
●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
■ サンドイッチにスコーン、フィンガーサイズのスイーツをお供に紅茶を味わい、優雅なひと時を楽しむ「アフタヌーン・ティー」。今回は、美味しさのレベルや雰囲気の良さで合格点であるのは当然のこととし、それらに加えて、ロケーションやテーマなど、ユニークでお得感のある「プラスα(アルファ)」を兼ね備えた、ロンドン内の4ヵ所をご紹介する。
ハリー・ポッターの世界観にうっとり!



Rails
020 3388 0818
1st floor of Great Northern Hotel, Pancras Rd, N1C 4TB
www.railslondon.com
料金: 一人あたり £39.50
最寄駅:King’s Cross
アフタヌーン・ティー営業時間:木-日 13:00-17:00

「スニッチ」のパッション・フルーツ・トリュフ、「バタービール」のパンナコッタ等、ハリー・ポッターのファンなら一目でわかる魔法の世界が詰まったメニューは、見ているだけでも楽しい。紅茶は「East India Company」社の茶葉を使用。時間が経っても渋くならず、最後まで美味しい。甘さ控えめでほんのりと塩味を感じさせるスコーンはプレーンとサルタナレーズン入りの2種。紅茶のおかわりは、別途料金発生。駅直結の好立地にあり、各テーブルも大きく、店内は落ち着いた雰囲気でリラックスできる。食べきれない場合、持ち帰りも可。
仏・コートダジュールの気まぐれな魅力がたっぷり!


Socca
020 3376 0000
41A South Audley St, W1K 2PS
soccabistro.com
料金: 一人あたり £35.00
最寄駅:Marble Arch
アフタヌーン・ティー営業時間: 月-土 14:30-16:00

メイフェアにある隠れ家的フレンチレストランのアフタヌーン・ティー。サンドイッチの代わりに供されるキッシュ、ブリオッシュ、ラムコロッケはワザありのラインナップ。定番のスコーンはなく、代わりに一口サイズのチョコレートシューケット(Chouquette)が楽しませてくれる。普通のシュークリーム生地よりパリっとした食感が絶妙で、ペロッと食べ切れてしまう。スイーツは甘すぎず日本人の口に合う上品な仕上がり。どれもクオリティが高く美味。残さず食べきれる量であると同時に満足感もある。追加で注文したコーヒーも無料でさらにお得感がアップ。
豪華ヨットホテルで、非日常的な雰囲気がうれしい!


Sunborn Hotel
020 3714 8111
Royal Victoria Dock, E16 1AA
www.sunbornhotels.com
料金: 一人あたり £40.00
最寄駅:Custom House(Elizabeth Line / DLR)
アフタヌーン・ティー営業時間: 毎日 12:30-16:00

カナリーワーフにドックランド、ケーブルカーやO2アリーナなど、東ロンドンの再開発の成果を示す眺めを満喫しながらくつろげる。セイボリーは、ブリオッシュ生地のミニバーガーに、ピカリリ(マスタードピクルス)入りサンドイッチ、ブルーチーズが苦手な人でも食べやすいウォルナッツ入りミニタルトとかなりのボリューム。たっぷりのクロテッド・クリームが添えられたスコーンは軽い仕上がりで、お腹に溜まらずありがたかった。ジャムは、「Tiptree」社のブラックカラントとラズベリー。定番のストロベリージャムが無くてユニーク。紅茶はトワイニングのティーバッグだが、途中で種類を変えても追加料金は不要。食べきれない場合、持ち帰りも可。なお、ヨットは固定されているので、揺れる心配ナシ。
世界の海を駆けた紅茶輸送船の歴史に思いを馳せる!


