
■ 第249話 ■史上最悪の偽書
▶「シオン賢者の議定書」。誰が書いたかはっきりしない謎のテキスト本。20世紀初頭、突然ロシア国内で出回り始めた。前号、テオドール・ヘルツルというユダヤ人が1897年、スイスのバーゼルでシオニスト会議を開催したと書いた。「シオン賢者の議定書」はその第1回シオニスト会議でまとまった決議文という体裁で書かれたもので旧ロシア帝国の秘密警察によって持ち出されたということになっている。その内容が鳥肌もの。冒頭に衝撃的な一文がある。「神が認めた唯一の人間であるユダヤ人が、ゴイム(非ユダヤ人)の世界を支配し、全ての民をユダヤ教の前に平伏させる」とある。つまりユダヤ教徒以外、キリスト教徒もイスラム教徒も仏教徒も、僕もあなたも皆ユダヤ教徒に支配されるべき民だって。ひゃ~。
▶議定書、続く。「非ユダヤ教徒に吹き込んだ科学を信じて疑わないよう仕向けねばならない。そのためにはマスコミを利用し、理論を妄信させる。非ユダヤ教徒の中のインテリは我々が事前に仕込んだものと知らず、全ての学説を我々が仕向けた方に向けて実行に移す」「世論を支配するには無数の相反する意見を出させ、彼らの判断を迷わせる」「世界で何が起きているか分からなくするためスポーツや娯楽で大衆の気を逸らす」「いかなる情報も我々の目を通さず公表されない。情報は幾つかの通信社に集め、手直しされてから各国の新聞社や官庁に送られる。やがてほとんどの通信社が我々の支配下に入り、我々が許した情報だけが世界に届けられる」。こんな恐ろしい内容が24項目に渡って書かれている。戦慄走りズボンの前ビッショリだ。

▶「シオン賢者の議定書」が出回った頃、ロシア各地でユダヤ人に対する迫害が起きていた。多くのロシア人が議定書の内容を信じ、ユダヤ人への憎悪を加速させた。議定書は英米独仏や日本、イスラム世界に渡った。アメリカではユダヤ人に不満を抱いていたフォード自動車創業者ヘンリー・フォードが読み、ユダヤ商法を非難する「国際ユダヤ人」を書いた。しかしユダヤ人団体に不買運動を起こされ業績急降下。著書を回収し謝罪した。第一次世界大戦敗戦直後の1920年にドイツ語版「シオン賢者の議定書」が出版された。先の敗戦は共産主義者とユダヤ人の「背後の一突き」のせいだと怒りが蓄積していたドイツ。反ユダヤ主義の火に大量の油が注がれた。同書の影響を強く受けたヒトラーは5年後、反ユダヤ的著作「我が闘争」を書き上げた。
▶後に「シオン賢者の議定書」はかねてより存在した評論や小説のキリトリ、登場人物をユダヤ人に置き換えたフェイクだとする説が出現。最終的に反ユダヤ主義の何者かがユダヤ人を貶める目的で書いた偽造文書だと結論付けられた。しかしその後もロシアでのユダヤ人迫害は止まず、ドイツではホロコーストが起きた。そのため「シオン賢者の議定書」は今も「史上最悪の偽書」と評されている。
▶19世紀はユダヤ人が陽の当たる表舞台に姿を現した世紀だった。ロスチャイルド家はナポレオン戦争でウルトラ莫大な富を手に入れた。メディアの多くを支配下に置いた。中央銀行、即ち通貨発行権を次々と手に入れた。今更だけど本当に偽書だったのだろうか。なんか今の世の中「シオン賢者の議定書」通りになってない? あ、言っちゃった。夜道の一人歩きが怖くてズボンの前再びビショ~リのまま次号に続く。チャンネルはそのままだ。
週刊ジャーニー No.1371(2024年12月5日)掲載
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