパスポート上のスタンプなどを提示している永住権保持者を対象に話を進めていきたい。
※1 https://www.gov.uk/guidance/online-immigration-status-evisa
eVisa 申請に挑戦!
- ★永住権は持っているけど、英国への再入国時に旧パスポートを提示している。
- ★BRPとかNTLとか、ちんぷんかんぷんだけどインターネットは使える。
- ★オーム・オフィスとの連絡用に使える自分のEmailアドレスは持っている。
ー以下3項目にあてはまる人向け!ー
申請手順
ステップ1:No Time Limit (NTL)の Biometric Residence Permit (BRP)を入手
- ❶ UKVIのホームページにアクセス→オンラインでの作業
- ❷ オンライン申請は合計6段階→オンラインでの作業
- ❸ ビザセンターでの「面接」→面接
ステップ2:eVisa申請
ステップ1:No Time Limit (NTL)の Biometric Residence Permit (BRP)を入手する
❶ UKVIのこのページにアクセス!→オンラインでの作業
下記のページからオンライン申請を始める!
Upgrade, update, replace, transfer or switch your immigration document
https://visas-immigration.service.gov.uk/product/biometric-residence-permit-replacement-service?_ga=2.186287022.682199569.1717991669-523497333.1717991669
※UKVIとは…「UK Visas & Immigration」の略。ホーム・オフィス内で移民に関する業務を執り行う。本稿でいう「移民局」はこのUKVIのこと。
ここがポイント
● ご承知の通り、「永住権」は正確にいうと「無期限滞在許可証(Indefinite Leave to Remain=ILR)」。念のためにおさらいすると「indefinite」は無期限、「 leave」は許可証、「 remain」はとどまる/滞在すること。ILRから一足飛びにeVisaを申請することはできない。まずは、ILRをデジタル版の無期限滞在許可証といえる、No Time Limit (NTL) Biometric Residence Permit (BRP)に切り替える必要がある。NTL BRPは、「タイムリミットのない、生体認証情報を含む滞在許可証(バイオメトリック・レジデンス・パーミット)」を意味する。
❷ オンライン申請は合計6段階!→オンラインでの作業
\申請中に「ひと休み」もできるし、見直し、修正もできる!/
最初の2段階で、オンライン上の質問に答えていく。
\「面接」に備えて準備を進める!/
残りの4段階で「面接」予約まで進める。
3. Documents
4. Declaration
5. Pay
6. Further actions
ここがポイント
1. Start
●ここで聞かれるのは、連絡用のEmaiアドレスのほか、英国内から申請しているかどうかなど。
●「Do you have an immigration adviser based in the UK?」と聞かれるが、専門家に依頼している場合意外、例えば知人の助けを借りていても自分のEmaiアドレスを使用していれば「No」で良い。
2. Application
● 申請のメイン部分。「戦争犯罪に関与したことがあるか」「テロリストへの支援を行ったことがあるか」など、聞かれること自体に驚くかもしれない質問項目も含まれる。筆者が申請した際、「?」とつまった質問部分を以下に挙げておこう。
● Passport detailsの「Issuing authority」
現時点で有効な日本のパスポートで顔写真が貼ってあるページの「発行官庁/Authority」に記してある文言を記入する。英国内でパスポートを更新した場合は、「Embassy of Japan in the United Kingdom」、「Consulate-General of Japan in Edinburgh」などと記載されているはず。
● Convictions and other penalties
スピード違反(speeding)については、正直に申告するべき。専門家によると、スピード違反のほか、免許取り消しといった申告がNTL BRPの審査に影響を与えるとは考えづらいという。隠し立てする=虚偽の申告をすることは避けるべき。
● Your Home Office reference numberの「Do you have any Home Office reference numbers?」
現時点で、ホーム・オフィスの判断を待っている申請案件が別になければ、「No」で良い。
3. Documents
● 申請にあたり、どういった書類が必要か示される(下のコラム参照)。現在有効なパスポート、現住所を証明する書類のほか、滞在年数が長いほど提出する書類枚数は増える!
● 書類をホーム・オフィスのサイトにアップロードするのは「 6. Further actions」での作業になる。
4. Declaration
● 申請内容に虚偽はないことなどを誓う書面を印刷して署名し、アップロードする必要がある。用紙は3枚あり、1枚目は必須。2・3枚目は各個人の婚姻事情や経済支援の有無などにより、必要かどうか決まる。申請完了後にもこのフォームを印刷する機会は用意されている。
5. Pay
● ここで「No payment required」(無料)の表示が現れる。この次の段階に進むと、申請内容を修正・変更することができなくなるので、十分見直しを行うこと。次の段階に進むボタンを押すと、申請が完了したことを示す画面が現れる!
