ホンネで語る!
現地校の教師生活

前編

なぜ英国で小学校教師に?

英国の現地校での教師生活について、実際に教鞭をとられている現役教師の方々にお集まりいただき、苦労や喜び、教育制度の不満などを熱く語っていただきました(全2回シリーズ)。
参加者のプロフィール
Aさん(40代)/在英20年以上。教職歴19年。ロンドン北部の小学校勤務。
Bさん(30代)/在英約10年。教職歴10年。ロンドン北部の小学校勤務。
Cさん(20代)/在英20年以上。教職歴2年。ロンドン郊外の小学校勤務。

教員不足とビザ問題

― イギリスの現地校(小学校)で、日本人が教師を務めるのは珍しいことだと思いますが、みなさんはなぜイギリスで教職を選んだのでしょう?

A
私は年子の3人きょうだいで、一番上なんです。だから、「みんなの面倒をみる」という役割が小さい頃からずっとあって。4月生まれなので、学校でも一番お姉さんだったんですよ。なので、高校生くらいのときには、自然に「先生になりたい」と思っていました。

― 日本で教師になろうとは思わなかったのですか?

A
実は小さい頃にイギリスに住んでいて、高校も日本でインターナショナル・スクールに通っていたんです。インターナショナル・スクール出身だと、進学できる大学や学科が限られていて、大検を受けないと自由に大学を選べないので、日本で先生になるのは難しくて…。「先生になるなら海外」ということで、昔いたイギリスに戻ってきました(笑)
B
私は小さい頃から水泳を習っていて、高校生のときにインストラクターとして水泳キャンプに行ったんです。小さな子どもたちも参加していて、一日中彼らに泳ぎを教えたり接したりしているうちに、可愛くてたまらなくなって。それを毎年繰り返して、「もう先生しかないな」と思うようになりました。

― イギリスを選んだ理由は?

B
私はイギリス生まれなんです。2歳の頃に日本に引っ越したんですけど、大学はアメリカを選びました。

― えっ、アメリカですか? イギリスではなく?

B
イギリスは天気が悪いから、行きたくなかったんです(笑)。ボストンの大学に進学して教員資格をとって、実習もしたけど、就労するにはビザが必要で…。教職でビザをとるのはなかなか難しいので、日本に戻ってインターナショナル・スクールで教えた後、イギリスに来ました。

― 結局、渡英されたんですね(笑)

B
自分の生まれた国を知りたかったんですよね。小さい頃に日本へ引っ越したので、イギリスでの記憶は全然なくて。英国籍を持っているので、ビザの問題もなかったし。
A
海外で先生になるには、ビザをとるのが大変ですよね。私が留学していたときは、教員が足りない時代だったんです。当時はジャマイカとか南アフリカでも教員募集をかけるくらいだったんですよ。だから私の場合、ロンドンの大学を卒業後、現地採用ですんなり仕事が決まりました。「実はビザないんです…」と学校側に言っても、「すぐ手続きするので大丈夫!」って(笑)。学校がある地区のカウンシルが全部やってくれて、お金も一切払わなかったなぁ(笑)
B
へぇーそれはすごい!
A
教員不足が本当に深刻だったのと、学校側も「非ヨーロッパ人」を雇った前例がなかったから、ビザ手続きの大変さがわかっていなかったんだと思う。今だったら考えられないけど。
C
今もまた教員不足が問題になっていますよね。イギリス国内では人材が足りないので、オーストラリアやニュージーランド、カナダとか、コモンウェルスの国からも教職を求めて人が来ているけど、結局ビザがとれずに帰国することが結構多いみたいです。

「日本では教員資格をとれなかったので、イギリスに来ました」と話すAさん。

― もしかして、Cさんもイギリス生まれですか?

C
そうです、ずっとイギリスです。私の場合は中学生の頃、職場体験で幼稚園に行ったのがきっかけです。「将来は人を助ける仕事に就きたい」と思っていたんですが、幼稚園で子どもたちと一緒に過ごして「楽しいな、面白いな」って感じて。それからはボランティアをしながら、最終的に小学校の先生になることを決めました。