Cutty Sark
020 8858 4422
Park Row, Greenwich, SE10 9NF
www.rmg.co.uk/cutty-sark
料金: 一人あたり、カティ・サーク号への入場料込
大人£43.50
25歳以下/学生£37.50
子ども£33.50
最寄駅: Cutty Sark(DLR)
アフタヌーン・ティー営業時間: 木-日 12:00、13:30、15:00

世界遺産に認定されている海事都市、グリニッジのランドマーク的存在であるカティ・サーク号の船底をみあげるスペースに設けられたカフェで楽しむ、ベーシックなアフタヌーン・ティー。驚きはないけれど全て安定した味。スコーンは1人1つだが、ケーキはビクトリア・スポンジなど、どっしりとした重めの物が多いので、丁度いいボリューム。
訪問日時の72時間前までにオンラインでの予約が必須。カティ・サーク号への入場料とアフタヌーン・ティーがセットになっているので、母の日・父の日や誕生日など、特別な日にプレゼントするのもオススメ。
アフタヌーン・ティー プチ知識
いつ、どこで始まった?

● アフタヌーン・ティーは、1800年代中頃、現在は第15代ベッドフォード公爵アンドリュー・ラッセルが所有するウォーバン・アビーWoburn Abbey=写真=で始まった。www.woburn.co.uk
● テレビ・シリーズで有名になったダウントン・アビー同様、「アビー」といっても教会の建物ではなく、貴族の大豪邸。ロンドンから車で北北西方面へ1時間程度のところにあるウォーバン・アビーは、1953年から一般に公開されるようになったが、今は大改修が行われており閉鎖中。2026年春より再オープンの予定という。
生みの親は誰?

● アフタヌーン・ティーの「発明者」は、第7代ベッドフォード公爵夫人アナ・マリア(Anna Maria Russell, Duchess of Bedford、1783~1857)=肖像画 。
● その時代の食事は日に2食。特に上流階級では晩餐が午後8時、9時になることもあり、朝食と晩餐の間が大きく開いてしまうのは珍しいことではなかった。空腹に耐えかねたアナ・マリアは、その間に軽食をとることを思いついた。
● 社交的で、ヴィクトリア女王の側近でもあったアナ・マリアは当時の「インフルエンサー」。軽めのサンドイッチや菓子を用意して、午後遅めの時間に貴族のご婦人方を招き、社交の場とする一石二鳥といえるお茶会を考案。アフタヌーン・ティーの誕生だった。
● このアイディアは上流階級のあいだで大流行。またたく間に英国文化に浸透、ホテルやカフェ、レストランでも取り入れられるまでになった。
一般的な内容は?
「トラディショナル・アフタヌーン・ティー」は、次のような構成であることが一般的。お皿は3段。また、近頃は正午から楽しめるホテルやティールームもあり、ランチ代わりにできて便利。
❶ サンドイッチ…一番下のお皿
普通の食パンを4分の1程度の幅に切った、細長い四角形であることが多い。パンは薄く、耳は切り取ってあるのが上流階級式。具は、薄く切ったキュウリ、あるいは薄いハム+マスタード少々、ゆで卵のみじん切りのマヨネーズあえ、薄いスモークサーモンなど。❷ スコーン…真ん中のお皿。
クロテッド・クリームとストロベリージャム(ラズベリージャムの場合もあり)が添えられているのがおきまり。ナイフで水平に2つに分け、口に入れる分のみにクロテッド・クリームとジャムをのせ、指で上品に食すのが正式とのこと。❸ ケーキ…一番上のお皿
小ぶりのケーキが3~4種類、美しく並べられていることが多い。❹ 紅茶
銀のポットから、薄く繊細かつ美しい陶磁器のカップに注ぐのが理想。ミルクを入れる習慣は17世紀後半ごろにフランスで始まり、それが英国に伝わったとされている。行儀作法を教える学校の中には、紅茶→砂糖(好みによる)→ミルクの順が正しいと断言するところもあるというが、お好みでご判断を。レモン・ティーを所望する場合、ミルクは入れないこと!食べる順番は決まっている?

● サンドイッチなど、甘くないものを先に食べ、スコーン→ケーキの順で食べるのが正しいエチケット。しかし、現在では、スコーンが冷たくならないうちにスコーンから食べることを薦められることもあるほか、堅苦しいことは言わずに、好きなものから食べればよしとする意見も聞かれる。
● スコーンを食べる際、クロテッド・クリーム→ジャムの順か、ジャム→クロテッド・クリームの順で塗るかは論争になるほど。決着はついていない。
週刊ジャーニー No.1356(2024年8月22日)掲載