
■ クリスマスが終わった後にやって来る、次のイベントと言えばバレンタインデー。今年はどんなことをして過ごすか、何を贈るか、悩んでいる人もいるのでは? 今回は、バレンタインデーの起源や歴史、現代英国人の意識を探りながら、過ごし方のアイディアをご提案します!
●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
バレンタインデーってどんな日?
世界的にすっかり定着した冬のイベントのひとつ、バレンタインデー。日本ではチョコレートと共に愛の告白をする日として知られているが、英国では夫婦や恋人など「大切な人」に想いを伝える日。カード文化が根強いため、メッセージをつづったカードを贈り合うのが一般的で、花束(とくに赤いバラ)を渡す男性も多い。
バレンタインデーの起源は、3世紀頃のローマ帝国にさかのぼる。当時の帝国は多神教で、「ローマ神話」に登場する多様な神々を信仰していたため、増えつつあったキリスト教徒は「異端者」であり、迫害を受けていた。ところが、戦争好きのローマ皇帝クラウディウス2世が、強兵政策のひとつとして「兵士の結婚」を禁止したことで、風向きが変わる。「恋愛にうつつを抜かさず、国土拡大のために励め!」とばかりの非情な法律を嘆く兵士や恋人たちを不憫に思ったキリスト教徒のウァレンティヌス司祭は、秘密裏にいくつもの結婚式を執り行い、深く感謝されたという。
しかし、密告により司祭は捕らえられ、改宗を拒んだために絞首刑となる。その処刑日が2月14日で、奇しくもローマ神話における「家庭と結婚の女神」の祝祭日でもあったことから、ウァレンティヌス司祭は「恋人たちの守護聖人」として、キリスト教の普及とともに広く敬われれていった。ローマ帝国においてキリスト教が国教と定められたのは、それから100年以上も後のこと。そして、2月14日がローマ教皇によって「St.Valentine's Day」(ウァレンティヌスの英語名がバレンタイン)に制定されたのは、さらに100年後の5世紀末のことである。
ハムレットも愛を捧げていた?
本来は「聖人の日」である2月14日だが、バレンタインデーとロマンチックな愛が結びついたことが確認できる、英国最古の記録は、「カンタベリー物語」を執筆したジェフリー・チョーサーによる詩集「Parliament of Fowls」(1382年)。当時15歳だったイングランド王リチャード2世の婚約が、バレンタインデーに結ばれたことを運命的だと祝っている。
また、「Valentine」が「大切な人・恋人」という意味にまで発展したことが確認できるのは、1415年にアジャンクールの戦いで敗れて捕虜となった、フランス・オルレアン公のラブレター。ロンドン塔から故郷の妻宛てに「My very sweet Valentine」と書き送っている。さらにシェイクスピアの悲劇「ハムレット」にも、オフィーリアがハムレットを思いながら「明日はバレンタインデー、朝早くから窓辺に立って、あなたを待ちましょう。あなたのバレンタイン(恋人)になるために」とつぶやく場面がある。
商業的な側面に目を向けてしまいがちだが、意外と長い「愛の歴史」があるバレンタインデー。今年は身近にいる大切な人に、感謝の気持ちを伝えてみては?
英政府による2024年バレンタインデー実態調査
Q1 バレンタインデー、どう過ごした?

♥ とくに何もしなかった 51%
♥ パートナー/恋人と自宅で手料理を食べた 21%
♥ パートナー/恋人と自宅でテイクアウェイ料理を食べた 6%
♥ パートナー/恋人と外食した 6%
♥ 友人と過ごした 5%
Q2 パートナー/恋人に贈り物を渡した?

Q3 贈り物の内容は?

♥ カード 42%
♥ チョコレート 25%
♥ 花束 20%
♥ アルコール(シャンパン、ワインなど) 7%
Q4 贈り物の金額はどのくらい?

Q5 2025年に予定している、バレンタインデーの平均予算は?

Q6 前年と比べて、出費は減る? 増える?

♥ 減らしたい 49%
♥ 増えると思う 39%
♥ ほぼ同額にする 12%
Q7 減額する理由は?

♥ バレンタインデーよりも他の目的のために貯金したいから 49%
♥ 昨年よりも収入が減ったから 28%
♥ 物価が上昇したから 15%
今年のバレンタインは金曜日! バレンタインデーの過ごし方 アイディア6選
贈り物にはカードを添えて

バレンタイン・ギフトの王道はチョコレートや花束。甘いものが苦手なら、食後に一緒に楽しめるちょっと贅沢なワインもいいだろう。渡すときには、メッセージ・カードを忘れずに! 丁寧な手書きのひと言が添えられるだけで、特別感と幸福感がアップ。
ロマンチック映画をシネマで

たまにはシネマで、夜にロマンチックな映画を観るのはいかが? 気分が盛り上がること間違いなし!ちょうど2月13日より、人気ラブコメ映画「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズの9年ぶりとなる新作(第4弾)が上映スタート。
人気のキャンドルライト・コンサート

昨年から英国でも瞬く間に人気となった、キャンドルライト・コンサート。揺らめくキャンドルの灯に囲まれた空間で聴くクラシック音楽の生演奏は、まさにバレンタインデー向き。ロンドンの教会や大聖堂などで開催しているので、チェックしてみて!
https://feverup.com/en/london-on/candlelight
夢のような3コース・ディナー

いつもと違った食事を楽しみたいなら、天井画が美しいグリニッジの海軍退役軍人用の旧食堂「ペインテッドホール」で、バレンタインデーの夜だけの特別な3コース・ディナーがおすすめ。価格は1人125ポンド。申し込みは11日午後5時まで。
https://ornc.org/whats-on/valentines-dinner-in-the-painted-hall/
奇才建築家宅のトワイライト・ツアー

ミュージアム・歴史好きには、ホルボーンにある18世紀の建築家ジョン・ソーンの邸宅で開催される、バレンタインデー・トワイライト・ツアーが一考の価値あり。奇異な空間がライトアップされて、さらにパワーアップ。1人35ポンド。
https://www.soane.org/
期間限定アフタヌーンティー

スイーツ好きで、特別なひとときを優雅に過ごしたい人は、バレンタイン期間限定のアフタヌーンティーもいいかも。5つ星ホテル「The Lanesborough London」では、2月14日~16日の3日間、特別アフタヌーンティーを提供(50ポンド~)。
https://www.oetkercollection.com/hotels/the-lanesborough/
週刊ジャーニー No.1379(2025年2月6日)掲載