伝説が息づくのどかな南国

 さて、マルタにはマルタ島、ゴゾ島、コミノ島をあわせて20ヵ所以上ものビーチがある。なかでもマルタ島北部に広がるゴールデン・ベイは「マルタ島で最も美しいビーチ」との呼び声が高い。エリザベス女王とフィリップ殿下がハネムーンを過ごし、また結婚60周年を祝して再来訪した場所としても知られている。
ゴゾ島に行ったら必見の景勝地、アズール・ウィンドウ。 しかしながら、海を満喫したいならば、ゴゾ島やコミノ島まで足を延ばしてみてはいかがだろうか。ゴゾ島まではマルタ島最北端のチルケイア港からフェリーで30分、コミノ島までは15分という距離だ。
ゴゾ島に降り立った我々は、わずか6キロしか離れていないにもかかわらず、マルタ島とはまったく異なる雰囲気をまとう島の景観に、目を見張った。雲ひとつない青空、ギラギラと照りつける陽射し、身体にまとわりつくかのような熱風、そしてヤシやソテツ、サボテンが密生する風景は、まさに南国のリゾート地そのもの。マルタ島周辺よりも遥かに澄んだ海は、いっそう鮮やかな輝きを放ち、目に眩しいほどだ。
7000年前のものと推定されている世界最古のジュガンティーヤ神殿や、ギリシャ神話などに登場する海の女神(あるいは水の妖精)カリプソが、恋人とともに暮らしたとされる洞窟など、マルタ島以上に古い伝説が息づいていることも、非日常感を高めるのに一役買っている。
さらに特筆すべきは、ゴゾ島の一番の名所で、数千年にもおよぶ波と風の浸食によって断崖につくられた「アズール・ウィンドウ(紺碧の窓)」だ。天然の「窓」越しに地中海の青を堪能することができ、とても贅沢。だが、高さ20メートル、幅100メートルというこの優美なアーチは現在も少しずつ削られ続けており、窓が日々大きくなっているという。あと数年で崩れ落ちると話す学者もいるそうなので、ゴゾ島を訪れた際にはぜひ足を運んでいただきたい。ボートに乗って、海上からアズール・ウィンドウを間近で見ることも可能だ。
ちなみに、コミノ島にもブルー・ラグーンと呼ばれる入り江があり、感嘆のため息がもれてしまうほど鮮やかなエメラルド色の海を楽しめる。ここはダイビング・スポットとしても大人気である。



ゴゾ島に行ったら必見の景勝地、アズール・ウィンドウ。

 

セレブも愛する楽園

 治安がよい点でも評価が高く、安心して旅行ができるマルタ。世界有数の巨大水中撮影設備を備えた映画撮影所があることから、映画の撮影で訪れたショーン・コネリーやブラッド・ピットのほか、マドンナやデヴィッド・ベッカムといったセレブたちもマルタを愛し、頻繁に滞在したり、別荘を構えたりしている。
しかし、そうした華やかなリゾート地としてのイメージばかりが先行し、この国が南西ヨーロッパの要所として長いあいだ脅威にさらされ、深く重い歴史を重ねてきたことは忘れられがちだ。第一次世界大戦時には、日英同盟によって日本海軍がマルタに派遣されており、その命を地中海で散らせた日本兵がいたことは、同じ日本人として知っておきたい歴史である。
今年はマルタ騎士団の創設900周年。来年はEU加盟10周年、建国40周年、独立50周年という大きな節目を迎えるマルタ。様々なイベントの開催も予定されていると聞く。美しい自然と奥深い歴史に包まれた、日本とも縁の深いこの島で、のんびりと休暇を過ごしてみるのはいかがだろうか。



世界遺産にも指定されている7000年前の遺跡、ジュガンティーヤ神殿。