ナショナル・トラストにはない開放感

 グルームブリッジ・プレースの見所は、ほぼすべてが屋外にあるので、過ごし方が天候に左右されてしまうのは致し方ないが、雨さえ降らなければ思う存分、庭園の散策や自然の中でのアドベンチャーを満喫できる。
では、順を追って敷地内を巡ってみることにしよう。
チケット売り場のゲートを入ると、目の前にはファーム・ハウス風の可愛らしいレストランが現れる。ピーコック・ビストロ(Peacock Bistro)と名付けられたレストランの屋根の上や周囲では、その名のとおり、来場者を警戒する様子もなく優雅に歩くクジャクの姿が複数見られる。どこかに雌のクジャクがいるのか、2羽のクジャクが目の前で華麗な羽を広げてくれた。ただ、屋外席では、食事を狙ってかなり近くにまで寄ってくるので、注意が必要だ。
レストランを通り抜け、グルームブリッジ・プレースを流れる運河沿いを歩いていると、草地で何やら見慣れぬ動物が草を食んでいるのが見えた。白いロバのように見えるが、体のところどころにシマ模様がある、ロバとシマウマから生まれた珍しい動物、ゼドック(Zedock)だ=写真左。他にも園内にはブタ、ウサギ、アルパカ、ヤギ、ヒツジ、七面鳥などが飼育されており、田舎の小さな牧場に遊びにきたような気分になる。後述する森では、野生のシカに遭遇することもあるという。
さらにしばらく歩くと、青空の下、猛禽類(※)のショーが始まっていた。
※もうきんるい(raptor)=ワシ、タカ、フクロウなど、他の動物を捕食する鳥類の総称。

 グルームブリッジ・プレースに本拠地を置くラプター・センター(Raptor Centre)は、猛禽類に魅せられた男性とその家族が運営する猛禽類の保護を目的としたチャリティ団体だ。同センターを設立したエディさんが保護し、生育してきた鳥たちと共に、ジョークを交えながら鳥の生態やトレーニング方法などを紹介するショーを行っている。フクロウや大きな翼のイーグルが我々の目の前や、頭上すれすれを飛行する様は大迫力。時にエサを使って周囲に生息する野生のカラスやカササギまで操ってしまうエディさんの見事なショーから目が離せない。ショーの終了後には、会場の横にあるセンター内に入ることができ、保護されている他の鳥を見学することができる。
ラプター・センターの植木鉢の中で居眠りをするミミズクの姿に癒された後は、運河のボート乗り場へ。庭園エリアとエンチャンテッド・フォレスト(Enchanted Forest『魔法にかけられた森』) を結ぶ運河ボートに乗船し、森の入口まで移動することにする。
ボートを操縦するスタッフが、ちょっとしたガイドをしつつ、木が青々と茂った緑のトンネルの中、ゆっくりとボートを走らせる。水の上を漂うように進むボートは、遊園地のアトラクションでは味わえないのんびりとした時間を与えてくれる。新緑が清々しく、何度も深呼吸したくなるはずだ。
運河の向こうには、グルームブリッジ・プレースのすぐ側を通る鉄道遺産、スパ・バレー・レイルウェイ(Spa Valley Railway)の蒸気機関車が走っているのが見えた。保存と観光を目的とした観光鉄道であるため、ホリデー期間中以外は週末しか走っていないのだが、この日は、車両を別の駅に移動させるためか、堂々とした姿で走り去っていった(16頁のコラム参照)。
ボートに乗っていると、子供たちがキャッキャとはしゃぐ声が聞こえてきた。学校の遠足でやってきたらしい小さな子供たちが無邪気にボートに手を振る姿に思わず顔がほころぶ。
グルームブリッジ・プレースの一番の魅力は、ナショナル・トラストにより厳重に保護された景勝地のような堅苦しさがないところなのかもしれない。『触ってはいけません』、『入ってはいけません』と注意されることもほとんどなく、誰もが自由にのびのびと過ごせるのだ。
10分程のボートの旅を終え、森の入口に到着。ここからは子供が主役!‘アドベンチャーの世界が広がる森、エンチャンテッド・フォレストに足を踏み出すことにする。