魔法にかけられた森
ボートを降りると、子供がワクワクしそうな景色が目に飛び込んでくる。英冒険小説「ロビンソン・クルーソー」をベースにしたテレビドラマ、『クルーソー(Crusoe)』で実際に使用されたセットの一部が再建されている、クルーソー・ワールド(Crusoe's World) だ。
2本の巨木に造られたツリーハウスを吊り橋がつなぎ、ツリーハウスの周りには、無人島に漂着したクルーソーの世界さながらの小屋や船が置かれ、冒険心をくすぐる。ここで子供たちが存分に遊べるだけの時間をとりたいものだ。
クルーソー・ワールドを後にし、さらに緑深くなる森の奥へと進む。木々の合間に突然姿を見せた、恐竜のオブジェなどに驚きを覚える人もいるだろう。これに限らず、森の中には、オープン当初の1990年代風の趣向が残るエリアもあるが、それはご愛嬌というもの。気にせず、先に向かおう。
徐々に傾斜が増す道の先には、アメリカ・インディアンのテント小屋があり、本物さながらの同小屋内では、週末やホリデー期間中に、子供向けの様々なアクティビティが行われる。
テントを過ぎると傾斜は益々きつくなり、山の斜面のような道を上ることになる。ベビーカーなどを押して上る場合は、この斜面を避けたほうがよさそう。ちなみに、この斜面には春先になると水仙やブルーベルの花が咲き乱れるという。
急斜面を息を切らしながら上って行くと、この森の中で最も背の高いという木の枝からぶら下がる、巨大なブランコ(Giant Swing)に到達。高い木の枝にぶら下がっているので、振り幅も大きい。ここは大人も童心に返って巨大ブランコに挑戦していただきたい。我々も挑戦してみたが、ブランコに揺られて風を切る気分は、まるで、アニメ『アルプスの少女ハイジ』のオープニングのシーンのようだ。
緑深い森を抜け、今度は徐々に丘を下って行く。次に現れた冒険の舞台は800メートル続く木の歩道、ボードウォーク(Boardwalk)である。
木々の間をぬうように張り巡らされた歩道には、トンネルや吊り橋、ターザンロープやブランコなどが設置されており、子供と大人が一緒になって冒険できる。もっとも、大人にとってはかなりの重労働。日頃の運動不足を悔いる人も少なくなさそうだが、途中で引き返すことはできないので、その点、ご留意のうえ、楽しんでいただきたい。
ボードウォークを離れると、不思議な森の冒険も終了。ロビンソン・クルーソーに恐竜、インディアンのテント小屋に巨大ブランコにアスレチック…大人の視点から見ると『何でもあり』の感もある森だが、次から次へと現れるアトラクションに、子供たちは飽きることがないだろう。なるほど、ここは確かに『魔法にかけられた森』なのだ。

左/エディさん=写真=によるショーは、12:30と15:30の1日2回。雨天の場合は中止となるのでご了解いただきたい。
右/知らない子供同士もすぐに仲良く遊ベるようになる、クルーソー・ワールド。汚れても大丈夫な服装で出かけたい。
7つの顔を持つ庭園
森での冒険の後は、見事に手入れされた庭園で身も心も休めよう。
受賞歴もある庭園は、散策ルートに沿って、7種類の異なる様式の小庭園が次々と現れる形になっている。気に入った小庭園を見つけて一息つくのもいいだろう。
なお、壁で囲まれた庭園の入口には、小規模ながらもコナン・ドイル記念館がある。ドイルと親交のあった、かつてのグルームブリッジ・プレースのオーナーが譲り受けたという、ドイルの遺品や写真などが展示されており、ドイルとこの地との強い絆を、訪問者に改めて印象づける。
ドイル・ファンの方々はまず、ドイルが特に気に入って多くの時間を過ごしたという庭園、ドランクン・ガーデン(Drunken Garden)へ。不思議な形に刈り込まれたイチイの木が、まるで酔っぱらいが隣の人に寄りかかっているかのように見えることから、「酔っぱらいの庭」と名付けられたとされている。
このほか、庭園内には、楓の木や灯籠風の置物が置かれたオリエンタル・ガーデン(Oriental Garden)、1982年制作の映画「The Draughtsman's Contract」のロケ地になったことから名付けられた庭園、ドラフトマンズ・ロウン(Draughtsman's Lawn)、ホワイト・ローズ・ガーデン(White Rose Garden)などがある。
邸宅の方へと近づいていくと、幾何学模様に刈り込まれた植木の模様がユニークなノット・ガーデン(Knot Garden)に至る。
また、このノット・ガーデンの前にある、巨大なチェスボードも目を引く。17世紀には庭に大きなチェスボードを造ることが流行し、当時は生身の人間を駒にし、ゲームが行われていたという。限られた王族や貴族の贅沢な遊びだったのだろうが、駒にされる使用人にしてみれば、たまったものではなかったのではないだろうか。
チェスボードから東へ目を移すと、木がうっそうと生い茂るシークレット・ガーデン(Secret Garden)の入口がひっそりと口をあけている。中には邸宅の堀へと水を運ぶ小川が流れていた。邸宅を建てたフィリップ・パッカーは、この小さな庭の陽だまりの中で、読書をしながら亡くなったという。まさに、小さな歴史を秘めた『秘密の庭園』なのだ。
こうして、鳥のショーから始まり、自然を満喫しながら森での冒険を満喫した後、17世紀以来の歴史を感じさせる庭園巡りで締めくくれば、心地よい疲労に満たされているに違いない。
大人から子供まで楽しめ、家族連れはもちろん、シャーロック・ホームズのファンや映画ファンにとっての見所もある、グルームブリッジ・プレース。英国が最も光り輝く季節、今が『ベスト・シーズン』といえるこのアドベンチャー・パークと庭園で、夏の一日を過ごしてみてはいかがだろうか。

左/大人も楽しめる、巨大ブランコ(無料)は、合計3つあるので、すいている列に並ぼう。なお、立ち乗りは禁止。
右/ホワイト・ローズ・ガーデンには、20種類以上の白バラの他に、ユリ、チューリップ、芍薬、菖蒲など、あらゆる種類の白い花が植えられている。
順をなして咲く白い花々の爽やかな香りが漂う庭園の中央に佇むのは、花と春と豊穣を司る女神『フローラ』の像。


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