6. Further actions
● 「3. Documents」で示された書類のアップロード作業、「面接」の予約へと進む。
❸ ビザセンターでの「面接」→面接
予約の場所と日時で料金が変動!
書類のアップロード(代行サービスもあり。 で詳しく述べる予定)と、「面接」の予約をhttps://www.ukvcas.co.uk/home-internalより行う。登録したEmailアドレスと❶で定めたパスワードが必要。
ステップ2:eVisa申請→オンラインでの作業
❹ No Time Limit (NTL) Biometric Residence Permit (BRP)が取得できた旨のメールがホーム・オフィスから届いたら、そこにeVisa申請ページに進めるリンクが表示されているはず。あとは指示にシンプルに従えばOK。
ここがポイント
● ホーム・オフィスのウェブサイトによると現在、NTL BRPの取得にかかる期間は、申請から最長で6ヵ月。この申請自体は無料で、ホ-ム・オフィスがお金ほしさにeVisaへの切り替えを推進しているわけではないと思って良さそうだ。
● インターネットも使えない、代わりに申請してくれる家族や知人もいない、という場合は、専門家の力を借りるのも一案。日本語で対応してもらえる弁護士事務所の一例としてTFC Legal (TFC総合法律事務所)を挙げておく。
代表:藤岡輝行氏 このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
80 Coleman St, London EC2R 5BJ
Tel: 020 7614 5830 (office)
NTL BRPの申請サポート費用は£250+VAT(これ以外に、「面接」時の費用が別途かかる)。また、eVisa申請サポート費用は£200+VAT 。
申請中、「ひと休み」してもOK!
● 申請作業は一気に終える必要はない。何度でも、「ひと休み」できる(申請作業再開までの猶予期限は10週間)。申請完了前に申請ページを離れようとすると、「Application saved」の画面に移行する。ここで、申請を再開する時のためのリンクが表示される。「Email this link」の緑色のボタンを押すと、【1. Start】で登録したEmaiアドレスあてに送られてきて、とても便利!
● 申請は中断できるほか、途中で申請内容を確認したり、修正したりすることが自在にできる。見直しながら申請を進めることをお薦めする。
アップロードに必要な書類って?
必須
● 現在有効であるパスポートの顔写真が貼ってあるページ。
● 英国の現住所が証明できる書類(銀行からの書類、光熱費関係の請求書など)。
重要
● オリジナルの(一番最初に発行されたもの)スタンプやステッカーが確認できるパスポート、RON 60 と呼ばれるホーム・オフィス発行のレターなど。
● 永住権取得後に発行されたすべてのパスポートの顔写真が貼ってあるページと英国滞在が許可されていることを示すスタンプが押されているページ。
※過去のパスポートのいくつかを紛失したという場合、ないものはない!ある分を提出することになる。
● 現時点での滞在許可を示すもの(現在有効であるパスポートのページなど)。
● 永住権取得後、英国に継続して居住していることを示す書類(1年につき1通でOK。下記はその例)。
- ー カウンシル・タックスの請求書
- ー 銀行からの書類
- ー 光熱費関係の請求書
- ー NHSからのレター
- ー GPからの署名入りレター
- ー 学校に在籍してことを示すレター
- ー 雇用主からのレターなど
※在英40年、50年ともなると、住所を証明する書類が何もないという年もあるだろうが、これもないものはない! できるだけかき集めて提出するしかない。
● 【4. Declaration】で、印刷した上で署名するように求められた宣誓書。
ビザセンターでの「面接」、£0のスロットもあり!
● 本稿では「面接」と便宜上呼んでいるが、ホーム・オフィスの審査官との面談があるわけではない。ホーム・オフィスから委託されて業務を請け負っているビザセンター(正確には「サービス・ポイント」)で、顔写真の撮影、指紋採取、現在有効なパスポートの顔写真が貼られているページのスキャンが行われる。
● 各ビザセンターごとに、「面接」可能な日時と料金が提示される。英国内のどのビザセンターを選んでも良い。4週間後の予約が可能で空き情報は毎日更新される。急いでいないなら、できるだけ先の日を選ぶと、無料のスロットを予約できる確率があがる。
あわせて読もう
週刊ジャーニー No.1350(2024年7月11日)掲載