― イギリスで生まれたり育ったりした経験のある人が、イギリスや海外で教員資格をとって、現地校の教師になるケースが多そうですね。

A
そうですね。日本とイギリスでは教員資格の制度が違うんです。日本は幼稚園と小学校の先生は別の資格ですが、イギリスは一緒。英語が必須だし、イギリスの教員資格に値する資格が必要なので、日本人の小学校教師って全然いないんですよ。先生になりたての頃、教育委員会の人に「何か困っていることはありませんか?」と聞かれて、思わず「小学校の先生をやっている日本人の友達が欲しいです!」って。お互いの悩みとか相談したかったんですけど、連絡なし(笑)。中学校では日本語の科目が選べるので、日本人の先生もいるみたいです。
C
だからロンドンに3人もいるなんて、本当にすごい!
A
昔、日系情報紙に「小学校で教えている日本人の先生はいませんか?」って、告知を出したこともありました。もちろん、誰からも連絡は来ませんでしたけど(笑)
BC
あははっ(笑)

日本、米国、英国の3ヵ国の教育事情を知るBさん。

教科書のない授業

A
「先生はハーフタームや夏休みとか、休みが多くていいね」とよく言われるんですけど、実際にはハーフタームも週末も仕事でつぶれちゃうんです。それに有休がないので、旅行もホリデーのピーク時に行くから飛行機代とか一番高いシーズンになっちゃう。
C
せっかく教職に就いても、現実を知って逃げ出してしまう人が多くて…。
B
そう! 1年経たずに消えたりする。あとは、インターナショナル・スクールへ移ったり。
C
インターナショナル・スクールは世界中にあるし、イギリス内の公立校の数より多いんです。それでいてお給料はいいし、1クラスの人数も少ない。だから最近は、ドバイや中国、東南アジアにあるインターナショナル・スクールに転職する人が増えてます。
B
「NQT」制度も離職率が高くなる原因のひとつですよね。

 

―NQTって何ですか?

A
「Newly Qualified Teacher」の略で、教育委員会や管理職の先生方が授業を見学したり、やっていることをチェックしたりして、教師としての能力を評価されるんですよ。それに合格して、やっと正規の教師(Fully Qualified Teacher)になれます。
C
今はその期間が1年なんですけど、今後は2年に延長するという話があって、就職してもNQTの間はお給料も安いので、先生を目指す学生さんも遠のいていくばかりです。

―週末も仕事とのことですが、何をされているんですか?

A
一般的にイギリスの公立小学校には、教科書がないんです。各学校や地域のカラー、校長先生の考え方によって、指導方法、宿題の出し方や量も異なります。でも1年間で教えなきゃいけないカリキュラムは決まっているので、それをどうやって教えるのか、子どもたちに理解させるのか、そのやり方は学校次第であり、先生次第なんです。だから、先生はクリエイティブじゃないとやっていけない。それが一番大変ですね。
B
でも私は、その自由なところが好きですね。強制されて「つまらないな」と思いながら教科書通りに教えると、そういう気持ちは子どもたちにすぐにバレちゃうんですよ。
A
確かに。色々なやり方を試せるのはいいですね。その日に教えた方法で身につかなかったら、「じゃあ、明日はこの方法でやってみようかな」って。でも仕事の量は半端じゃない。そうした授業のための準備を全教科しないといけないから、週末は翌週の準備でつぶれます(苦笑)
B
そう! 1時間の授業のために、5時間も準備に費やしたり…。時々、「私、何をやってるんだろう?」って自分がバカみたいに思えてくる(笑)
A
わかる、わかる! たとえば、「English Literature」(いわゆる国語)の時間に「三匹のこぶた」を取り上げようとしたとき、「三匹のこぶた」といえば3つの家…。それなら理科の時間に、わら、木、レンガをくっつける実験をしようかな…とか、子どもが興味を持つように授業内容を関連づけて考えるんです。すごく時間がかかる。
C
教え方も内容も決まっていないので、ユニークな方法にチャレンジできますけど、その分、アイディアを練ったり、準備したりするのが大変!
B
私は学年主任なんですけど、同じ学年の先生方とチームを組んでいるので、たとえば3人の先生がいたら、みんなそれぞれやりたい内容があって、それをまとめるのも苦労しますね。「私は『三匹のこぶた』じゃなくて、どうしても『赤ずきんちゃん』をやりたい!」と言い出す先生がいたり…。
A
みんな自分のこだわりを持っていて、自己主張もしっかりするからね(笑)

「全力ですべてに取り組むので、力の抜きどころがわからずに疲れる」と話す、教師2年目のCさん。

週刊ジャーニー No.1053(2018年9月20日)掲載

「現地校の教師生活」後編のテーマは、「日英の小学校、どう違う?」です。来週号をお楽しみに!
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